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モンテスパン侯爵/wikipediaより引用

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週刊武春 フランス

フランスは歴史的に不倫OKなれど……ルイ14世に妻を寝取られたモンテスパン侯、奇行に走る

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日本史でも世界史でもそうですが、世に知られる人物は大抵が「ナンチャラ夫人」よりも「夫」の方が有名です。
政治や軍事に携わるのがほとんど男性だったことを考えれば当たり前かもしれませんね。

しかし、稀に例外もあります。
例えばフランス国王の寵姫です。

ポンパドゥール夫人
デュ・バリー夫人

彼女らの愛人であるフランス王(ルイ15世)は知られていても、彼女らの夫は誰なんだ?ってなりがちかと思います。

これ、実は、フランスの風習でして。
独身かつ身分の低い女性を愛人にするのは体裁が悪いため、それなりの身分ある既婚女性という体裁にしようということであったりします。
現代人、いや同時代のイギリス人も不思議に思っていたようですが、フランス人の倫理感では「嫁入り前のお嬢さんを愛人としてはいかんが、人妻なら問題ない」ということだったのですね。

実際のところ、歴史の陰に隠れた彼女らの夫がどう思ったか?
と言いますと、むしろラッキーなことでした。
妻が国王の愛人となれば、それだけ覚え目出たく出世に繋がるのです。

「うちの妻は好きにしてよいので、出世の方はよろしくお願いしますよ、陛下」
というわけで。

まったくもってワケわからんですが、しかし、これにも当然と言いましょうか、例外がいるから歴史は面白い。

「最愛の妻が寝取られるなんて! 例え相手が国王陛下でも許さん!」

かくして太陽王ことルイ14世に本気で激怒し、ある種“奇行”に走った貴族がモンテスパン侯爵でした。

日本人というか、おそらくやほぼ世界中の人に理解されがたい、フランスの不倫歴史を振り返ってみましょう。

 

貴族の恋愛は結婚してからが勝負

現代においてもフランスといえば、恋愛や不倫に寛容な国というイメージがあります。
これは最近始まったことではなく、昔から、特に貴族の間ではそうでした。

上流階級ともなれば、恋愛ではなく政略結婚になります。
愛する者と結ばれるなんてまずムリ。
ならば結婚制度の外で恋愛遊戯を楽しむのは、全く問題のないことじゃないか、という考え方でした。

ゆえに独身時代よりも、結婚してからが本番なのであり、むしろ妻一筋、夫一筋なんていう貴族は「育ちが悪いねえ」「何アレ、ダサい」「枯れてるのかよ」と笑いものになるほどでした。どんだけ~。

この考えを実践にうつしてトラブルになったのが、ナポレオンの妻ジョゼフィーヌです。

貴族出身の彼女は、結婚後も平然と若い男を愛人にして遊び回っていました。

しかし、コルシカ出身の夫にその行為が理解できるわけもなく、激怒して家からたたき出すと脅されてしまいます。
こうしてやっとジョゼフィーヌは、自分のしでかしたことに気づいたのです。

ジェセフィーヌとは? ナポレオンが惚れて愛して別れてやっぱり愛した女

 

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モンテスパン侯爵、妻を一途に愛する

ところがやはり例外はいるもので。
妻をとことん愛し抜いた貴族がいました。

それがモンテスパン侯爵ルイ・アンリ・ドゥ・パルダヤン・ドゥ・ゴンドランです。

妻フランソワーズは、彼に愛されるのも納得の、とびきりの美女でした。

女神のように優美な顔だち、きらめくブロンドと青い瞳、豊満な肉体。
ウィットに富んだ会話もでき、まさに絶世の美女。
愛する妻のためにも俺は頑張っちゃうぞ、と夫が思うのも無理はありません。

モンテスパン侯爵夫人フランソワーズ/wikipediaより引用

パリではじめて出会った時から、彼は妻に夢中でした。
二人は23才で結婚。貴族の夫婦としては珍しく、深く愛し合う仲でした。

しかし彼は妻にぞっこんで深く愛しながらも、軍人として遠征に出てばかりでした。
遠征先に現地妻はいたようで、説得力に欠けてしまいますが……欠けていたのはお財布事情も同様で、戦争で武功を挙げて稼がねばならなかったのです。

愛しているならそんなに留守ばっかりしちゃ駄目だぞ、と言いたくなりますし、実際に彼はそうすべきでした。

夫が不在の、絶世の既婚婦人。
彼女を男たちが放っておくわけがありません。

花に群がる蜂のような男たちを、いかにしてあしらったのか。
妻は帰宅した夫に面白おかしく話して見せており、モンテスパン侯爵も彼女の身持ちが堅いので大丈夫だろうと安心しきっていたのです。

しかしある時、フランソワーズは美しい眉をひそめて、出かける夫にこう言いました。

「ねえあなた。私を守って。国王陛下が私を見る目がおかしいの。私を連れて遠くに逃げて!」

ここでモンテスパン侯爵は、真剣に妻の訴えを聞くべきでした。
しかし彼は目の前の戦争に夢中で、そうしなかったのです。

「気のせいだよ。じゃあ行ってくる!」
うらめしそうな顔の妻を残し、モンテスパン侯爵は馬にまたがると、新たな戦場へ向かって行ったのでした。

 

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「てっぺんとったるで!」の女だった

確かにフランソワーズは、夫を深く愛していたかもしれません。
言い寄る相手を憎たらしいとすら思っていたかもしれません。

しかし、プライドの高い女性でもありました。
フランソワーズは女官として、宮廷に出仕していました。

そこには美貌で知られた国王ルイ14世と、その可憐な寵姫ルイーズ・ド・ラヴァリエールがいたのです。

フランソワーズが大輪の薔薇のように華麗な女性ならば、ルイーズは野に咲く菫のように、愛らしく控えめな女性。
二人は親友になりますが、やがてフランソワーズの胸の奥に野心が疼いてきました。

「この私が、地味系のルイーズに負けているっておかしくない? ありえなくない?」

フランソワーズは王の寵姫になろうとは考えていませんでした。
ただ、宮廷で注目度ナンバーワンの女になりたかったのです。

やるからにはてっぺんとったるで! の心意気ですね。

ルイーズと張り合ううちに、フランソワーズは宮中でも目立ち始めます。
何せ美貌と知性の持ち主ですから、それも当然。
するとプレイボーイで有名なルイ14世もうっとりとした目でフランソワーズを見つめるようになりました。

まずい。
フランソワーズは冷や汗をかきました。
このままでは、いずれ自分は王のものにされてしまう。

目立ちたいのは事実。
国王の寵姫がフランス女のてっぺんであるのも事実。
でもまだ夫を愛している……このままでは欲望に負けてしまうかもしれない。

そこで切々と、出かける夫に不安を告げたのです。
それなのに彼は訴えを無視して、出かけて行きました。

フランソワーズの中で何かが砕け散った瞬間でした。

 

寝取られ亭主のコメディを見て大爆笑するご本人

1669年。
戦場で頑張るモンテスパン侯は、久々にパリへ戻りました。

モンテスパン侯は、寝取られ亭主を描いたコメディ演劇を見て、観客席で大笑いしていました。

「おい、あの人って確か……」
「まさか、自分の状況を知らないとかって、マジか?」

周囲の観客は袖を引き合い、何も知らずに大口開けて笑っているモンテスパン侯の様子を見ていました。

見かねた彼の友人が、そっと彼に告げました。

「きみ、奥方の噂のことは何も知らないのか?」
「噂って何のことだい?」

ついに彼は知ってしまいました。
愛する妻が、国王の愛人になっているということを。

「嘘だぁあああああああああッ!」

国家のために戦った、家臣の妻を寝取る国王の破廉恥!
愛する夫を裏切り、家に恥をかかせた妻の不貞!

モンテスパン侯爵の頭の中をぐるぐると妻の姿が回ります。
そういえば出かける前、なんか訴えてきたっけ。

「なんであのとき、気づかなかったんだ! 俺の馬鹿!」
モンテスパン侯は慌てて宮中にすっ飛んで行きました。

 

再会した妻のお腹がふっくらしているではありませんか

宮廷では、廷臣たちがニヤニヤ笑い、目配せしながら彼を見てきます。
中には「いやあおめでたいことですなあ。これで出世間違いなしです」と言ってくる者まで。

彼らの態度から、自分が寝取られ男という噂が本当なのだと、モンテスパン侯は悟りました。
パリ郊外の家で妻と久々に再会したモンテスパン侯は、目玉が落ちそうになりました。
妻の腹がふっくらとしていたのです。自分以外の子を妊娠していたのでした。

「なんてことをするんだ!」
カッとなって思わず妻に手を上げてしまいます。
夫の怒りに驚き、フランソワーズは急いで逃げ出しました。

寝取られ男になったモンテスパン侯は、パリ中の友人知人の家を歩いては愚痴りました。

しかし周囲の反応は冷たいものでした。
妻の父はじめ一族は「いやあ、これで運が向いてきたなあ」と喜ぶ始末です。他にも……。

「国王陛下相手じゃ今さら無理だって」
「お前が留守にばっかりしているのも、よくなかっただろう」
「女なんて他にいくらでもいるさ。なんならいい子紹介しよっか?」

こんな調子で、誰もマトモに相手にしてくれません。

一体どうすればいいのだろう?
この時点では、王の公式寵姫はルイーズであり、まだ妻を取り戻せるチャンスはありました。

「どんな手を使ってでも、俺はフランソワーズを取り戻す!」

しかし彼は知らないのです。
フランソワーズの愛は醒め、彼女の狙いはもはや公式寵姫の座にあることを。
それを邪魔する夫に激怒していたことを。

 

全力で寝取られアピールする男

モンテスパン侯は考えました。この状況で、どうやって愛妻を取り戻すか?

1. 教皇庁に妻と国王を訴える
2. 愛妻が心変わりして戻って来るのを祈る
3. 愛妻は戻らない。現実は非情である

考えに考えて、彼が出した結論は「3」でした……。
ここらへん、意外と冷静なんですよね。いったん離れた女性の心を取り戻すのは、そう簡単ではありません。

そこで次に彼が考えたのはこんな復讐作戦でした。

1. 娼婦を抱いて性病に感染する
2. その状態で妻を抱く
3. 妻も性病に感染する
4. 妻経由で憎たらしい国王も性病に感染する

なるほど、完璧な作戦っスねーっ! 不可能だという点に目をつぶればよぉおおおおお!
いや、もう、笑ってしまうほかないんですが、色恋沙汰でメガネの曇った人々は、得てしてこんなものかもしれません。

第一段階で性病に感染するという涙ぐましい自己犠牲までは、なんとかうまく行きました。

そしていよいよ第二段階。
フランスワーズと面会の約束を取り付けたモンテスパン侯は、周囲に人が居るにも関わらず、妻を抱こうとします。

「ギャーッ! 誰かーッ!」
たまらず隣室へ逃げ込むフランソワーズ。
騒ぎを聞きつけて召使いたちが押しかけ、作戦はあえなく失敗に終わりました。

詳細は不明ですが、状況からして下半身剥き出しで捕まったでしょう。
結局、彼に残ったのは凄まじい屈辱と、「あの人ちょっとどうなの?」という恥ずかしい噂、そして妻の軽蔑だけでした。

 

ルイ14世に渾身の嫌味を放って逮捕、トホホ

もうこうなったら、次はわかりやすい嫌がらせです。

モンテスパン侯は喪服に身を包み、宮中へ向かいます。
ルイ14世は怪訝な顔で彼に尋ねました。
「お気の毒に。どなたがお亡くなりに?」

モンテスパン侯はギロリと王を睨むとこう言い放ちました。
「愛する妻です。二度と彼女に会うことはないでしょう」

そう言うとあてつけがましく足音を立てて、背を向けて立ち去りました。
王はポカンと相手の背中を見送りましたが、やがて猛烈に腹が立ってきました。

「家臣たるもの国王の機嫌を取るものなのに、あの傲慢な男はなんなのだ。逮捕しろ!」

モンテスパン侯は二週間を牢獄で過ごしたあと、釈放されました。
何をしでかすかわからない危険人物として、許可無く領地を出ないことが条件としてつけられたのです。

モンテスパン侯は馬車を黒く塗らせました。
これが現代風に言うと、車を黒塗りの霊柩車に変えるような感じでしょうか。
馬車の御者台には角が二本つけられ、家紋を書き直す時も角をつけるよう指事しました。

「寝取られ男」は角が生えるという言葉から来たものでした。
なんだかオシャレというか、奇行極まるというか、あるいはこれがフランスのエスプリってやつですか。違いますね。

さらに彼は、領地に戻ると、盛大な「公爵夫人の葬儀」を一ヶ月掛けて行い、喪に服しました。
彼は隠すことなく、全力で周囲に「俺は寝取られました」アピールをしたのです。

モンテスパン侯の全力寝取られ男アピールは、宮廷の人々をあきれさせたものの、パリ市民には「面白くて反抗的な貴族もいるんだねえ」と好意的に見られました。
領民たちは彼の人柄を敬愛していたので、心から同情を寄せ、美しい侯爵夫人の不在を悲しみました。

ここまで熱心に寝取られ男をアピールしたのは、「本年は妻のおかげで出世できたと喜んでいるんじゃないの」というゲスの勘ぐりを断固阻止するためでもありました。

彼の貴族の友人たちは、その災難を真面目に受け止めませんでした。
しかし純朴な領民たちは、心の底から同情してくれたのです。

ここまでしてやっと、モンテスパン侯の気持ちは落ち着いて来ました。

 

寵姫の夫と栄光と没落と

しかし、フランソワーズの、夫に対する怒りは収まりませんでした。
彼女は夫に対して別居訴訟を起こします。

当時、離婚は大変ハードルが高いものでして、別居訴訟が実質的な離婚訴訟のようなもの。
フランソワーズは容赦なく夫から持参金や家財道具をむしり取りました。
結果、モンテスパン侯は借金まみれになってしまいます。

夫が借金まみれになる一方、フランソワーズは栄光への階段を駆け上がっていました。

彼女が本気になれば、心優しく王の愛だけが頼りのルイーズ・ド・ラヴァリエールでは太刀打ちできません。
度重なるイジメのような仕打ちに心を痛め、修道院に送られてしまいました。

ここからはフランソワーズにとって、栄光の日々。
華麗な美貌は王の寵愛と宝石やドレスで輝いていました。
それはもう満足の日だったでしょう。

しかし、寵姫は年齢と戦わねばなりません。

加齢と度重なる出産で、彼女の美貌もやがて翳りが見え始めます。
自分よりずっと若いライバルを、黒魔術にまで頼って蹴落としきたフランソワーズ。
それにも限界がありました。

ルイ14世が新たな愛人に選んだのは、聡明で控えめなマントノン侯爵夫人。
若さに弾けるような女性ではなく、むしろ地味系のノーマーク女に栄光を奪われてしまうのでした。

そしてついにフランソワーズは、あろうことか夫に助けを求めます。
当然ながら、モンテスパン侯は家に戻りたいという妻の頼みを断ります。

結局、フランソワーズは、かつて自分が追いやったルイーズと同じく、修道院で神に仕える日々を送ることになるのでした。

 

皮肉な状況を面白きに変えて

モンテスパン侯は、その後宮廷への出入り禁止が解かれました。

彼は宮中で、「彼の娘」とカードゲームを楽しむことすらありました。
彼女らは、名目上彼の娘ということでしたが、実際にはフランワーズと王との間にできた子たちでした。

この皮肉な状況も、角が取れて丸くなったモンテスパン侯にとっては、面白いことでした。

かつては妻への愛が暴走し、奇矯な振る舞いをとっていたモンテスパン侯。
晩年の彼は面倒見が良い老貴族として知られていました。

そんな彼は1701年、穏やかな最期を迎えます。
妻に先立つこと6年、61年の生涯。

全力で寝取られ男をアピールして歴史に名を残すという、フランス史においても中々ユニークな一生を送った人でした。

文・小檜山青

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【参考文献】

 





1位 直虎の後を継ぐ井伊直政とは?


2位 わろてんか主人公
吉本せい波乱の一生


3位 西郷隆盛49年の生涯!


4位 史実の真田幸村とは?


5位 最上義光 名将の証明


6位 ホントは熱い!徳川家康


7位 意外と優しい!? 織田信長さん


8位 毛利元就の中国制覇物語


9位 伊達政宗さんは史実も最高!


10位 最期は切ない豊臣秀吉


注目! 史実の井伊直虎とは?


注目 わろてんか伊能栞
(高橋一生さん)のモデル
小林一三とは?





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