後宮十二司

画像はイメージです(『源氏物語絵巻』/wikipediaより引用)

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平安時代の後宮で働く女官「後宮十二司」には具体的にどんな役割があった?

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主殿司(とのもりつかさ)

後宮の掃除や明かりなどを担当した部署です。

当時は掃除も照明を点けるのも全て手作業ですから、なかなか忙しい部署だったのではないかと思われます。

後宮十二司の中で最も早い時間から働き始める部署でもあり、午前六時には朝の掃除を始め、天皇の朝風呂を準備していました。

他には、天皇や后妃たちが乗る輿や炭・薪なども管理していたようです。

 

掃司(かもりづかさ)

後宮にある施設の管理や掃除を担当していた部署です。

主殿司と似ていますが、主殿司は明かりや炭・薪が関連する部分の掃除、掃司は施設全体の掃除といったイメージでしょうか。

掃司は宮中行事の調度品を整える役割もあり、より大掛かりで広範囲の管理・清掃を担当していたようです。

 

膳司(かしわでのつかさ)

食事の担当――料理はもちろん、酒や菓子などの嗜好品も扱いました。試食・毒見も請け負っています。

平安時代初期までは比較的地位が高く、長官である尚膳は女王・藤原氏・永原氏などの女性が任じられていました。

しかし、他の女官の地位が向上したため、相対的に地位が低下してしまっています。

 

主水司(もいとりのつかさ)

水や粥づくりを担当していました。

現代だと少しイメージしにくいですが、粟で醸した発酵飲料「漿水(しようすい)」もこの部署の担当でしたので、酒以外の水っぽいものをまとめて扱っていたようです。

ちなみに、表の役所にも同じ名前で男性職員が勤めていた部署がありました。そちらでは氷の管理も担当していましたので、後宮の主水司も氷を扱うことがあったかもしれませんね。

 

酒司(さけのつかさ)

こちらも文字通り、お酒を司った部署です。

外から買ってくるのではなくて醸造――つまりお酒を造っていました。神事や行事、宴にお酒は欠かせないものでしたので、後宮の役職として置かれていたのもうなずけます。

表の役所にも同じような職掌(造酒司)があり、酒司の女官はそちらへ行って男性の役人とともに醸造を行うこともありました。

『枕草子』などで

「宮仕えすると男性と直接顔を合わせる機会が増えるので、それをけしからんとする人もいる」(意訳)

と書かれていますが、酒司の女官たちは特に風当たりを強く感じたかもしれませんね。

清少納言はその後、

「多くの人に顔を見られてしまうのは確かに奥ゆかしいことではないけれど、宮仕えの経験があれば、家に戻った後に五節の舞姫などを出すことになっても、勝手がわかっていて役に立つだろう」(意訳)

とフォローを入れています。

 

縫司(ぬいのつかさ)

こちらも書いて字のごとく、衣服の裁縫を担当した役所です。

他には組紐を編んだり、女官たちの出仕を管理したりもしていました。

衣服と出仕は直接関係ないことのようにも見えますが、行事などの際は出仕している者の人数によって仕立てる衣服の数が大幅に変わったでしょうから、そういった関係で縫司に充てられたのかもしれません。

下級の女官である女嬬の定員は明確に定められていません。一時は100人くらいいたようです。

当時は全て手縫いですし、一人が着る服の枚数も多かったので、これでも大変だったでしょう。

女流文学の著者は、紫式部や清少納言のように后妃の身辺へ仕える女房が多いので、どうしてもそちらに目が行きがちになります。

しかし、後宮十二司の女官たちも、それぞれの職務を立派に果たしていました。

大河ドラマ『光る君へ』でも度々、女官たちが登場していますが、越前編を終えて再び宮中が舞台になったときは、あらためて彼女たちに注目しながら見るのも楽しいかもしれませんね。

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長月 七紀・記

【参考】
国史大辞典
デジタル大辞泉
ほか

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