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『光る君へ』感想あらすじレビュー第35回「中宮の涙」紅と青が混ざって藤色に

中宮彰子の懐妊を願い、御嶽詣へ向かった道長一行。

命の危険さえ本気で危険な取組ですから、道長は娘の懐妊だけを願っていたのか? 彼を駆り立てた動機は何だったのか?

前回の放送では、興福寺の欲求を突っぱねてから不幸が続きましたので、そうした懸念を払拭したかった思いもあるかもしれません。

何だか不穏なことを察している道長の様子も描かれていました。

さらには前回の放送では「曲水の宴」も開催されています。

※以下は「曲水の宴」の関連記事となります

『光る君へ』で道長が開催した行事「曲水の宴」とは? 起源は中国の曲水流觴

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このイベントには、女性の不妊の原因となる穢れを祓う禊(みそぎ)としての意味もあります。

道長自身からすれば、どちらの狙いもあるのでしょう。

その上でいかなる動機をクローズアップするのか? プロットに練り込むのか?その取捨選択が見どころになる。

今回はナレーションで「懐妊祈願のため」と明示されてドラマは始まりました。

歴史劇とは、史実で起こったことに対し、創作側が好きな動機をつけることが特徴といえます。

たとえば本能寺の変は、大河ドラマが作られるたびに動機が変わる。

本作は、御嶽詣を道長の親心としたことで重要な意味を持ち始めました。

 

藤原伊周の陰謀

この御嶽詣に際し、道長の政敵である藤原伊周は自邸で陰謀を練っていました。武士の平致頼(むねより)を派遣し、道長暗殺を狙っているのです。

道長一向は僧侶を含めておよそ20名しかいない。これも「思い上がっているからだ」と勝手な解釈をする伊周。

すると、打ち合わせのあと、弟の藤原隆家が酒を片手にやってきました。

すれ違った武士を見て、何か不穏なものを覚えながら伊周の元へ行くなり、先にこう言われました。

「何も聞くな」

「聞く前に言うな」

ただならぬ気配を察知した様子の隆家。伊周も訝しんでいるのか、何をしにきたのかと問いかけてきます。

隆家はよい酒をもらったから一献どうかと勧めてきます。

酒は飲まんと返す伊周。実は皇后定子が身罷られてから飲んでいないとのことでした。

「そうだったかのう」

怪しい雰囲気を察知して露骨に疑っている隆家。伊周は、弟を帰らせて一人で考えたいと告げます。

史実においては、伊周の暗殺計画が漏洩していたことは確かで、藤原実資の日記『小右記』の目録である『小記目録』に記載があるそうです。

実際にあったのか、はたまた噂を実資が書き留めただけなのか。道長の日記『御堂関白記』を読むと、そうした暗殺が実行されたようには思えません。

本作はそこをアレンジしてプロットに取り入れてきました。

 

日本ならではの絶景と信仰

豪雨の中、道長一行は山道を登ってゆきます。

御嶽詣といえば過去には藤原宣孝も行い、その際のド派手ファッションが呆れられて、『枕草子』では「ありえなくない?」と批判されたものでした。

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宣孝の御嶽詣が途中までのイージーコースなら、道長はガチのベリーハードコースだったのか。

行く道は険しいものであり、これぞ絶景ロケ!

苔むした岩。

古代から聳え立っているような木々。

まさに秘境であり、足元を泥まみれにしながら、彼らは山道を歩いてゆきます。

これぞ日本といえる景色であり、観光ポスターに使いたくなる見事な風景が広がっていますね。

舗装されていない道は、靴よりも草履が適しています。日本の交通事情が反映された足元が大写しになります。

彼らの眼前にそびえる大木も凄まじい迫力ですね。

日本は森林火災が起きにくい環境にあり、まるで古代からあるような森が特徴。大河ドラマはじめ、時代劇ならば一度はこうした森の景色があると嬉しいものです。

『鎌倉殿の13人』でもしばしば見られました。

そして山岳信仰も重要です。

山がある。神秘的だ。そう考える原始的な宗教は日本らしさがあり、中国由来の山岳信仰の影響も感じられます。

険しい自然環境で信仰心を試す。そういう根源的な心理状態が興味深いともいえる、実に意義ある場面でしょう。

 

よくできた嫡男・頼通

宿にたどりつき、道長と頼通は食事をとっています。

しかし食欲がないようで、頼通は心配しています。義兄の源俊賢がやってきて、明日は雨が上がりそうだと声をかけながら食膳の状況を見て、心配しています。

「もっと召し上がられませ、体が持ちませぬゆえ」

そういうと、頼通は無理強いはするなと言います。いざとなれば私が父を背負って山を登ると語るとまで言い切ります。

俊賢はそんな頼通の心構えを絶賛し、頼通は聡明で頼りになり優しいと褒めちぎっています。

道長は淡々と「あまり褒めると図にのるからほどほどにせよ」と止めるのでした。

調子に乗ったことはないと否定しながら、座を立って厠へ向かう頼通。

このあと俊賢はすかさず、妹の明子が産んだ、つまりは甥の藤原頼宗もなかなかだと勧めてきます。

すると道長が意外な言葉を返してきました。

「明子は私の心をわかっておらぬ」

地位が高くなることばかりが幸せではない。明子は頼通と頼宗を競い合わせようとするけれども、もう張り合うなと言うようにと俊賢に伝えてきます。

これには俊賢も「はは」とかしこまるしかありません。

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道長は随分と切れる男になりました。かつては藤原斉信の思惑にしてやられたと悔しがっていたものですが、今では相手の意向を見抜き、嗜めるようにまでなっています。

人としての器量は申し分ないようで、食が細いことは気になります。道長はあまり長命ではないのだろうと思わせます。

この食事にしても、じっくりメニューをみたら絶望的な気持ちになることでしょう。

仏教の修行ですから、酒はともかく、肉も魚も、ニンニクもない。茶もまだない。体を動かしたあとは塩分、糖分、クエン酸が欲しくなるもの。

果たして栄養は足りているのでしょうか。

羊羹はスポーツ時のカロリー補給に最適ですが、その羊羹にせよ日本で生まれるのはまだまだ先のことです。

何を食べて精をつけるのか? と、頭を抱えたくなるような質素な料理でしょう。

昔の食卓は飯の量がともかく多いのですが、それにはおかずが少ないという事情もありました。

想像するだけでも気が遠くなりそうです。

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