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【ズールー族のインピとシャカ伝説】
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母が亡くなり恐怖政治は頂点へ
伝説的に強く、敵にとっては悪魔のようなシャカ。
そんな彼には異様で残虐な面もありました。部下の性交渉に対して、常軌を逸した干渉を行うのです。
ズールー族の戦士たちは、現役を引退する40才まで結婚禁止、さらに婚外交渉も厳禁でした。
シャカの軍隊には少女たちが非戦闘員として随行しており、もし彼女らが妊娠したら、相手と共にまとめて殺害されました。
さらに不可解なのは、シャカが自分の妻まで妊娠したら殺害していた、という点です。
シャカの恐怖政治が最高潮に達したのは、母ナンディが1827年に死去した際でした。
服喪のため、シャカは部族全員に農作物を植えることや、牛の乳搾り、性行為を禁止しました。
服喪期間中に妊娠した女性は既婚者であっても、シャカの親衛隊によって腹の子の父親ともども殺害されたのです。
真面目に服喪してない。それが理由です。
結果、殺された人は、7千人とも9千人とも……。
こんなことを繰り返していたら、当然ながら殺意を覚える人も出てくるわけで。
恐怖の服喪の翌年、親衛隊が出払っている隙をついて、シャカは異母弟と護衛によって暗殺されてしまうのです。
犠牲者は100万人とも200万人とも
シャカが殺されると、その近くに居た人は暗殺者と見なされることを恐れ、皆逃げ出してしまいました。
シャカの遺骸をハイエナから守ろうと残ったのは、妻一人だけ。その遺体は、穀物貯蔵用の穴に投げ込まれ、上から泥と石を詰められました。
ゆえに、これほど偉大な指導者であったにも関わらず、埋葬場所すらハッキリとしていません。
シャカの建国したズールー王国は、彼を殺した異母弟らが継承しました。
しかし、それからおよそ半世紀後、イギリスとのズールー戦争の敗北によって滅亡します。
緒戦・イサンドルワナの戦いでは勝利を得たズールー族でしたが、その後、本国から増援部隊を送られたイギリス軍にはさすがに勝てなかったのです。
当時の人々には激しく嫌われたシャカも、現在では南アフリカ共和国の伝説的な英雄として親しまれ、ダーバンには彼の名を冠した「キング・シャカ国際空港」、「ウシャカマリンワールド水族館」があります。
また、日本でも人気のあるゲーム『シヴィライゼーション』シリーズに指導者として登場し、その戦闘的な態度と、特殊ユニット「インピ」の攻撃力によって恐れられています。
そんなカリスマ指導者シャカですが、前述した「ムフェチャネ」の影響は甚大でした。
シャカの侵略によって亡くなった犠牲者は、100万人とも200万人とも。移動距離や影響力を考えれば、大げさとは言えない数字かもしれません。
注目したいのは、シャカの出身部族には文字や文書がなかったということです。
彼の恐怖政治も、犠牲者数も、基本的にその宮廷を訪れたヨーロッパ人や、現地部族の噂話がベースとなっています。
そのため、南アフリカでは「シャカの悪行や犠牲者数は誇張されている」という意見もあります。
儀式的な戦争を一変させ、近代的な軍制を導入したシャカ。
その彗星のような出現ぶりは、まさしく歴史は一人の指導者によって激変することを証明しています。
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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
【参考文献】
マシュー ホワイト/住友進『殺戮の世界史: 人類が犯した100の大罪』(→amazon)