魏武注孫子

孫子(カリフォルニア大学所蔵の写本)/photo by vlasta2 wikipediaより引用

あの曹操が兵法書『孫子』に注釈をつけた『魏武注孫子』は今も必見の一冊である

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信玄もナイスガイではありませんし……

「おいおい『孫子』の愛読者が性格が悪いなんて言いがかりだ! 武田信玄はどうなるんだ!」

と思った方にお尋ねしたいことがあります。

「武田信玄は性格が好いと思いますでしょうか?」

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名君であり名将かもしれません。

しかし、だからといって性格が好いとはちょっと言えなくないですか?

弟子のような真田昌幸にしたって、ナイスガイとは言い難いです。

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日本全国で『孫子』を読み漁った結果が、これです。

「育てるよりも奪うほうが効率的だな、ヒャッハー!」

『孫子』を読むこと。

それは、多くの人にできることです。

ただし『孫子』の教えをマスターして、いつでもどこでも実践できるようにすると、ちょっと思わぬ結果がついてくるかもしれません。

言うことが厳しすぎて、周囲から引かれて友達を失う。

情けを度外視しすぎて、恨みをかう。

自分以外がバカに見えて来てしまい、気づけば人を見下している。

そしてその結果、思わぬ破滅を迎える……。

前述のラスボスたちは、思いもよらぬ反撃を受けて、主人公チームに倒されてしまいます。

それがラスボスの運命なのだ。

 


AI社会を生き抜くために思考ルーチンを学べ

今、AIが人の仕事を奪うとされています。

AIでできないコトで生き残る――そんな考えが広く浸透してきておりますね。

これは、今に始まったことではありません。紀元前5世紀に、もう孫子が言い始めたことなのです。

信仰心、人の情け、正義感。そういった目に見えないものは無駄だ! 眼に映るデータを分析し、勝利へ邁進しなさい!

どうでしょう?

こうしてまとめると、孫子とAIがかぶって見えては来ませんか?

しかし、前述の通り『孫子』を身に染み込ませていた名将ですら、読めないことはあります。

それが敗北の要因につながっています。

・計算に強い分、想定外のことが起こるとパニックに陥る

→【赤壁の戦い】での火計

・人の情けを軽視して、恨みをかう

司馬懿曹操への恨みが抜けきれず、晩年に爆発した

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・正義や道徳が理解できない

→計算外の力を見誤る

冷徹であり、計算を重ねて、勝利を目指す。

そんなラスボスを、正義の力で倒す。

そうやって戦い抜く姿には、人の心を熱くするものがあります。

勝ち目がなかろうと、劉備への恩義に報いるため、魏に挑み続けた諸葛亮。

勝利を度外視し、敗者の誇りとロマンを見せつけた真田幸村(信繁)。

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ラスボスに苦しめられ、仲間を失いながらも、懸命に挑むその姿。

そこには、計算外の美しさや素晴らしさがあると、人間は感じながら生きてきたのです。

※諸葛亮の死になぜ人は泣くのか?それは計算できない心の動きです

そんな姿こそ、AIが計算できない、神秘的な世界なのではないでしょうか?

孫子、曹操、武田信玄。

彼らの合理的で冷徹な思考ルーチンを学び、それだけではない何かを見出すこと。

それこそが、今を生き抜く知恵なのでしょう。

そんなわけで、今こそ読みたい本が『孫子』です。

耽溺し、実践しつつも、人の情にも注意を払えば、世の中を上手に生き抜いていくことができるでしょう。

なお、曹操の生涯全般についての記事は以下の記事を併せてご覧ください。


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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link

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【参考文献】
金谷治『新訂 孫子』(→amazon
中島悟史『曹操注解 孫子の兵法』(→amazon
陳寿/裴松之/今鷹真/伊波律子『正史三国志 1 魏書 1』(→amazon

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