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『光る君へ』感想あらすじレビュー第35回「中宮の涙」紅と青が混ざって藤色に

2024/09/17

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第35回「中宮の涙」
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少女誘拐をする光る君は「無分別」だ

まひろは執筆しています。

NHKの別番組『100カメ』でも書道指導の根本先生が絶賛しておりましたが、小筆書き(かな書道をする人)は吉高由里子さんが小指をつけずに筆を握ることに驚嘆しているとか。

ドラマの序盤で、彼女が歌の代作をしていた頃は、「左利きなのに修正してがんばっているなぁ」と思って見ておりました。

それが今ではあまりに自然で美しくて、驚嘆するばかりです。

まひろが執筆を終えると、同僚である左衛門の内侍と思い人がいて、二人とすれ違いました。

あれが帝と中宮が夢中になっている噂の女房かと驚く男。

私たちとは比べものにならないと嫌味を言う左衛門の内侍。

遅くまで尊いことをしてご苦労様だと労った上で「私たちは尊くない楽しいことをしましょ」と去ってゆく二人です。

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その物語を、中宮の前で宰相の君が読んでいます。中身は「若紫」のようで女房たちは感想を言い合っています。

無理に少女を連れ去るのはどうか。

少女の父が薄情だから、光る君のところの方がよいのではないか。

そうはいっても、強引ではないのか。

まことの思い人は藤壺なのだから、これではこの少女はおもちゃのようなものではないか。

子まで為しておきながら、幼子を引き取る光る君は無分別の極み!

「無分別!」

一同からはそんな結論が出されていました。

これは現代の古文の授業にしてもそうで「あれは一体どうなのか」と話題になったりします。

森鴎外の『舞姫』と『源氏物語』は、主人公の言動が嫌な国語教材のワースト候補じゃないか?と個人的には思うほど。

そこへ宮の宣旨がやって来て、敦康親王は物忌のため来られないと説明しています。

そして女房たちには、装束の手入れをする刻限だと告げるのでした。

 


中宮様はどのような人でしょう?

準備をしようとまひろが立ち上がると、突然、中宮彰子が語りかけます。

「光る君へに引き取られて育てられる娘は私のようだ」

幼いうちに入内し、ここで育てられた。そんな自分と重ねる彰子。この娘が今後どうなるのか、気になっています。

考え中だと答えるまひろ。それを踏まえた上で、どうなると良いか?と聞き返します。

「光る君の妻になるのがよい」

そして妻になるということを噛み締めるようにいい、なれるようにしておくれと懇願してきます。

物語によって心が開いてきた中宮に、まひろは問いかける。

「帝のまことの妻になりたいと仰せになったらよろしいのではないでしょうか? 帝をお慕いしておられましょう」

「そのような……そのようなことをするなぞ私ではない」

「ならば中宮様らしい中宮様とはどのようなお方でございましょうか」

そう質問を投げかけると同時に、自分が知る中宮様は青い空が、冬の冷たい気配が好きだと続けるまひろ。

左大臣の願う苦労も知っている。そして敦康親王にとっては唯一無二の女人。色々なことにときめく心もある。

「その息づくお心の内を帝にお伝えなされませ」

呆然とする中宮。

そこへ帝がやってきます。敦康に会いにきたがおらぬというと、突然、中宮が帝の方を向きました。

「お上!」

「ん?」

「お慕いしております!」

涙ながらにそう訴える中宮。

帝は憐れむような目をして「また来る」と立ち去ってゆくのでした。

涙が次から次へとあふれてくる中宮。泣きじゃくる中宮でした。

 

開いた心、結ばれた縁、実った策

道長が帝に来年の朝拝について申し入れをしていると、帝は御嶽詣のご利益はあったのかと声をかけます。

まだわからないと答える道長。

「今宵、藤壺に参る。その旨伝えよ」

帝の突然の言葉に驚いた表情の道長。これぞ、ご利益でしょうか。

藤壺では、女房たちが帝を迎える準備をしています。中宮は女房に身を任せ、身を整えている。

そして雪の降る夜、帝が夜の藤壺へ渡ってきました。

中宮に年を尋ねると、二十歳と答えられ、いつの間にか大人になっていたと返す帝。

「ずっと大人にございました」

「そうか……」

帝はそっと中宮に寄り添い、寂しい思いをさせたことを詫びます。そして抱き寄せ、二人はまことの夫婦となるのでした。

その夜、まひろと道長は月を見ていました。

道長に「お前の手柄か?」と尋ねられて「何もしていない、帝の心を掴まれたのは中宮様ご自身だ」と返すまひろ。

「金峯山の霊験」も付け加えます。

そう語り合う二人を、誰かが物陰からジッと覗いていることが気になりますが……ともかく策は成功しました。

帝の心を動かしたのは、他ならぬ道長とまひろの二人だったのでしょう。

帝は道長の御嶽詣に動揺し、まひろから親心を解説されて罪悪感がチクリと生まれていました。

思い起こせば円融院は藤原兼家を嫌っており、そのせいで娘の詮子まで遠ざけようとしました。

しかし道長は帝に好かれており、そのせいで帝は罪悪感を刺激されたのです。

一方、まひろは物語を通し、中宮の心を開きました。

薄紅色が似合う人形のように扱われていた中宮。

その心を開き、青い空を好む姿を引き出した結果、中宮は紅と青が混ざった紫色になりました。

藤壺にふさわしい、藤色で咲き誇る姿になったのです。

二人の結束が、この成功をつかみました。

大成功です。

 

MVP:藤原隆家

本作は、2019年下半期の朝ドラ『スカーレット』チームからの続投が多いことにも注目したい。

あのドラマは、細やかな心理描写が見どころののひとつでした。

今回も「心を開く」と出てきます。

心の機微が重要なのです。

誰も彼もが心の開き方、閉ざし方を間違える。そう伝えてくるようなこの作品。

藤原伊周と藤原隆家の兄弟も、その典型例に思えます。

青年期のやんちゃな隆家は、思ったことをそのまま実行に移してしまう悪癖ゆえに、軽薄なノリで花山院を射つという痛恨のあやまちを犯しました。

一方で伊周は、政治復帰の野心が全開になってしまった現在の方が、ブレーキが壊れ気味に思えます。

隆家は自分が恨まれてもよいと嫌われる勇気を発揮し、そんな兄の煮えたぎった復讐心を止めるべく、果敢に動きました。

心を分析したうえで、兄の説得に成功しています。

安倍晴明やまひろのような策士型とはちがう、熱血路線で心理操作を体現したのが隆家。お見事です。

演じる竜星涼さんがまた素晴らしい。

隆家は何も考えていないようで、しっかりしている。そんな魅力的な人物です。

あけっぴろげなようで奥が深い人物像になるよう、考えて演技を練っているように思えます。

でも見ている分には天衣無縫で、あるがままに、そのまま振る舞っているように見えてしまう。すごいことで震えてしまいそうです。

そして繰り返しますが、このドラマはあの『スカーレット』チームです。

『スカーレット』は喜びと楽しみに向かってゆく心の機微を美しく仕上げてきました。

その一方、怒りと哀しみへと転げ落ちてゆく悲痛な心も、生々しく血が滲むように丁寧に描いたものです。

『源氏物語』は決して明るい物語ではありません。

彰子も、父・道長に対し、ずっと敬愛だけを抱いているわけでもありません。

そんな彼女に仕えるまひろもそうでしょう。

ドラマが後半となり、冷たい風が吹くころ、どう見るものの心をかき乱してくるのか。今から楽しみにしております。

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【参考】
光る君へ/公式サイト

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武者震之助

2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』以来、毎年レビューを担当。大河ドラマにとっての魏徴(ぎちょう)たらんと自認しているが、そう思うのは本人だけである。

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