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『光る君へ』感想あらすじレビュー第35回「中宮の涙」紅と青が混ざって藤色に

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第35回「中宮の涙」
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物語にしてしまえば何もかも霧の彼方へ

道長は都に戻り、藤壺へと報告に来ます。

すると敦康親王もやってきて「どこへ行っていたのか?」と無邪気に尋ねます。そして左大臣が留守の間「中宮を守っていた」と誇らしげに言うのでした。

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道長はその後まひろの元へ向かい、物語の進捗について確認してきます。彼女から「次の巻を書き上げた」と聞くと、疲れているだろうに「見せよ」と命じてきます。

道長は逃げた小鳥を追いかける少女は、まひろの実体験だと理解しつつも、こんなにかわいらしくなかったと言います。

嘘はつくし話は作るし、とんだ跳ねっ返りであった――そう軽口を叩きながらも、内心面白くて気になるからこそ、読みにきたのでしょう。

疲れも吹き飛ばす物語の力。現代人であれば週刊漫画誌やおもしろいドラマの続きが気になるようなものでしょうか。

しかも、このあとの展開は、光源氏と藤壺が密通し、不義の子を孕ってしまう展開です。

道長が動揺しながら、この不義の話はどういう心づもりで書いたのかと尋問してきます。

「我が身に起きたことにございます。我が身に起きたことは全て、物語の種にございますれば」

「ふ〜ん、おそろしいことを申すのだな。お前は不義の子を産んだのか?」

そう問い詰める道長。

まひろの子は一人だけなのに、密通相手が自分だと思い当たるところはないのでしょうか?

どれだけ鈍感なのやら。

「ひとたび物語になってしまえば、我が身に起きたことなぞ霧の彼方……まことのことかどうかもわからなくなってしまうのでございます」

そう煙に巻くようなことを言い出すまひろ。道長はすぐに写させるようにすると持って行くのでした。

表情からして、道長も流石に気づいていないとも思われます。この曖昧なまま続いていく関係が、なんともいえぬ雰囲気を醸し出しています。

『光る君へ』まひろ(紫式部)が道長の子を産む展開は史実から見てありなのか?
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嘘をつく時、真実を混ぜるとリアリティが増すとされます。創作もそうでしょう。

帝が夕顔の死に衝撃を受けていましたね。『源氏物語』の生き霊描写は、どこかリアリティがあり、因果関係がはっきりとしています。

葵の上に取り憑いた生き霊と化した六条御息所は、髪を洗っても、衣を着替えても、悪霊祓いに使われた護摩の香が体に染み付いて抜けない描写が出てきます。

この香により、生き霊の正体が示されました。

理詰めの細やかさがプロットを強化していて、信ぴょう性を増しているのです。

創作の中に生々しさを織り込む持ち味――それをこのドラマでは、まひろの人生経験と創作技術に結びつけているわけです。

 

書くことで思いを永遠に残す

同年10月(1007年)、敦道親王が27歳で世を去りました。

あかね(和泉式部)の思い人でした。

あかねは、敦道親王の前に愛した為尊(ためたか)親王も早くに亡くしています。

「自分がお慕した方は皆私を置いて旅立ってしまう、まるで私がお命を奪っているようだ」

そう嘆く彼女に対し、まひろは慰めます。

「二人の親王様はあかねとの日々を愛おしく思っていたでしょう」

もう触れられないなんて……と嘆きながら、あかねが歌を詠みます。

ものをのみ
乱れてぞ思ふ
たれにかは
今はなげかん
むばたまの筋

もの思いに耽り、心も千々に乱れ髪を櫛けずることすら忘れてしまった。この嘆きを誰に聞いて貰えばよいのだろう。

どんなにあの世から見守ってくださろうと、二度と顔を見ることもできないなんて、と嘆きに沈んでいるあかね。

心を開いて親王と歌を詠みあったと思い出しています。

本作のキーワードである「心を開いて」がここでも登場していますね。

そんな彼女にまひろは提案します。親王との日々を書き残してはどうか?

かつて書くことで、己の悲しみを救ったと語る女性がいた――ドラマでの藤原寧子藤原道綱母)のことでしょう。

まひろは、書くことで親王様との日々が後々まで残るのだと説明します。

このドラマは、まひろが生きた年代が重なる女性文学者たちに、執筆を勧める役割を果たしています。

ここまで誰かに執筆を勧めるとなると、人物というより女性文学者という概念を擬人化したようにも見えてくる。

今後、何人の女性たちを動かすのか。

 

惟規、禁忌を犯す恋をする

夜、藤原惟規が誰かに追われながら走っています。

犬の鳴き声も聞こえており、一歩間違えれば死にかねない。そんな平安京を駆け抜けている。

惟規がそうまでしてたどり着いたのはなんと「斎院」でした。

未婚の内親王が神事を行う聖域であり、ここにいる中将の君という女性が惟規の思い人でした。よりにもよって、そんな危険な場所の美女を相手にするんですか!

そして抱き合う二人。惟規はあえなく追っ手に捕まってしまいます。

まひろは藤壺に遊びにきた弟からこの一件のことを聞き、頭を抱えています。

「禁忌を犯すからこそ、燃え立つんでしょ」

「なんてこと……」

しれっと言い放つ弟に絶句するしかない姉。惟規はおかしそうにこう続けます。

「姉上だって、そうだったもんね」

「私は禁忌を犯してなんかいません」

「身分の壁を越えようとしたくせに」

「そんな昔のこと、もう忘れたわ」

「昔のことなのかな〜」

なんなんでしょう、この姉と弟のやりとりは。惟規は姉と道長の関係を知った上でチクチク突いてきます。

浮かれるなと弟を嗜めつつ、どうやって解き放たれたのかと聞いてくるまひろ。

なんでも咄嗟に歌を詠んだとか。

神垣は
木の丸殿に
あらねども
名のりをせねば
人とがめけり

斎院の神垣は、あの「木の丸殿」ではないけれども、私が名乗らなかったせいで、人に咎められてしまったな。

これを見た斎院の選子内親王(のぶこないしんのう)が「なかなかセンスが良い歌だ」ということで釈放されたとか。

まひろは「そんなにいい歌でもない」と返しますが、一体どういうことなのか。

後の天智天皇は、斉明天皇崩御の際、木の丸御殿で喪に服しました。ここは入る時に名乗らねばならなかった。

木の丸殿ではないけれど、どうやら名乗らなければならかったのか。

そうひっかけて詠んだのです。

惟規は天智天皇を引いたから内親王の心を掴んだのだろうと得意がっています。『今昔物語』にもこの逸話は収録されています。

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姉上の弟ゆえ歌が上手いと得意げな惟規に、もう斎院には近づかぬようまひろは釘を刺します。

そうはいかない、俺を待っているおなごがいると惟規。

まひろは「罰があたってあなたも相手も早死にする」というと、「仕事に戻る」と誤魔化そうとする惟規。父上を心配させるなと念押しし、ため息をつくまひろでした。

それでもここで創作のヒントを得たのでしょうか。

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