麒麟がくる感想あらすじ

麒麟がくる第25回 感想あらすじ視聴率「羽運ぶ蟻(あり)」

2020/09/28

永禄9年(1566年)――。

覚慶は還俗し、足利義昭を名乗り、朝倉義景を頼り、越前へ向かいます。

しかし、一乗谷に程遠い敦賀で、髪も伸びるほど、三月、半年と待たされ、三淵藤英と細川藤孝の兄弟はイライラ。弟の藤孝は、暑苦しいほど熱血野郎で、兄に当たっています。

藤孝は悪人でもないし、むしろいい人ですが、この思いこみの激しさ、熱血ぶりがちょっと危険で、すごくいいですね。その部分が嫡男の細川忠興に凝縮して発揮され、光秀の娘・玉(細川ガラシャ)が苦しめられることも想像できます。

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藤孝は育児失敗というわけでもなくて、息子さんで強化される激情があるんですね。

暑苦しい。正直、ちょっとウザいぞ、藤孝! と言った感じでしょうか。眞島秀和さんは本当に最高以外の言葉が見つからない。

そんな弟と抜群のケミストリーを発揮する谷原章介さんの穏やかさよ……。

演じるとすれば、藤孝の方がやりやすいのかもしれず、受け止める谷原さんには、貫禄が出てきてこれまた素晴らしいですね。

そんなイライラ兄弟が支える義昭は?

庭に座り込んで、蟻を見つめています。羽を運ぶ蟻をジッと見つめる義昭。何かを悟ったのか、天から見下ろすようなカメラワークがうまい!

 


熱気ムンムンの藤孝に光秀も困惑

越前の光秀宅に藤孝が来ています。

イライラ満載なのは、朝倉義景が仮病を使って義昭に会おうとしないそうです。藤孝も面会を断られているらしい。

せっつかれるのが嫌なのだ、一向に動きがない「梨の礫」だ! そうイライラ全開の藤孝。

朝倉義景がダメな奴のようで、藤孝もあまりに暑苦しくて会いたくないと思わせる、絶妙な展開です。

いや、だって、藤孝が毎日のように面会に来るのって、疲れそうじゃないですか。

これは良き史実の反映かもしれません。

細川藤孝は、この時代でも屈指のパーフェクトガイです。

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そういう自分のスキルに他の人がついてこられないことに無頓着というか、冷淡というか。風流な嗜みができない奴らってなんなの? お察しだろ! というような態度があるというか。

うーん、なんというウザい細川藤孝。極上ですね~。

熱気ムンムンで、朝倉様は何を考えているのか、上洛する気があるのかないのか!と、光秀を困らせるほどの怒りです。

「私にはなんとも……」

うん、なんともだよね。光秀、仕官すらしていません。

「いや申しわけない。十兵衛殿まで巻き込んで。他に相談する方もいないので……」

あ、藤孝がなんか悲しいことを言い始めましたよ。

同僚はどうしましたか? 避けられてませんか? 友達いなくなってません? 現代社会だったら、ランチタイムはぼっちご飯なんじゃありませんか? リモート飲み会にも誘われず……?

ここで光秀はちょっと気まずさを感じている。

だって義景に、将軍の器かどうか聞かれて、「あの方はいかがかと存じます」とキッパリ言い切りましたからね。

藤孝の期待を裏切ることを、光秀は想像できなかったのでしょうか。

そうツッコミどころは満載ですが、光秀は常にピュアなので、腹芸ができないのだと思います。

 


美濃を制した信長

そして懐かしの美濃稲葉城には、信長がいました。それにしても染谷将太さんの信長は、なんだか頑張っていると思えますね。

家臣を前にして、かしこまった口調でこう言います。

「面をあげよ。皆の者、こたびの働き、大儀であった。褒美をつかわそう」

信長って、儀礼モードになると、人形みたいにハキハキと、覚えたまんまそのまま出しているような、不器用さが出てくる。

一歩間違えると演技が下手に思えるから、役者としては困るかもしれないのですが、染谷さんはちゃんと役柄になりきっているので、そこをこなしていると思えます。信頼感が半端ない信長だなぁ。

永禄10年(1567年)、稲葉山から斎藤龍興を追放し、美濃を平定しておりました。

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美濃は織田信長の支配下となり、岐阜県の英雄・信長がここに立ち上がります。

越前で光秀は何事か考えています。そこへ母の牧がやってきます。

なんと伝吾から文が久々に届いたそうです。

明智の里はあの頃のまま、伝吾を始め、村の衆も皆息災だそうです。あのとき半分焼けてしまった館も、伝吾は建て直してくれたとか。いつ戻っても、暮らせるようにしているそうです。

光秀はハッとします。

 

牧と共に美濃へ

その夜、煕子と語り合う光秀。なんでも、牧が急に美濃へ戻ることを言い出したようです。

光秀は理解を示します。

美濃は母上が生まれ育ったところ、父上も眠っておられる。今までは斎藤家が治めていて叶いませんでしたが、信長が美濃を平定した今なら安心して帰れるのです。

煕子は、夫が美濃へ帰りたいのか尋ねます。

そなたはどうかと話を振られて、こう言葉を濁す煕子。

「子どもたちにとっては、ここが故郷ですから……」

優しいようですし、ちょっと美濃こと現在の岐阜県も絡めて、思い出したことがあります。

かつて日本は、海外に領土がありました。

岐阜県からも満洲開拓に向かった人がいる。戦争に負けたから戻れと言われたところで、満洲で生まれた子どもにとっては見知らぬ土地へ戻ることになる。

そういうふうにして、戦争で苦悩を味わった人がいる。大河ドラマを見ていて、そんな別の戦争の影を感じたのでした。

今週は前川洋一さんの作。記憶の継承は、成功しているようです。

十月、牧を連れて光秀が美濃に帰ってきました。母の乗る馬を曳く光秀よ、こういう姿が似合います。牧はのびのびとした顔で、こう言います。

「なつかしい美濃の香りがいたします」

感受性が豊な牧です。母子が明智荘にたどり着くと、そこには伝吾がいました。

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「伝吾! 帰ってきましたよ」

「大方様、十兵衛様!」

感極まった顔で頭を下げる伝吾。そんな彼の腕を無言で叩く光秀。笑いが込み上げてきます。

修理された家を見回り、光秀と牧は感心しています。

「これはそなたが直したのか?」

「村の衆にも手伝ってもらいました。以前のようにとはいきませぬが」

そう謙遜する伝吾に「十分じゃ伝吾、かたじけない」とお礼を伝えます。牧は感無量です。

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「同じ所に住めるなど、ゆめにも思いませんでした。伝吾、覚えておるか。十一年前そなたは言うてくれた」

この先、十年、二十年、皆で守っていくと誓っていました。

「まことに守ってくれたのですね」

「それが私の務めでございます」

素晴らしいものがあります。そこにいて、守ること。そのことで忠義を示した伝吾はえらい! 功績を自慢するわけでもなく、謙虚に守り続ける。「私の務め」という言葉が重いな~。

そんな明智荘に、村の衆も集まってきます。

米俵を担ぎ、稲穂を牧に差し出す。頭を下げて、酒を互いに飲む。平穏とはこういうことかと思える場面です。

なんでも龍興は、古くからの御家来衆に裏切られたそうです。

当主としての器に欠けるところがあり、皆の心が少しづつ離れていったとか。なんだか暗いものが見えてきた。

時に当主に冷たい態度を取り、おだてていた、家臣の顔が見えてくる。本作はいいですね。カリスマ性がないと、すぐさま蹴落とされる、恐ろしい世界だ……。

光秀はしみじみと言います。

「父の高政が生きていたらどうなっていたであろうな……」

伝吾は、このようなことにはならなかったのではないかと口籠もります。その上で、 信長様に会われるのかと聞いてきます。

ここが超絶技巧と言いますか。光秀はちょっと考えすぎて、混乱していると見えてきます。

いろいろあった高政とのこと。そして、器が軽ければいとも簡単に砕かれる、厳しい乱世のこと。義昭のことも脳裏に浮かんで、気もそぞろなのでしょう。

ともあれ、明日会う信長のことも考えなくてはなりません。

 


美濃に戻れて感慨無量の母

ここへ懐かしい木助が呼びにきます。

牧は踊っています。無理をなされずと言われようとも、テンションがあがってしまって止まりません。

そんな母が疲れたのではないかと気遣う我が子に、牧はこう言います。

ああして踊るうちに、思い出しました。そなたが生まれた時のことを。あのときも、村の皆が祝うてくれて。酔うた父上が嬉しそうに踊り出して。

「十兵衛、まことにありがとう」

「何をあらたまって」

「こうして美濃に戻って来られて、もう何も、思い残すことなどありません」

「おやめくだされ、そのような」

母子愛の極みのようではある。土地に根付いて生きることの重みがある。石川さゆりさんの愛がともかく美しい。

光秀は「この先もずっと母上には見守って頂かないと」と返します。

「私がいなくとも十兵衛なら大丈夫。そなたは明智家の当主。その身には、土岐源氏の血が流れております。誇りを持って、思うがままに生きなさい。その先にきっと、やるべきことが見えてくるはず。私も誇りに思いますよ。そなたの母であることを」

しみじみとそう語る牧。綺麗な声でさえずる鳥のように、繊細な愛ある台詞をつむいでゆきます。

大河に出ることは親や祖父母に誇れるという感慨が役者のみなさんから聞かれます。

これは長谷川博己さんにとっても最高の親孝行だ。母に尽くす光秀の姿は、理想の息子そのもの。これは彼のご両親にとっても、宝物となる演技でしょう。こんな息子を育てたことは、最高の財産になります。

 

信長に乗り換えた稲葉とも再会

そして久々の稲葉山城では――あいつがおりました。

稲葉良通です。

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高政をさんざん弄び、操った印象がある。演じる村田雄浩さんが「どこが一徹だ!」と突っ込んだわけじゃないですか。

久々に見ましたけど、やっぱりこいつはイライラする顔をしている! はぁ……もう嫌だな。

「十兵衛、ははは! 十兵衛ではないか!」

もう、この笑いの時点で、イラっとしてくる。お互いしぶといとか言っているけどさぁ。光秀は不快感をじわりとにじませつつ、そこは如才なく織田家に仕えていると聞いています。

なんでも龍興様は美濃すら治められない、何事も一人で決められない、我らは振り回されてばかり、と。その点、信長様は器が大きいとか、ついていくならこの方しかいないと思ったそうですよ。

いろいろあったと言いつつ「これからは織田家を支えて参ろうぞ!」だってさ。

光秀が凍りついたような目をしています。

気持ちはわかりますよ。信長と似たタイプの道三には、あれだけ冷たい態度を取っていたし。高政をおだて持ち上げ神輿にして、親殺しに導いたようなところはある。

忘れられるか、この野郎……。そういう不信感をきっちり見せる光秀が不穏かつ怖い。

人間は理想だけには生きられないから、仕方ない。そういう妥協が光秀はできない。ゆえに、この先、悲劇が待ち受けているのでしょう。

でも、それも生き方だと思います。

良通は愚かでもないし、むしろスマートです。世渡り上手です。

けれども、生き延びて甘い汁をすすれるかだけ考えていて、理想も何もない人生って、それはそれで虚しいような気もしなくはありません。

光秀はとても悲しいし、羨ましいところもある。そういう人だと思えます。

 

「わしに仕える気はないか? どうじゃ?」

そして信長とのご対面です。

光秀が美濃平定を祝い、おかげで母が戻れたと言います。帰蝶様に会いたいと告げると、こちらにはまだ来ておらぬと言います。清須で子どもの面倒を見ているそうです。

それは残念だと告げる光秀に、信長は「そなたは戻らぬのか」と聞いてきます。

「は?」

「美濃へ」

「越前での暮らしがございますゆえ」

「のう十兵衛」

「はい」

「そなた、わしに仕える気はないか? どうじゃ?」

「……申し訳ございませぬ」

信長のアプローチがしつこい。光秀の断り方がそっけない。こいつらは本当になんなんだろう。

運命を感じているようで、感じていないような。

それにしても、戦国武将の光秀を求めるアプローチがすごいことになっているな。信長はこう来ました。

「わしでは不足か?」

「いえ、決してそのような!」

染谷将太さん、今週も絶品の怖さを見せつけている。

笑顔なのに怖い。勘弁してください。だいたい信長は、光秀の話を聞いているのか、いないのか。越前の暮らしがあるって言っているのに。

でも信長はなんかエラーを起こしているんだ。猜疑心旺盛ゆえに。

「こいつ、越前の暮らしとかなんとか言っているけど、他にもっといい男がいるんでしょう! 誤魔化せないぞ」

こういう思考回路ですね。信長はそういうボールを投げてから、さらに追い詰めてきます。

「一体何を考えているのだ?」

 

戦に勝てば皆が褒めてくれる

光秀は、ここで素直に本心を告げます。

亡き義輝様にお仕えしたかった。

このお方こそ、武家の棟梁として全ての武士を束ねる、世を平かにするお方だろうと確信していたのに。それがあんな不幸な形での死。

「この先、自分でもどうしてよいのかわからないのです……」

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まるで悲恋のように語る光秀。

高すぎる目標は、人を時に不幸にします。光秀は我慢していないで朝倉家に仕官しろというツッコミもある。

でも、理想が高すぎて、それもできないのでしょう。

さて信長は?

「わからぬか。わしもわからぬ」

何を言っているんだ、この人は!

ここで理由を訴えます。今川を倒したとき、そなたに聞かれた。美濃を平定したあとには、どうするかと。信長は答えられなかった。わからぬから。今でもわからぬ。

それから、無邪気な笑みを浮かべてこう言いました。

「だが一つ、わかったこともある。わしは戦が嫌いではない……」

怖い。なんだこの圧倒的な怖さは。光秀は戦に虚しさを感じているし、道三ですら戦は国を豊かにするための手段と言い切っていました。

しかも理由が怖い。

今川義元を討ち果たした時、みなが褒めてくれた。喜んでくれた。戦に勝つのはよいものだ。わしは皆が喜ぶ顔を見るのが、この上なく好きなのだ。皆を喜ばせるための戦なら、どんなことでもする――。

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信長は純粋です。

初登場時、魚を釣って売ってニコニコしていたのは、売れば、買う民が喜ぶから。

ずっとずっと、褒められたかった。父も母も、誰も褒めてくれない。自分のすることで喜んでくれない。

そういう欠けた心を抱えて生きてきて、それで今川義元を倒して、みんなのニコニコ笑顔を手に入れました。

純粋なんだか、おそろしいんだか。困りましたね……。

「ただこの先、どこへ向かって戦をいしてゆけばよいのか、それがわからぬ」

信長は困っている。

逃げた斎藤龍興は、六角や三好三人衆と手を組んで美濃を取り戻そうとしているし。東は武田。朝倉もいる。

周りは敵だらけで、美濃を取ったはいいが守らねばならぬ。戦はきりがない!

そうですね、防衛戦は守って当然だから、信長にとってはつまらない。なんとか気分転換できればよいのですが。

ほら、斬新なお城を建てるとか。

本作は興味深い。ここまで考えたことで、城や街づくりのことも、ピタッとあてはまる気がした。信長の気持ちがつかめたような。

きっとこうしたい、ああしたい、ワクワクしながら、美濃を整えたんでしょうね。岐阜に行きたくなって仕方ない!

 

互いのズレに気づかぬままに話が進み

光秀はここで、今後の局面を変える重大なことをします。

 

いつまで経っても戦が終わらないことに同意しつつ、上洛を提案するのです。

義輝様が討たれた今、新たな将軍に力を貸し、畿内を押さえるのだと。

信長は、畿内を抑えたら堺が手に入るのかと聞いてきます。ずっと堺が欲しかった。南蛮や明と商いをするのだ。そうウキウキワクワクしています。

ここの場面は重要です。

光秀は、信長が天下人になるプランを立てている。

でも、信長は堺で貿易するワクワクした計画に夢中。頭の中は、南蛮や明から届く珍しいものでキラキラしている。

一方の光秀は?

幕府を再興し、将軍を軸として畿内を中心に築く。武士が誇りになる世になれば、皆大いに喜びましょう。そう言っています。

ズレてる。

決定的に、ズレてる。

しかしお互い気づかない。

「大きな国です」

「ん?」

「かつて道三様に言われました。誰も手出しのできぬ大きな国を作れと」

蝮の言葉に感銘を受ける信長。下手に道三様を出したから、ズレに気づかないのかも。

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光秀は、テキパキと新将軍候補は朝倉家の越前にいると告げ、きっちりと、信長の関心を引き出しました。

「義昭様はいかなるお方か?」

「義昭様は……」

信長は口ごもる光秀に、義輝様と懇意にしていたことを持ち出し、「そなたがよいと言えば、担ぐ」と断言します。

そのうえで、地図を前にして無邪気にこう言うのです。

「大きな国か。それはこれぐらいか?」

「いえもっと」

「これぐらいか?」

「もっと」

信長は子どものような無邪気さで、地図の周りをトトッと歩き回ります。

「これぐらいか?」

「はい」

勇壮な音楽を前にして、二人は笑い合います。

しっかりと気があって、同じ道を見据えた二人が、いつか殺し合う。

殺す側も、殺される側も、運命を感じてしまう。

きっとこの場面をこの先何度も思い出す。

そんな悲しい場面でした。

 

この二人が殺し合う?

この場面は、光秀も、信長も、瞳が澄み切ってキラキラとしました。

二人とも純粋で、その輝きが伝わってきます。

ハセヒロさんにせよ、染谷さんにせよ、スチール写真ではなくて、動いて演技をしているときこそが美事です。

こういう役者を、思う様に演じさせたい! そういう気持ちはきっと湧いてくることでしょう。

演じ、命が吹き込まれたとき、彼らはキラキラと燃えるような輝きを見せます。それが最高潮に達した感はある。いや、まだまだ、これから、更新するのでしょうけどね。

でも、こういう輝きが、いつか消えてしまう。

酷い形で消える。

対消滅する。

こんなにも生き生きとしていて、溢れんばかりの魅力あふれる役者が演じることで、光秀と信長はまた生き返りました。

「はい、本能寺です! ベテランが死にますよ! 見せ場です!」

そういう陳腐さを超えて、生々しく、血と炎のにおいまで伝わって来るような、今年はそんなドラマを作るつもりらしい。

今からでももう、圧倒されて身が切られるような苦しさすら感じます。

この二人が殺し合う? そんな残酷な話は見たくない……でも見なくては。

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駒に近づく商人宗久

さて、京では。あの味のある茶の振り売りの名前が、トメ吉であると判明しました。

駒の丸薬は売れに売れています。丹後でも大口の注文が入ったって。

そんな中、駒は駒は妙昇寺へ向かいます。なんでも「又売り=転売」が起きているそうです。

駒は光秀同様、怒る時はキッパリと起こります。

応対した和尚は、転売を追求されても困るばかり。お寺さんでも気をつけて欲しいと言い切る駒。

と、ここで営業マンぽい今井宗久が話を聞いていました。

見るからにビジネスチャンスを拡大しそう。本作は営業部の皆さんの描き方が絶品です。陣内孝則さんが、ノリノリで演じているのが伝わってきて頼もしい。そんな宗久は、茶釜ビジネスを展開していると。

本作はいろいろな人物や事象に息を吹き込む力がある。

茶道は、今となっては雅なものとして愛されていますけど、戦国時代はもっと生々しくて、ブランドをプロデュースして、金儲けをするものだったわけですよね。

そういう不都合なまでの原点回帰を感じます。そういう細かいところにフッと息を吹き込むからこそ、圧倒的に生々しい。

宗久は抜け目なく、「揉めていたようでしたが」と和尚に丸薬の話を聞き出します。

クンクンと匂いを嗅ぎ、ビジネスチャンスを考えているようです。あの娘が作っていると知らされ、また目がキラキラしている。

本作は、利にさとい営業部員の皆さんがおりまして。

伊呂波太夫、秀吉、そして宗久もこのタイプです。

反対にピュアで、理想に突き進むのが、光秀であり、駒です。

善良なようで、「空気読めないめんどくさい奴らだな」と思われる。怒ると怖いし、情緒不安定だったりもする。そういう個性も大事だ。

 

薬が一人で歩いて、人助けをしている

駒は、転売をしていた平吉の家をたずねてゆきます。

怪我をして、座って、荒んだ目で駒を見る男たちもいる。

やはり本作は、戦争の臭いがする。こういう傷痍軍人は、池端氏世代の少年時代はよくいたものなのです。

戦争というのは、こういう存在を生み出すこと。忘れるなと突きつけてくるようで、本作は興味が尽きない。

駒がたどり着いたのは、貧しい家でした。

子沢山で、母親が我が子を怒鳴りつけています。平吉がいるかと駒が聞くと、こう怒鳴ります。

「お前また、悪さしたのか!」

「知らないよ!」

子役の込江大牙(こみえ たいが)さんがうまい。

子役は演技が確立していないので、彼らがうまいということは、演技指導が盤石である証です。本作はその点よいのです。

駒は、平吉に問いかけます。

おっかさんは病じゃない。嘘をついて又売りすることは悪い、ただのものを売るなんて間違っていると説きます。

平吉は、これで弟や妹が飯を食える、儲けて何が悪いのかと言い返します。その弟妹が兄を呼ぶ声もしてくる。駒はもう、言葉を失うしかありません。

力なく、東庵の元へ帰る駒。

団子を食べようと、声を掛けてきた東庵に、駒は平吉と又売りのことを話します。

稼いで何が悪いか。その問いかけが重い。

「私、何も言えなくなってしまって。私が間違っているのか、よくわからくなってしまいました」

「誰もまちがっとらんよ。おまえも、その子も。又売りしたとて構わぬではないか」

東庵はそう言い切ります。

駒とは関わりのないこと。お金を払うだけの余裕がある者が払う。薬が一人で歩いて、人助けをしている。いい薬だと言い切ります。

「そうでしょうか……」

「そう思うがな」

駒は丸薬を摘みます。

迷いや憂いを表現する門脇麦さん。

しっとりとした魅力が出てきて、出るたびにお綺麗になられて、そしてそんな駒の苦悩を受け止める堺正章さんには、ベテランの巧みさがあります。

 

義昭が突然の訪問

越前に光秀だけが戻りました。

侍女の常と煕子が出迎えます。なんでも藤孝が来ているとか。閉じた戸の向こうでは、笑い声が聞こえてきています。

ここで光秀が藤孝に不在、藤孝が突然の訪問を詫びる。

その間、笑い声が聞こえるのだから、誰と来ているのか気になるところです。

なんと、義昭でした。

義昭は光秀の娘たちと遊んでいるのです。

彼は光秀を見て、こう声を掛けてきます。

「一瞥以来じゃな。あの時は無様な姿を見られた。裸足で逃げようとして」

なんでも光秀に会いたいと言うので、藤孝が連れてきたそうです。義昭は、こんなかわいい娘たちに囲まれていい、自分の周りはむさくるしい男ばかりじゃ、と軽く言ってきます。

用件を聞いてくる相手に、義昭は訪問理由を言います。

兄に信頼されていたそなたと話したかった。敦賀にいると息が詰まる。ただ待たされるだけの日々。

そんな中、桜の樹の下で蟻を見つけました。

自分の体よりはるかに大きな蝶を運ぼうとする。小石や草が邪魔になってしまう。仲間が助けに来ても、いらぬと助けを振り切って己だけで運ぼうとする。意地になっているのだ。一息では無理だというのに。

「それでどうなりました?」

「蟻は私だ。将軍という大きな羽じゃ、一人では運べぬ。しかし助けがあれば……」

「お心は決まりましたか?」

正直、まだ迷いはあると義昭。

ついこの間まで坊主だった。毎日お経ばかり読んでいた男に、武家の棟梁がつとまるとは思わない。

しかし将軍になれば、私が今まで手が届かなかった人が救えるかもしれない。それゆえ、将軍になるのだと。

ちょっと照れ臭そうに、おかしなことを言うと思っていると言う義昭。物心ついた頃から。そのようなことを考えているとか。

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光秀はここでハッとしています。

将軍になられる方がそのようなお考えをお持ちなら、民も救われましょう。キッパリとそう言い切ります。

義昭は、武士ではないから、どう頑張っても兄上のようにはなれぬと弱気です。

「助けがいる。朝倉の助けが。そなたからも、義景殿によしなに伝えてくれぬか」

そう頼まれる光秀。

皮肉といえば、皮肉な話です。信長と義昭という二人から、こうも求められ、頼られて。この後、その間でどうなるか考えれば、怖くなってきます。

 

光秀の申し出に義景も心動かされ?

朝倉館を光秀が訪れます。

「明智……。聞いたぞ、義昭様に会うたそうじゃな。何の話をした?」

義景がそう声を掛けます。

ここでちょっと気づいた点でも。

朝倉家の家老・山崎吉家がおります。他の人物と比較しましょう。道三や信長は、光秀との会話の場面で家老を同席させておりません。

光秀は、蟻の話をします。義景は、

「門跡様ともなると、常人には検討もつかぬことをするのじゃな……」

と困惑を見せます。生き物を慈しむのは将軍の器ではないと呆れたようなところはありますが、光秀は「左様なことはないかと」と否定します。

任にあらずと申したのはそなただと返す義景。

それに対し光秀は、お目にかかってお話を伺い考えが変わったと、キッパリ言い切ります。聡明で、弱き者の心がわかるお方であると。

光秀は、純粋で真っ直ぐで、臨機応変です。こういうことがすんなりできるタイプと、できないタイプでは分かれます。

過去の自分の目は誤っていたと認める、そういう勇気がないまま、ごちゃごちゃと弁解したり、誤魔化そうとする人はいるもの。それが当然だとは思います。

けれども、光秀は違う。強い大名が支えれば、立派な将軍になれるかもしれぬと言い切ります。

義景も心を動かされたようです。

光秀がよしなにと伝えると、松永久秀からも文が届いていると打ち明けます。信長とともに、義昭様を担いで上洛せよと。信長と一緒というのが気にいらぬとはいえ、致し方ないと割り切ろうとしています。

「上洛されるのですか!」

「わしも考えが変わった」

ここで、なかなかえげつないことを言い出す。

義昭様は美しい神輿であられる。その美しき神輿を担ぐのは我々じゃ。そしてその神輿は、軽い方がいい――。残酷な本音です。

ここですかさず、安定感抜群の家老・山崎吉家が口を挟みます。

上洛はいかがなものか。本願寺門徒との一揆がおさまっていない。莫大な銭がかかる。

そう反論しても、くだらぬことだと一蹴し、これ以上お待たせするわけにはいかぬと突っぱねます。待たせていた決定権は義景にあるでしょうけど。そこはもう、言うだけ無駄だとは思う。

 

忠太郎様にあらずチュー太郎

するとここで、阿君丸という義景の嫡男が入ってきます。

なんと、忠太郎がいなくなったのだとか。わしが見つけてやると、義景は我が子を抱えて探し出します。

光秀が「忠太郎様?」と唖然としていると、様ではないと吉家が返します。

ネズミだってさ。チュー太郎というわけです。

必ず見つけると探し回る義景。義昭が蟻を見る様子を小馬鹿にしておいて、我が子のネズミは探してしまう。

探すのはよいにせよ、家臣に任せればよいでしょうに。

ダブルスタンダード、優柔不断、人の意見に左右されやすい。物事の優先順位をつけにくく。我が子への愛と甘やかしを混同している。よくいるダメな主君というところでしょうか。

我が子へのだらだらした甘やかしと、愛は別物です。

2年前の大河で、我が子を国費留学させることを親の愛のように描写していましたが、そういうくだらない描写にはもううんざりですので。

こうして足踏みをしている永禄11年(1568年)、三好一派の推す足利義栄が、第14代将軍となりました。

細川藤孝から文が届き、光秀は考え込んでいます。

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MVP:明智光秀

新解釈の信長と言われている以上、従来の説は全て捨てたほうがよろしいでしょう。

従来の信長と秀吉、現時点での最高値は、『MAGI』の吉川晃司さんと緒方直人さんで決まりです。

新解釈信長は、どこかAIみたいなところがある。AIのような考え方をする人間とは、集団内でごく少数いて信長がその一人です。『アイアンマン』のJ.A.R.V.I.S.でも思いだしましょうか。

帰蝶のために美濃を設定するミッションが終わったあと、信長はすることがなくて抜け殻になった。スリープ状態です。

光秀はそんな光秀に、アルゴリズムを設定しなければいけない。

「よし、信長、次は大きな国を作ろうか!」

「大きな国の定義とは? このくらいですか?」

「いやもっと大きいんだ!」

「このくらい?」

「いいぞ、信長、その調子でいこう!」

光秀は、信長が大きな国を作るミッションの過程で、物理的にいろいろぶち壊すことまで想像できない。

SFで、お掃除ロボットが「ゴミを出す人間を倒せば、お掃除が完璧になります!」と暴走して殺人を繰り返す展開を読んだことがありますが、そういう展開です。

目的達成のためなら【情】を無視し、暴走しまくると。

この信長はピュアです。野心? 野望? そうではなくて、自分の目標をプログラムしてくれた光秀の思うままに、ひたすら突き進みます。

結果、笑顔のみならず、血の海ができ、死体が積み上がってゆく。

光秀は真面目です、揺るぎない誇りと責任感がある。

ゆえに、

「お、お、俺のせいじゃないっすよ!」

と、逃げられないんですね。

そこは稲葉良通あたりとは違う。ゆえに、プログラマーとしての己の罪を自覚し、命を賭けてでも止めに行く。モンスターと化した信長を、製造責任者として破壊するのです。

そういう心理齟齬が、今年の「本能寺の変」とみた。

なんかそれって『ゲーム・オブ・スローンズ』のオチでは? というツッコミは理解できます。

心理齟齬が生み出す悲劇をどう描いていくか。それが現在の最先端だと思えばよさそうです。

 

総評

今週も、狙いに狙って視聴者の心をぶった斬る。

鬼しごきめいた展開でした

タイトルの「羽運ぶ蟻」。ここ数年の大河でも最上級、詩的なタイトルではあります。

羽を運ぶ蟻に感銘を受ける義昭は、なんてスイートな将軍様なのでしょう……と、甘ったるいようで、地獄みを帯びた展開をバシバシやらかすから気が抜けません。

そんな甘っちょろい感情だけで動けるかよ!

そういう高笑いはいつくも聞こえてくる。光秀と対になる駒も、転売ヤーに直面して困り果てています。

本作は、心を動かすことの是非、恐怖を描いているという点で、このコロナ時代にふさわしいとも言えます。

世情が不安になると、人の心が不安定になる。ここ数ヶ月、憂鬱なニュースが多い。心に根を張るために、何が必要なのか?

牧が答えを出しています。

「揺るぎなき誇り」であると。

その反対に、こんな時代だからこそ、諸刃の刃となる動きも見えてきている。

【心理操作】です。

一人の人間が暴れまわって殺すとなると、そんなに効率よくできない。武器を使って倒すとなれば、心身ともに疲弊する。

では集団心理を操るとすれば?

罠を仕掛ける。井戸に毒をまく。火をかける。困窮状態に追い込む。疫病が流行しても放置する。

このほうがよほど悪影響を及ぼす。

信長の生首箱詰めがサイコパスだのなんだの言われていますが、心理を操る方向にもっていく方が、よほどおそろしいと思えます。で、本作の登場人物たちはそれに直面してしまうと。

光秀は、麒麟の到来を信じている繊細な魂を救うために、もがき動くうちに、気がつけば周囲の心を動かしてしまう。

信長は、この世界のルールそのものを変えたい! 幼い頃から、誰にも褒められないと悩んできた。ならばここは発想の転換だ! 貶され、見下されていたけれど、ゲームのルールを変えれば逆転するはずだ。そういう価値観の転換すら狙いにいく。

秀吉は、心理操作を己の利益のために、輝けるスターダムに登るために、使うことができる。エゴイズムの塊でとんでもない男だろうと、周囲がしびれてしまう。昇り詰めるとはそういうことだ!

家康は、心理操作を社会変革のためにこそ使うべきだと理解している。将軍になること? それは二の次。社会変革のために栄誉が必要ならば、人の心を操って狡猾な手段を使ってでも、邁進するしかない。そう割り切ります。

その動機の根底に、悪意があるかどうかは問題でもない。

心を動かし、集団を導くことには、どうしたって責任があります。

美しい景色が見られる場所があるからと、集団登山を強制したら、迷惑な奴になりかねない。

人の群れを導くことは、どれほどおそろしく、責任重大であることか。

リーダーシップの持つ罪、それを濫用した罰に、本作は迫っていくようです。


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【参考】
麒麟がくる/公式サイト

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武者震之助

2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』以来、毎年レビューを担当。大河ドラマにとっての魏徴(ぎちょう)たらんと自認しているが、そう思うのは本人だけである。

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