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【麒麟がくる25回感想レビュー】
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この二人が殺し合う?
この場面は、光秀も、信長も、瞳が澄み切ってキラキラとしました。
二人とも純粋で、その輝きが伝わってきます。
ハセヒロさんにせよ、染谷さんにせよ、スチール写真ではなくて、動いて演技をしているときこそが美事です。
こういう役者を、思う様に演じさせたい! そういう気持ちはきっと湧いてくることでしょう。
演じ、命が吹き込まれたとき、彼らはキラキラと燃えるような輝きを見せます。それが最高潮に達した感はある。いや、まだまだ、これから、更新するのでしょうけどね。
でも、こういう輝きが、いつか消えてしまう。
酷い形で消える。
対消滅する。
こんなにも生き生きとしていて、溢れんばかりの魅力あふれる役者が演じることで、光秀と信長はまた生き返りました。
「はい、本能寺です! ベテランが死にますよ! 見せ場です!」
そういう陳腐さを超えて、生々しく、血と炎のにおいまで伝わって来るような、今年はそんなドラマを作るつもりらしい。
今からでももう、圧倒されて身が切られるような苦しさすら感じます。
この二人が殺し合う? そんな残酷な話は見たくない……でも見なくては。
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なぜ光秀は信長を裏切ったか? 本能寺の変における諸説検証で浮かんでくる有力説
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駒に近づく商人宗久
さて、京では。あの味のある茶の振り売りの名前が、トメ吉であると判明しました。
駒の丸薬は売れに売れています。丹後でも大口の注文が入ったって。
そんな中、駒は駒は妙昇寺へ向かいます。なんでも「又売り=転売」が起きているそうです。
駒は光秀同様、怒る時はキッパリと起こります。
応対した和尚は、転売を追求されても困るばかり。お寺さんでも気をつけて欲しいと言い切る駒。
と、ここで営業マンぽい今井宗久が話を聞いていました。
見るからにビジネスチャンスを拡大しそう。本作は営業部の皆さんの描き方が絶品です。陣内孝則さんが、ノリノリで演じているのが伝わってきて頼もしい。そんな宗久は、茶釜ビジネスを展開していると。
本作はいろいろな人物や事象に息を吹き込む力がある。
茶道は、今となっては雅なものとして愛されていますけど、戦国時代はもっと生々しくて、ブランドをプロデュースして、金儲けをするものだったわけですよね。
そういう不都合なまでの原点回帰を感じます。そういう細かいところにフッと息を吹き込むからこそ、圧倒的に生々しい。
宗久は抜け目なく、「揉めていたようでしたが」と和尚に丸薬の話を聞き出します。
クンクンと匂いを嗅ぎ、ビジネスチャンスを考えているようです。あの娘が作っていると知らされ、また目がキラキラしている。
本作は、利にさとい営業部員の皆さんがおりまして。
伊呂波太夫、秀吉、そして宗久もこのタイプです。
反対にピュアで、理想に突き進むのが、光秀であり、駒です。
善良なようで、「空気読めないめんどくさい奴らだな」と思われる。怒ると怖いし、情緒不安定だったりもする。そういう個性も大事だ。
薬が一人で歩いて、人助けをしている
駒は、転売をしていた平吉の家をたずねてゆきます。
怪我をして、座って、荒んだ目で駒を見る男たちもいる。
やはり本作は、戦争の臭いがする。こういう傷痍軍人は、池端氏世代の少年時代はよくいたものなのです。
戦争というのは、こういう存在を生み出すこと。忘れるなと突きつけてくるようで、本作は興味が尽きない。
駒がたどり着いたのは、貧しい家でした。
子沢山で、母親が我が子を怒鳴りつけています。平吉がいるかと駒が聞くと、こう怒鳴ります。
「お前また、悪さしたのか!」
「知らないよ!」
子役の込江大牙(こみえ たいが)さんがうまい。
子役は演技が確立していないので、彼らがうまいということは、演技指導が盤石である証です。本作はその点よいのです。
駒は、平吉に問いかけます。
おっかさんは病じゃない。嘘をついて又売りすることは悪い、ただのものを売るなんて間違っていると説きます。
平吉は、これで弟や妹が飯を食える、儲けて何が悪いのかと言い返します。その弟妹が兄を呼ぶ声もしてくる。駒はもう、言葉を失うしかありません。
力なく、東庵の元へ帰る駒。
団子を食べようと、声を掛けてきた東庵に、駒は平吉と又売りのことを話します。
稼いで何が悪いか。その問いかけが重い。
「私、何も言えなくなってしまって。私が間違っているのか、よくわからくなってしまいました」
「誰もまちがっとらんよ。おまえも、その子も。又売りしたとて構わぬではないか」
東庵はそう言い切ります。
駒とは関わりのないこと。お金を払うだけの余裕がある者が払う。薬が一人で歩いて、人助けをしている。いい薬だと言い切ります。
「そうでしょうか……」
「そう思うがな」
駒は丸薬を摘みます。
迷いや憂いを表現する門脇麦さん。
しっとりとした魅力が出てきて、出るたびにお綺麗になられて、そしてそんな駒の苦悩を受け止める堺正章さんには、ベテランの巧みさがあります。
義昭が突然の訪問
越前に光秀だけが戻りました。
侍女の常と煕子が出迎えます。なんでも藤孝が来ているとか。閉じた戸の向こうでは、笑い声が聞こえてきています。
ここで光秀が藤孝に不在、藤孝が突然の訪問を詫びる。
その間、笑い声が聞こえるのだから、誰と来ているのか気になるところです。
なんと、義昭でした。
義昭は光秀の娘たちと遊んでいるのです。
彼は光秀を見て、こう声を掛けてきます。
「一瞥以来じゃな。あの時は無様な姿を見られた。裸足で逃げようとして」
なんでも光秀に会いたいと言うので、藤孝が連れてきたそうです。義昭は、こんなかわいい娘たちに囲まれていい、自分の周りはむさくるしい男ばかりじゃ、と軽く言ってきます。
用件を聞いてくる相手に、義昭は訪問理由を言います。
兄に信頼されていたそなたと話したかった。敦賀にいると息が詰まる。ただ待たされるだけの日々。
そんな中、桜の樹の下で蟻を見つけました。
自分の体よりはるかに大きな蝶を運ぼうとする。小石や草が邪魔になってしまう。仲間が助けに来ても、いらぬと助けを振り切って己だけで運ぼうとする。意地になっているのだ。一息では無理だというのに。
「それでどうなりました?」
「蟻は私だ。将軍という大きな羽じゃ、一人では運べぬ。しかし助けがあれば……」
「お心は決まりましたか?」
正直、まだ迷いはあると義昭。
ついこの間まで坊主だった。毎日お経ばかり読んでいた男に、武家の棟梁がつとまるとは思わない。
しかし将軍になれば、私が今まで手が届かなかった人が救えるかもしれない。それゆえ、将軍になるのだと。
ちょっと照れ臭そうに、おかしなことを言うと思っていると言う義昭。物心ついた頃から。そのようなことを考えているとか。
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光秀はここでハッとしています。
将軍になられる方がそのようなお考えをお持ちなら、民も救われましょう。キッパリとそう言い切ります。
義昭は、武士ではないから、どう頑張っても兄上のようにはなれぬと弱気です。
「助けがいる。朝倉の助けが。そなたからも、義景殿によしなに伝えてくれぬか」
そう頼まれる光秀。
皮肉といえば、皮肉な話です。信長と義昭という二人から、こうも求められ、頼られて。この後、その間でどうなるか考えれば、怖くなってきます。
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