絵・小久ヒロ

麒麟がくる感想あらすじ

『麒麟がくる』のド派手衣装! 込められた意図は「五行相剋」で見えてくる?

2020年大河ドラマ『麒麟がくる』で、カラフルな衣装が話題になっています。

あまりに派手である――NHKには、そんな意見が寄せられているようで、例えば以下のツイートでも明智光秀が鮮やかな衣装を着用されておりますね。

これに対して、ドラマ部門の担当者さんは次のように返答されております。

「基本的には考証に基づいて、きらびやかというか、原色の色使いの衣装にしている」と強調した。

引用:‪◆‪大河ドラマ衣装、目がチカチカ? 担当「考証に基づく」

なぜ、カラフルに見えてしまうのか?

そういった技術的なものは他にお任せするとして、今回は歴史的な意義から考えてみましょう。

 


慣れの問題ではないのか?

今回の大河では「派手だ」という物言いがついた一方で、逆になかなかクレームがつかない独特の衣装があります。

新選組の羽織です。

浅葱色(R:0 G:164 B:172)にダンダラ模様の羽織は、実は当時の隊士すら嫌がっていたと伝わっています。

派手。あまりにダサい。コスプレじみていてありえない。
そもそも目立つ!

結果、この羽織は短期間で廃止され、実際の新選組は黒を中心とした衣装を着ていたとか。

彼らが現代の時代劇を見たら、
「ちっと、これァ勘弁してくれねえかな……」
と、苦笑いされるかもしれません。

ただ、もしそこを忠実に黒で再現したら、クレームが殺到するのではないでしょうか。さほどにあの羽織イメージは強烈なのです。

 

要するに、問題は「慣れ」――カラフルな色そのものではなく、我々の受け取り方次第ではないか。そんな単純な話であって、しかもこれはドラマだけではなく、仏像や歴史的建築物、美術品の復元でもしばしば直面する問題です。

当時の姿を再現されたものを見ると、むしろケバケバしくて神秘性が薄れてしまい、なんだかガッカリしてしまう……。
そんな現象も起きたりします

例えばタイとかミャンマーとか、日本以外の仏教国で仏像を見た時にも、感じてしまうことかもしれません。

これも単純かつ皮肉な話。
メンテナンスに気をかけ、当時の姿を保ってきただけで、派手だと思われてしまうのです。

極楽浄土を再現した色。ともかく派手にしたい。

そんな当時の価値観を再現すると、
「こういうのは求めていない……」
と思われてしまうのだとすれば、皮肉なことです。

なお、外国でもこんな例があります。

藤村シシン『古代ギリシャのリアル』が空前絶後のぉおおおお~極彩色!

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我々が「白い!」と思い込んでいるギリシャの神殿が……

「古代ギリシャ人は、海をワイン色だと表現するし、神殿も極彩色だった」

というのですね。

 


日本の伝統色はシブいのか?

土方歳三は、新選組の浅葱色の羽織にダサさを感じていました。
元アパレル店員で、モテモテで、ファッションリーダーである土方からすれば、ド派手な浅葱色は悪夢のようなダサい色であってもおかしくありません。デザイン担当者さんよ……。

土方歳三
土方歳三35年の生涯まとめ~幕末を生き急いだ多摩のバラガキが五稜郭に散る

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それは彼一人だけの問題でもありません。
江戸時代を通して、江戸っ子はシックなカラーに憧れを抱くようになりました。

一例として、深川のファッションリーダーたちが流行らせた色があります。
「深川鼠」(R:114 G:137 B:122)です。

こういう渋みのある色がオシャレだとする。そういう江戸っ子センスがどこかで生きていて、明治以降も受け継がれた可能性も無きにしもあらず……そうではありませんか?

まだ江戸のセンスを受け継いでいて、
「カッコいい江戸っ子の衣装はこれでえ」
と再現された可能性はあるのです。

浮世絵だって、江戸の流行は当然反映されております。
そして、浮世絵より古い絵巻物となりますと、経年劣化していて色そのものがくすんでしまう。
日本の伝統色は、実際のものよりもくすんだイメージが根付いていても、そこに不思議はないのです。

そういう江戸っ子センス以前を再現すれば、カラフルでも何ら不思議はありません。

江戸時代の流行色

◆憲法色(R:84 G:63 B:50)
宮本武蔵との対決で知られる、京都の染物屋・吉岡一門の憲法が考案した色。茶色がかった黒。ともかくシブい!

◆璃寛茶(りかんちゃ、R:110 G:102 B:54)
文化・文政期、大阪の歌舞伎役者・2代目嵐吉三郎が流行させました。シブいオリーブグリーンに近い茶色。

◆江戸紫(R:116 G:83 B:153)
京都の紫根染に対して、蘇芳で染めてこそ江戸の紫。『助六由縁江戸桜』で助六が締める鉢巻きの色。江戸っ子の誇りをくすぐる色です。

 


五行相剋ごぎょうそうこく」が取り入れられている

戦国までセンスを戻した、そんな派手な色合い。
『麒麟がくる』の衣装には、重要な意味があります。

それは「五行相剋ごぎょうそうこく」であり、公式サイトでも次のように語られております。

まだ企画の段階で、資料を読んだり、神社仏閣や由緒ある庭を見ていくなかで、当時の武士たちは風水の要素を取り入れていたことを再認識しました。

その中に「五行相剋(ごぎょうそうこく)」というのがあり、それは木(青)、水(黒)、火(赤)、金(白)、土(黄)の5つの要素が、お互いに影響し合っているというものです。
たとえば、木(青)は土(黄)を倒し、金(白)は木(青)を倒すなど・・・。

明智家の家紋は水色桔梗です。光秀が青(水色)なら、信長は黄色、藤吉郎は白といった具合にキャラクターを色分けし、衣装の裏テーマとして「五行相剋」を取り入れました。ただ、土仕事が主の農民である藤吉郎が白ですから、衣装デザインをお願いしている黒澤和子さんには苦労をおかけしています(笑)。

麒麟がくる公式サイトより引用→link

この「五行相剋」とは一体いかなるものなのか?
少し見ていきましょう。
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