ヨーロッパのお城

仏国カルカソンヌ城 photo by お城野郎!

欧州

戦闘力バリバリなヨーロッパのお城!現地写真と共に歴史を振り返る

今回のテーマはヨーロッパのお城。

日頃は国内を歩き回っている私に対して、

「おい、無理すんなよ、完全アウェイだろ」

なんて声もかすかに聞こえてきそうですが、実は欧州をほっつき歩いてお城情報を仕入れたことがあります。

もちろんノイシュヴァンシュタイン城のような宮殿タイプのお城ではなくて、戦闘用で城塞タイプのガチな城です。

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欧州のお城の源流を求めてフランスの田舎を10キロ歩いたり。

イギリスでは羊の放牧場みたいな場所で寒い中、鼻水たらしながらやってくるかどうか分からないバスを1時間待ったり。

体を張って集めてきた情報なのでガチです。

ということで、最初に欧州のお城の簡単な変遷を見て参りましょう。

 


ヨーロッパの城には3つの起源がある

欧州のお城の起源を辿って行くと3つの起源にたどり着きます。

◆1 ローマ人がガリア地方に植民して建設した方型の軍団基地(fort、fortress)→からのcastle

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ハドリアヌスの城壁付近の軍団基地跡(イギリス)

 

◆2 ガリア人が独自の文化で建設した城塞都市オピドゥム(Oppidum)→高い壁で囲んだ城塞citadelle(citadel) → 高い壁で町ごと囲んだ城市cite(city)→からのcastle

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「アレジアの戦い」で有名なアレジア。ユリウス・カエサル率いるローマ軍団vs首長ウェルキンゲトリクス率いるガリア部族連合の舞台。

 

◆3 ノルマン人(ヴァイキング)が欧州中に攻め込んで広めた主塔、天守(Keep、Donjon)→castleの一部として採用!

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フランス、パリのヴァンセンヌ城の主塔(天守)

 

おおっと、英語が。

あと、何語か分からない文字も……というあなたも大丈夫です!

万国共通お城用語ですから。

兎にも角にも、ヨーロッパのお城は、上記の3つが融合→発展して形作られていきました。

ただし「城」といっても町まで城壁で囲んであったり、一体どこまで城なのか分からないものもあったり、完全に都市機能しかない城市も存在しますが、欧州ではお城用語で明確に区別されています。

日本語に訳される過程ですべて「城」に訳されるのはあまりにももったいない。

魚好きの人にアジやサンマを見せて、すべて「これは魚だ」と言っているようなものでしょう。

フランス、イギリス、スペイン、ベルギー、ドイツあたりの城や都市の起源には、「ローマ人が建設した~」とか、「ガリア人が建設した~」とか書いてあります。

現地へ観光に行ったときは

「ローマ人が起源?ほほう、てことは、ここはfortが起源か。最前線だねえ」

とか

「ガリア人?ああ、オピドゥムね」

と周囲に日本人がいなくてもとりあえず日本語でつぶやき、

「ローマ人が建設したオピドゥムが起源で~」

というガイドブックやネット記事の誤用(わりと見ます)に対しては、ドヤ顔で「ありえない!」とツッコんであげましょう。

 


ローマ軍団が建設した「軍団基地(=fort)」

さて、城を語る前にここで少しローマ人の歴史を振り返ってみましょう。

世界史を少しでもかじったことのある人、また塩野七生大先生の「ローマ人の物語」を読んだことがある人にはおなじみの解説かもしれません。

ローマ人が領土を拡大して行く過程で、現在のイタリア半島から蛮族の土地「ガリア」と言われる現在のフランス、ベルギー、オランダ、ドイツ、そしてブリタニアのイギリス方面にユリウス・カエサル率いるローマ軍団を送り込んで征服していきます。

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先ほどの【◆1】はそのローマ人が威信をかけて建設した対蛮族(ガリア人、ゲルマン人)への前線基地(fort、fortress)です。

ローマ軍団は、征服した土地に「軍団基地(=fort)」を建設し、そこを中心にさらに領土を拡大していきました。

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ローマ街道によって網の目のように張り巡らした「fort」は、やがて後方は軍団の司令部として「ちょっとでかい軍団基地(=fortress)」になります。

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ちなみにローマ人の習慣なのか。

軍団基地は主に平地にきれいな方型で建設されます。

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そこで居心地がよくなると基地が町になり、兵役を終えた後も退職金を握りしめたローマ兵、また現地妻を作ってしまったローマ兵などが入植し植民市(コロニー)ができます。

ドイツのケルンという町の名はずばり「植民市」です。

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現在のケルン。

ライン川の向こうがローマ人の土地。

手前がゲルマン人の土地というまさに最前線です。

 

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ローマ時代のケルンの想像図。

川向こうに突出した「馬出し」を設けるアイデアもまさに「城」ですね。

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