フランツ・リスト

フランツ・リスト/wikipediaより引用

音楽家

ピアノの魔術師フランツ・リストの生涯~自分の演奏中に失神することも

芸術家というのは基本的に「濃い」ものです。

キャラが濃くないと作品を生み出せないからなのか、はたまたのめりこんでいるうちに自然とキャラが濃くなるのか。

卵か鶏かみたいな話になってしまいましたが、中にはどう考えてもぶっ飛びすぎているのに大人気な人もいます。

1811年(日本では江戸時代・文化八年)10月22日に誕生したフランツ・リストもおそらくその一人でしょう。

「ピアノの魔術師」

「史上最高のピアニスト」

そんな言葉で称されるように、常人に演奏不可能なレベルのピアノ曲を数多く作り、また自らも演奏した作曲家・演奏家です。

 

「超絶技巧練習曲」という、タイトルからして嫌がらせ以外の何物でもない曲は有名ですよね。

現代では全曲弾ける超弩級のバケモ……ゲフンゴホン、ピアニストも数人いるそうですが。

 

指が6本あると言われたフランツ・リストの演奏力

そんな曲を書いた人ですから、リストのピアノに対する執着は並外れていました。

小さい頃から手をめいっぱい広げる練習をし、10度(1オクターブ+鍵盤二つ分/要するに鍵盤10個)を片手で押さえることができたといいます。

もちろん指を動かす早さも常人には考えられないほどで、「指が六本あるんじゃないのか?」とまで言われていたとか。

まぁ、冗談だとしても、それぐらい”ありえない”技術を持っていたということですね。

とにかく化け物染みた演奏でしたので、自作品だけでなく他の作曲家が持ってきた曲でも一発で完璧に弾きこなしてみせたといいます。

中には「手(=音?)が足りない!」とイチャモンをつけられた人もいるほどです。

いやいや、いやいや……。

何から何まで師匠の基準に合わせたら、ピアノを弾ける人がこの世からいなくなるがな。

 

ショパンだけは初見で弾けず引きこもる

しかし、そんな彼にも挫折らしきものがあります。

同時代に生きた「ピアノの詩人」ことショパンの「12の練習曲・作品10」だけは一発で弾くことができず、何週間も人前に出ないで練習したとか。

リストの負けず嫌いぶり、技術への信仰めいた考えがよくわかりますね。

ちなみにそんな激しい演奏をされるピアノのほうも大変だったようで、

「一曲演奏する間に弦が切れた」

「ハンマー(ピアノの内側で弦を叩いてる部分)が壊れた」

「それを見越してピアノを三台用意した」

などなど、まるで体育会な逸話も残されています。

ベーゼンドルファーというメーカーは

「リストの演奏に唯一耐え抜いたピアノ」

としてキャッチコピーにしていたりしますから、その実力がここからもわかりますね。

 

若い女性がコンサートで失神することも

また、若い頃のリストはイケメンぶりでも有名でした。

それでいて上記のような曲を生み出し、弾きこなすのですから当然若い女性にモテモテ(死語)。

コンサートで失神した人も多かったそうです。

一般の女性だけでなく、後にロベルト・シューマンの妻となるクララもリストの演奏中に号泣したことがあるとか。

彼女もまた優れた作曲家・ピアニストでしたので、感受性は豊かだったでしょうからね。

ロベルト・シューマン
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お前は一人ビートルズか……と思いきや、リスト自身が、自分の演奏中に気絶することもあったそうなのでもうわけがわかりません。器用すぎるやろ。

とはいえ男性との付き合いもなかったわけではなく、特に同業者であるベルリオーズやシューマン、前述のショパンなどとは比較的親しかったようです。

ただし晩年は心疾患や気管支炎・白内障など体の病に加え、うつ病も患っていたそうで、あまり幸せとはいえなかったとか。

音楽家には薄命な人が多い中、リストは74歳まで生きることができたので、かえって孤独になってしまったのでしょう。

リストの一生(左から少年期・青年期・壮年期・老年期)/wikipediaより引用

生前最後の慰めは、亡くなる直前までワーグナーのオペラ「トリスタンとイゾルデ」を見ていたことだと思われます。

自分の曲ではないにしろ、最後の最後まで音楽に触れていられたわけですから、ある意味、本望だったのではないでしょうか。

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長月 七紀・記

【参考】
『大作曲家たちの履歴書(上) (中公文庫)』(→amazon
『大作曲家たちの履歴書(下) (中公文庫)』(→amazon
フランツ・リスト/wikipedia

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