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まり先生の歴史診察室 西郷どん(せごどん)特集 幕末・維新

ヒ素(砒素)を幕末・江戸時代の科学力で検出することは可能か?

更新日:

大河ドラマ『西郷どん』が、なかなかキナ臭い展開になって参りました。

第11話で、渡辺謙さんの扮する島津斉彬が突然倒れてしまい、気になった西郷隆盛が御膳(食事)を医師の橋本左内に調べさせたところ「毒が盛られていた」というのです。

毒の正体は、おそらく「ヒ素(砒素)」とのこと。

「アイツか!」と西郷どんは斉彬の実父・島津斉興のもとへ走り出しましたが、チョット待った!

誰が犯人なのか。
確かにそれも気になりますが、そもそも江戸時代に「ヒ素」だと断定できる科学力はあったのか。
そっちもアタマに引っかかりません?

てなわけで考察してみました。

 

ヒ素ってなんぞ?毒殺に使えるの?

ヒ素は、原子番号33の元素で、常温では安定した固体として存在。
リンによく似た物理化学的性質を持つため、それが生物学的毒性の由来となります。

リンと似たような動きをするくせに、実際は役に立たないため害となるのです。

砒素自体もかなりの毒性がありますが、化合物である三酸化二ヒ素(亜ヒ酸)は強い毒性を持ちます(細胞毒性を利用し、梅毒や白血病などの治療薬としても用いられておりました)。

しかも亜ヒ酸は、無味無臭で水によく溶けるため、殺しの常套手段であり、かのボルジア家の毒薬も亜ヒ酸だったとの説があります。

 

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「石見銀山ねずみ捕り」や「猫いらず」

では日本の江戸時代を見てみましょう。

実は亜ヒ酸は【殺鼠剤】として使われていました。

しかも庶民でも入手可能。
一般的には「石見銀山ねずみ捕り」や「猫いらず」なんて呼ばれておりまして。

石見銀山ねずみ捕りの売り子/wikipediaより引用

亜ヒ酸の毒性は、文献によって幅がありますが、ラットの経口投与におけるLD50(50%が死ぬ量)は20-385mg/kg。
エサに混ぜると毒性が若干弱まるようです。

中毒症状としては、最初に嘔吐、次に下痢、血圧低下、頭痛などで、多量に摂取した場合、急性腎不全で死に至ることもあります。

そういやナポレオンの死因もヒ素による毒殺だったと言われておりますね。
当時の科学水準では検出不可能だったため、毒殺によく用いられていたようです。

が、現代では危険ですよ。
生体内によく留まり、分析にかけるとスグにバレます。

というか、そもそも毒殺を企んではいけません。

 

名探偵・左内はいかにしてヒ素を突き止めたか

では、江戸時代の技術で『ヒ素』と断定することは可能なのか?

通常の検査等ではまず無理です。
ただし、方法がないワケじゃありません。症状から毒物を類推することは可能です。

例えば実際の島津斉彬は、コレラのような症状を発症し、1週間で亡くなっております。

ゆえにその死因は『コレラや赤痢による死亡』というのが通説ですが、【下痢嘔吐】は同時に【ヒ素中毒】の症状でもありまして。
斉興あるいは久光の支持者による『毒殺説』も未だ囁かれているようです。

しかし、症状だけで断定するのもバツが悪いというか、なんというか。

もしも自分が橋本左内だったら、どうやって毒を調べるか?

斉彬が急に病に倒れられたとなると……うーむ、これは「石見銀山ねずみ捕り」の症状に似ているのぅ……。

「これ。お膳は、まだ残っておるか?」
「はっ!この通り!」
「よし、では、それをネズミに食わせるのじゃ……あっ、死によった」
「ははぁ」
「やはり毒じゃ! それもヒ素の可能性があるぞ!」

とまぁ、ネズミに食わせてみるというのが一つの効果的な検証方法ではないでしょうか。

実際にそういう方法が使われていても全く不思議ではありません。
よって橋本左内が「ヒ素」だと類推できたのは、意外と無理のない話でしょう。

もしも私の名探偵っぷりにご感心いただけましたら、拙著『戦国診察室(SPP出版/amazonリンク)』もよろしくお願いしまっす!

追記

実はこの記事、あらすじを見て放送前に書いていたものでして(*´-`)

放送を確認しましたところ
【銀の箸を突っ込んで変色→ヒ素だ!】
の流れでしたね。

この反応について解説いたします。

銀が変色したのは椀の中に硫黄成分が入っており「硫化鉄」が出来たからです。
ヒ素自体は銀と反応はいたしません。

じゃあ、銀が黒くなった=ヒ素にならないと思ったアナタ、この話には続きがございます。

ヒ素を含む代表的な鉱物「硫砒鉄鉱(FeAs S)」は、その名の通り砒素と鉄の硫化物です。
この鉱物自体に毒性はありませんが、これをある方法で燃焼させますと亜砒酸(As2O3)が得られます。

精製の純度が悪いと硫黄が残るため銀と反応して硫化銀を作り黒変するわけです。

逆に言うと現代の高純度の砒素や亜砒酸では銀は変色いたしませんし、江戸時代の精製技術なら反応する可能性が高そうです。それでドラマのようになったのですね。

そういえば、ヨーロッパの貴族が【銀の食器を使うのは毒から身を守るため】という話は知っていたのですが、記憶が中途半端で今回の記事で「硫黄」までしか結びつきませんでした。
うーん、佐内は流石っす。

ちなみに私、若かりし頃に行った温泉で、うっかりペンダントを外さずに温泉に浸かってしまいました。
ペンダントは高かったティファニーのシルバー><;
あとはお察し下さい。

文/馬渕まり(忍者とメガネをこよなく愛する歴女医)
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【参考】
石見銀山ねずみ捕り/wikipedia
三酸化二ヒ素/wikipedia
ヒ素/愛知県衛生研究所
ジフェニルアルシン酸等のリスク評価中間報告書

 

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