伊勢神宮・内宮宇治橋

寺社・宗教

伊勢神宮への参拝で日本人なら知っておきたい7つの秘密

その5 伊勢神宮の地は「ヤマト」の発展から取り残された地域だった

と、表題のように言い切るのはガクブルなのですが、「釣りタイトル」としてご勘弁を。

なにをもって取り残されていたかというと、考古学的にみると、伊勢神宮のある南伊勢という地域が、ヤマト=古墳文化が広がるのが全国的にみても遅い、ということです。

古墳(前方後円墳など)というのは、3世紀中頃にヤマト(奈良県)で確立して、大仙古墳(仁徳陵)などができた絶頂の5世紀には、ほぼ日本列島中くまなく広がるのですが、伊勢南部については、「南勢地域の古墳文化が目立ち始めるのは更に遅れて六世紀以降のことである」(116ページ、榎村寛之『伊勢神宮と古代王権』筑摩書房、2012年)となります。

出雲大社のある出雲が、弥生時代からのちのヤマトや北九州に匹敵する高く広大な文化圏を広げていたのとは対照的な「歴史の空白ぶり」なのです。

だれが「文化の後進地区」だった南伊勢を、神道文化の頂点の地にしたのか?
古代史の最大のミステリーといえるかもしれません。伊勢神宮は大中臣氏がずーっとコントロールしています。中臣氏というのは、藤原氏の母体ですから、藤原不比等あたりかな~と安易に考えますが、「なんでも藤原謀略論」に与するのもなんなので、想像はここらへんにしておきます。

 

その6 アマテラスに仕える巫女「斎王」は永遠に処女なのか?

斎王というのは、「さいおう」と呼びまして、伊勢神宮につかえる皇女のことをいいます。
繁栄した都から、魚や赤福(まだないって)がおいしいといってもデスコもクラブもない伊勢へ、独身の身で行くのはつらいことだったでしょう。
漫画やドラマの題材にもなっている斎王ですが、その悲劇性が強調されるのは、神につかえる巫女なので、その間は結婚できない、という点です。

飛鳥時代に父の天武天皇から「お前、斎王なってこい」と命じられたのが、大伯皇女(おおくのひめみこ)です。斎王になったのは、14歳。そして12年後に帰京します。26歳というのは、現在ならピチピチもピチピチなギャルですが、当時は完全に婚期を逃しています。でも、まだセーフな年で帰京できた(した)のは、むしろ背景には悲劇があったのです。

大伯皇女は、天武死後に謀反の疑いで処刑される大津皇子のお姉さんです。
弟がこっそりと伊勢の姉に会いに来たことがありました。シスコンなんですね。たぶん、ヤマトタケルが斎王だった姉のヤマト姫(草薙の剣をもらった)にならって、天武後の後継者争いについて相談しにきたのでしょう。でも、姉はわたす剣もなく、泣く泣く帰らせるのです。で、その後、弟はアボーン。

この弟の謀反に連座という形で、皇女も斎王を解任され、都へ戻ります。その時に歌ったのが
<ふたり行けど行き過ぎかたき秋山をいかにか君がひとり超ゆらむ>(万葉集の巻2―106)
複数でも大変な伊勢―大和間の山道を、たったひとりで越えてきたのか、かわいい弟よ、うわーーーーーん(現代語超訳)

ともかく、斎王に選ばれると、青春時代の多くを男と恋愛なくすごすことになります。とはいっても、任期はだいたい数年から10年くらいというケースが多かったようです。そのため、斎王を務めたあとに結婚した人もたくさんいます。

聖武天皇の娘、井上内親王。斎王後に、のちの光仁天皇となる皇族と結婚。玉のこしハッピーエンドとなりそうですが、なぜか天皇となった夫をのろい殺そうとしたとして、「離縁」され、幽閉されて殺されています。のちに怨霊となっています。。。

桓武天皇の娘、朝原内親王。斎王は18歳で終了。平城天皇(桓武の息子、つまり兄妹婚)と結婚しています。でも、平城天皇は「おれの妹がこんな斎王なはずはない」と無視して、藤原薬子という「悪女」とよろしくやって、薬子の乱とか引き起こします。

斎王の女性は結構、波乱万丈ですねぇ。。。まるで波乱万丈の女神アマテラスの生き様を体現しているかのように。。。

 

その7 正殿の高床式は弥生文化なのか

瑞穂の国の人だもん。稲作が本格的に普及したのが弥生時代、その米を備蓄するために立てられたのが高床式倉庫。

伊勢神宮の正殿も高床式な「唯一神明造り」なので、たいてい「弥生時代に見られる特徴で、そうした弥生の古式の建築文化が残されている」という説明をされています。
こういうもっともらしい定型文はたいていあやしいところがあるんです。
現代は車社会である。車といえば、もとはアメリカのフォードが作った。つまり、現代の日本は、アメリカ文化である、的な。。。

技術というのは継続されるもので、文化とは別もの。
都出比呂志『古代国家はいつ成立したか』(岩波新書、2012)には、同じ高床式倉庫でも、弥生、古墳、奈良、平安と時代ごとに「大きさ」が異なっているという指摘をしています。たんに「貯める」という要素は同じでも、誰が貯めるかによって、それを必要とした社会の形=文化も違ってくるもの (都出さんは別に、伊勢神宮の正殿とを比較しているわけではありませんが)

伊勢神宮正殿(3間×2間、内宮)の面積は約61平米。これを都出さんがまとめた時代ごとの高床式倉庫の面積の表にあてはまると、見事に「奈良時代」の範疇にピンポイントでおさまるのです。(古い時代はもっと小さい)
これは、ことさら「弥生時代にさかのぼるふるーい伝統建築様式」と強調するのは、ちと誤解をまねくことになるといえます。
弥生時代には存在できないほどの大きさであり、律令国家の奈良時代と同じ面積ということは、神宮の正殿は、飛鳥時代や奈良時代の朝廷が最先端の建築技術を駆使してつくった「最新インテリジェントビル」だった可能性が高いのです。

伊勢神宮正殿前

 

問い合わせは、伊勢神宮のHP、神宮司庁(0596・24・1111)へ。

おはらい町にある観光施設「おかげ横丁」

 

【アクセス】

JRもありますが近鉄が名古屋方面から大阪方面からも便利です。自家用車もまわりに駐車場(有料)がありますが、年末年始や週末はとくに内宮への道は1車線に規制(1車線はバス専用)になり、渋滞の列にはまると戻ることもできなくなります。
そのため、比較的空いている外宮の周辺の有料駐車場に車を置いて、外宮と内宮はシャトルバス(有料)で移動することをオススメします。
外宮=近鉄・JR伊勢市駅下車徒歩5分。
内宮=近鉄宇治山田駅か五十鈴川駅下車でバスで内宮前へ。

【2018年初詣の渋滞回避の方法~内宮を直接目指してはいけない!】

伊勢神宮に行くには、電車と車がある。
しかし、初詣・お正月に車で行くことは避けたほうが無難だ。どうしても、という場合は次のような方法をおすすめする。

伊勢神宮の内宮の最寄りの伊勢自動車道伊勢西インターチェンジは、通常なら出口を下りて2㌔、5分ほどで門前町のおはらい町(おかげ横丁は同町内)手前の比較的大きな駐車場(グーグルマップでは内宮B4駐車場で検索)に入れることができる。

だが、大みそかやお正月は、周辺の道路が1車線分がバス専用に規制され1車線のみになる。インターを下りられても、すぐに1車線しかない大渋滞のため、引き返すこともできず、何時間も駐車場に入れないこともあるくらいだ。99%の自家用車の目的地が限られた数の駐車場に向かうからだ。

【手前で下りて外宮近くのコインパーキングか特設のパーク&ライド】 

そこで、自家用車でいくなら、最初から伊勢自動車の伊勢西IC手前の玉城ICで下りて、外宮の伊勢市駅を目指すのがよりベターだ。伊勢市駅の周辺にはコイン駐車場が多くある。

玉城ICを過ぎてしまったら、伊勢西ICの先(次の伊勢ICが有料区間の終点のために下りてしまいがちだが、同じように大渋滞にはまるのでパスする)にある、無料区間(伊勢二見鳥羽ライン)の楠部ICでおりる。

12月31日午後10時~1月1日午後4時(入庫時間)、2日、3日、6日、7日(午前9時~午後4時、入庫時間)には、楠部ICに近い三重県営サンアリーナの駐車場(1回1000円)で開放され、ここから内宮と外宮にシャトルバスが出る「パーク&ライド」が行われる。ナビでは「三重県営サンアリーナ」で検索しよう。

上記のほか、近鉄の朝熊駅やJR参宮線の五十鈴ヶ丘駅などの周辺でコインパーキングにとめて、電車で近鉄・JRともに伊勢市駅(近鉄は宇治山田駅でも可)で降りて、歩いて5分でいける伊勢神宮の外宮からお参りして、外宮からは目の前に止まる路線バスで内宮に直行する。

バスは1車線を占有しているので、大渋滞を横目にすいすい行ける。内宮に距離的に一番近い、近鉄・五十鈴川駅で降りてバスという手もあるが、本数が少ないので注意が必要だ。
繰り返すが、幸せな気分で初詣をしたいならば内宮に車で向かってはいけないというのが結論だ。「らくらく伊勢もうで」のHPでは上記のパーク&ライドの案内のほか、ライブカメラで周囲の道路の混雑状況が確認できるので、伊勢自動車道の安濃サービスエリアで休憩し、状況を確認の上、伊勢西の手前で下りるか、渋滞覚悟で強行突破するかの覚悟を決めよう。

【関西「本」線にだまされるな!ぜったい近鉄>JR】

ベストな参拝方法は、この時期は絶対に、電車+バスの公共交通機関に限る。よく宣伝される「公共交通機関をご利用ください」というフレーズはこの時期の伊勢神宮にとってはまぎれもなく真実である。

電車は近鉄とJRがあるが、名古屋(東京)方面からでも、大阪方面からでも、近鉄のほうが利便性が高い。
JRの関西本線・伊勢線は「本線」とは名ばかりの名古屋では通常3両以内の編成のローカル線扱いで、指定の快速みえも4両編成しかなく、圧倒的に利便性が劣るので、近鉄よりも指定席が安くても通常は近鉄を使う。

また、この時期はまず座れないので、近鉄名古屋から1320円特急料金が必要だが、近鉄の特急(だいたい1時間に2本、所要時間は約1時間20分)をとれたら、大吉を引く並みにラッキーと思い、迷わず席をとろう。JRにも指定席のある快速みえ(1時間に1本)がある。

【参考料金】ヤフー路線検索より
1万360円(東京ー名古屋、のぞみ自由席)+1450円(近鉄名古屋ー伊勢市)

繰り返すが、快適に参拝したいなら近鉄、次善の策としてJRだ。むろん、JRよりも自家用車参拝がこの時期は不便で不快であることは強調しておく。

近鉄は、毎年、伊勢神宮の初詣用の「伊勢神宮初詣割引きっぷ」を販売している。
近鉄名古屋から伊勢まで特急で行く場合、通常往復5540円が4700円となる。
利用期間は2017年12月30日から2018年1月31日までだ。利用開始日から連続3日間有効だ。近鉄の主要駅の窓口で年内(2017年12月31日まで)に購入する必要がある。優待など特典が複数つくので、名古屋や大阪など近鉄の駅で購入できるはお得である。
詳しくは、近鉄のHPをチェックしてほしい。(取材:編集部)

記・恵美嘉樹(歴史・旅作家)

著書に『日本古代史紀行アキツシマの夢』(ウェッジ)、『日本の神様と神社』(講談社、キンドル版もあり)、『全国「一の宮」徹底ガイド』(PHP)など。

 

恵美嘉樹の古代史を歩く旅する本。旅行・出張に必携

アマテラスをはじめとする日本の神さまを考古学、歴史の研究成果を踏まえて紹介した本です。電子版もあり

 

今回の記事の参考文献



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