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【ヨーロッパの城郭】
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町ごと高い城壁で囲む城の起源は?
一方、オピドゥムは蛮族、いわゆるガリア人の村落を指します。
ローマ軍団やゲルマン人などの他の部族からの襲撃が絶えないデンジャラスな世界ですから、ガリア人も自分たちの町を守るためにオピドゥムの守りをガチガチに固めていきます。
これが町ごと高い城壁で囲む城の起源です。
この小高い丘全体がアレジアのオピドゥム。
ガリア人はオピドゥムの中心に祭壇(土着の神様)を設置して、城内の精神的な中心地にしていました。
欧州のお城には必ず教会が付属しますが、キリスト教に改宗しても城の中心に祭壇を置くガリア人の様式を受け継いでいるのは面白いですね。
丘の本丸。今はガリアの英雄「ウェルキンゲトリクス」の巨大な像が。
ローマ帝国の末期になると、もうガリア人もローマ人も全部ひっくるめてローマ人に(大ざっぱでスミマセン)なっていき、軍団基地もオピドゥムも同化し、全部ひっくるめて城塞化していきます。
やがてローマ帝国が消滅し、かつての軍団基地やオピドゥムの防備をガチガチに固めて独立し、欧州にバトルロワイヤルな時代がやってきます。
南フランス。ヴィルヌーヴ・レザヴィニョン。
ヴィルヌーヴ・レザヴィニョンの城塞。
元々はこの城壁内だけが町であり、城でした。
ヴァイキングは船に乗ってドコまでも
小領主同士が小競り合いを繰り返していると、ちょっとそれエディタいじり過ぎでしょと言いたくなるほど戦闘力がハンパないノルマン人、いわゆるヴァイキングが北からやってきます。
彼らは船に乗ってどこまでもやってきます。
最初は略奪して帰っていくだけでしたが、「このまま住んじゃった方が楽じゃね?」と考えるようになり、「どうせなら南の暖かい土地目指そうぜ」ということで地中海まで進出していきます。
北フランスやイギリスの領主が「こんなショボいとこ略奪するより南の方が豊かでっせ、旦那」とささやいた疑惑さえありそうです。
ノルマン人は海や川がないところには船を担いでやってきたそうです。
もう「どんだけ船が大事なんだよ!」という展開ですが、彼らの進攻は城に新たな施設を生み出します。
それが主塔とよばれるKeepいわゆる「天守」です。
見晴らしの利く櫓のような施設は以前からありましたが、キープは領主の住居にもあたる施設です。
ちなみにムーミンの家もまさにその主塔タイプです。さすが北欧起源。
イングランド南部の最前線「ドーヴァー城」
フランスの「ヴァンセンヌ城」
このノルマン人の天守が最後に融合して欧州の「城」が完成します。
カルカソンヌ城
定住したノルマン人もやがて現地と同化して、キープの役割も徐々に変わっていきます。
最初は領主の住居と財産管理の施設だったりしましたが、その防御性能の高さから捕虜、特に捕虜でもVIPな捕虜の牢屋としても使用されました。
牢屋といえば地下に作るものという認識がありますが、初期の牢屋は最上部にありました。
塔の上に閉じ込めておけば逃げられないだろうという発想で、自分の住まいの上に牢屋という、こんなアバンギャルドな感覚が中世の欧州のお城なのです。
しかしある時から「やはり領主は見晴らしのいい上階に住むべきだろう」と方針転換をして、牢屋が地階(G階=日本でいう1階)になり、これがどこかで誤訳され地下牢となり、フランス語で天守の意味だったはずのDonjonも意訳されてダンジョン=地下迷宮の意味に発展していきました。
ここから城の構造へ、と行きたいところですが、長くなりそうなので本日はここまで。
◆覚えておくと、いつかドコかでカッコよく振る舞える本日のまとめ
「城? それ、パレスだろ(吐き捨てるように)」
軍団基地起源かオピドゥム起源か確認しよう!
ムーミンの家は天守♪
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筆者:R.Fujise(お城野郎)
◆同著者その他の記事は→【お城野郎!】
日本城郭保全協会 研究ユニットリーダー(メンバー1人)。
現存十二天守からフェイクな城までハイパーポジティブシンキングで日本各地のお城を紹介。
特技は妄想力を発動することにより現代に城郭を再現できること(ただし脳内に限る)。