世の中には「何でもデキて人柄もいい」という、非の打ち所がない人が存在します。
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の舞台ですと、畠山重忠がまさにこのタイプ。
武勇を誇っても決して脳筋ではなく、人心を理解して温情厚く振る舞うこともできる。
それゆえ、当初は敵対していた源頼朝にも重用され、多くの御家人たちから支持されますが、しかし最期は身内にムチャな言いがかりをつけられ、非業の死を迎えてしまいます。
それが元久2年(1205年)6月22日のこと。
一体何がどうしてそうなったのか?
イチャモンをつけた身内とは誰のことなのか?
本稿では、史実における畠山重忠の生涯を振り返ってみましょう。
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畠山重忠 母方は三浦一族
畠山重忠は、相模の武士ではなく、武蔵国が本拠地です。
少し細かく言いますと、男衾郡畠山荘(おぶすまごおりはたけやまのしょう)という土地で、現在の埼玉県深谷市畠山。
父は畠山重能(しげよし)、母が三浦義明の娘で、長寛二年(1164年)生まれとなります。
この三浦義明というのが、関東では有力武家の“血筋元締め”みたいな存在でして。
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも、かなり有力どころの子と孫がいます。
以下に系図でまとめてみました(一部省略)。
この表ですと、畠山重忠(ドラマでは中川大志さん)と、三浦義村(山本耕史さん)、さらには和田義盛(横田栄司さん)が従兄弟関係であると一目瞭然ですね。
つまり重忠は、武蔵国の有力者である父からの基盤がある上に、母方も有力者という、生まれも育ちもほぼ完璧な状態でした。
前述の通り長寛二年(1164年)生まれですから、長寛元年(1163年)生誕のドラマ主人公・北条義時よりは1歳下。
この時点での世間的な立場は、重忠のほうが上だったでしょう。
しかし、他の坂東武者たち同様、治承四年(1180年)8月の頼朝挙兵から、重忠の運命もにわかに変わっていきます。
衣笠城合戦
治承四年(1180年)8月、源頼朝が挙兵。
当時の畠山氏当主は父の畠山重能でした。
しかし重能は、大番役のため京都に滞在しており、地元で指揮を執ることができず、まだ10代の畠山重忠が家中をまとめ、出陣することになります。
この時点での畠山氏は平家方でしたので、敵対関係にあった源頼朝を追討する側でした。
【石橋山の戦い】は、畠山軍が到着する前に終了。
その途上、同じく合戦に間に合わず、引き返そうとしていた三浦軍と遭遇してしまいます。
前述の通り、三浦軍の義澄・義村父子と重忠は伯父・従兄弟の関係ですので、互いに弓を引くより穏便に済ませようという話になりました。しかし……。
連絡の不備もあって、両軍が激突!
双方痛み分けで終わり、消耗の度合いは三浦軍のほうが重かったようです。
翌日、畠山重忠は河越重頼らと合流し、三浦氏の本拠・衣笠城に攻めかかりました。
そして、母方の祖父でもある三浦義明を自害に追い込みます(衣笠城合戦)。
※以下は三浦義明の考察記事となります
三浦義明はなぜ孫の重忠に攻められ討死したのか?89歳まで生きた関東有力武士
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義明は「自ら城を枕に討ち死にすることを選び、時間を稼いでいる間に一門を逃した」ともいわれていますね。
一方で「老齢で足手まといだから置いていかれた」なんて切ない見方もあるようですが、いずれにせよ孫・重忠の武勇については誇らしい気持ちもあったのではないでしょうか。
頼朝に従軍し 時政の娘を娶る
伊豆で大庭景親や伊東祐親との戦いに敗れた頼朝は、海路で房総半島に向かいました。
三浦一門や北条氏も続いて渡海。
そこで千葉の有力武将・上総広常をはじめとした坂東武者を味方につけ、今度は源氏ゆかりの地・鎌倉入りを目指します。
上総広常はなぜ殺された? 頼朝を支えた千葉の大物武士 哀しき最期
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畠山重忠は、頼朝が武蔵に入ったところで敵対ではなく服属を選び、相模に入るあたりでは先陣を務めたとされています。
河越重頼や江戸重長など、平家方だった武士の多くがこのタイミングで源氏へ鞍替えしていますので、その流れに従ったのかもしれません。
この頃から、鎌倉での出来事に重忠の名が登場し始め、また、北条時政の娘を妻に迎えることになりました。
北条時政はどこまで権力欲と牧の方に溺れた?最期は子供達に見限られ
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彼女との間には息子の畠山重保が生まれており、後の悲劇的な最期へ繋がることになります。
詳細は後述しますが、北条時政が牧の方(ドラマではりく・宮沢りえさん)に影響されていた感は否めません。
なお重忠は、時政の娘以前に、足立遠元の娘を娶っていて、息子の畠山重秀をもうけていたようですが、異母兄弟間の逸話は特にないようです。
「重忠は、側にいる者が足を崩せないほど真面目な人だった」という話があるくらいですので、家中の統率や兄弟の序列も厳しく言いつけていたのかもしれません。
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