アシニボイン族の男性/wikipediaより引用

アメリカ

コロンブス・デーから「先住民の日」へ 侵略者たちは何千万人を殺したのか?

本日10月12日は、アメリカの祝日「コロンブス・デー」です。

1492年10月12日にコロンブスがアメリカ大陸を発見した日だから祝おうという祝日で、米国では毎年10月の第二月曜日に行われています。

しかしこれには疑義が噴出して、議論になっているのをご存知でしょうか。

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2017年、アメリカ第二の都市ロサンゼルスでも、ついにこの日は「先住民の日」となりました。

この年は南軍の英雄銅像撤去で揉めた年として歴史と記憶に残ることでしょう。

銅像事件にせよ、祝日の変更にせよ、アメリカが歴史的な事件の意義に向き合っている証拠とも言えそうです。

「いくら何でも変更しなくてもいいんじゃない?」

そういう意見もあるでしょうが、ここは冷静に一体コロンブスたちは何をしたのか、考えてみたいと思います。

 


大陸発見、それは地獄の始まりだった

結局コロンブスの乗ってきた船は何という名前だったのか?

そもそも第一発見者なのか?

そういう話はもはやいろいろあってわからなくなっている、というのはその通りです。

ただ、確かな点はあります。

彼らが原住民にとっては恐ろしい殺人者であり、略奪者であったということ。

鈍器のような石斧や弓矢しかない原住民にとって、鋼鉄の剣とマスケット銃で武装した彼らは恐怖そのものでした。

マスケット銃の命中率は悪く、威力はさほどではありませんでした。

しかし、雷鳴のような音を立てたと思った刹那に人が負傷して倒れるという銃の性能は、それを持たない者にとっては悪魔のような武器であります。

長い航海を経て、原住民の元にたどり着いた欧州人たちがどう考えてふるまったか?

何ヶ月も男だけの船で過ごしてきて、裸同然の原住民女性を見てどうなったか?

想像に難くないことでしょう。

冒険を求めて旅にでた。

たどりついた先には女性、貴金属、簡単に奴隷にできる人々がいた。

彼らにとっての天国は、先住民にとって地獄でした。

 


真の脅威は病原菌 抵抗なき人たちは次々と……

しかし実のところ、剣も銃も決定的な人口減をもたらしたわけではありません。

アメリカ大陸に持ち込まれたもので原住民にとってもっとも危険であったもの。

それは目に見えない病原菌でした。

・天然痘
・はしか
・かぜ

アメリカ大陸の人々はヨーロッパから持ち込まれた細菌に抵抗がありませんでした。

病は集落を襲い、全滅させるほどの猛威をふるいます。

天然痘患者が使っていた毛布をイギリス人がわざと原住民に渡した、という逸話もあります。

確かにそういう記述が手紙に残されているそうです。

ただし、既に毛布を使った天然痘患者がいたという時点で、原住民は遅かれ早かれ感染したことでしょう。

毛布がそれを早めたであろうことは言うまでもなく、この行為自体は邪悪なものではありますが。

バタバタと斃れ死んでゆく原住民を見て、ヨーロッパ人は納得しました。

「彼らが倒れる病に、我々は抵抗できている。つまり我々は彼らより上位の存在だ」

「これはきっと神の意志である。野蛮な先住民が死に絶えたあと、我々がここを支配しろということだ」

「この地を支配する権利は、神によって与えられたものである」

なんと野蛮な神様もあったものだと嫌味のひとつも言いたくなるのは、私が現代人だからでしょう。

黒人奴隷には同情を示したリンカーン大統領すら、原住民には極めて酷薄な態度を取っています。

そうした背景には「劣る原住民を支配することは神によって証明された権利だから」という考えもあったのでしょう。

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犠牲者は最小で200万人 最大で1億人!?

はたして、アメリカ大陸の原住民は、一体何人が犠牲になったのでしょうか?

諸説あわせると最小200万人、最大1億人とされているそうです。

数字の幅が広すぎるがため「信憑性ないじゃん」というのもまた違います。

この算出が、なかなか難しいのです。

というのも、ヨーロッパ人が来る前に一体人口がどれほどであったか。

それが把握しづらいからで、おおよそ4000万人程度、というのが現在最も支持される数値です。

これが減少し続け、500万人で底を打ちました。

つまりはマイナス3500万人。

仮に元の人口が1000万人だったら500万人、1億人だったら9500万人の減少ですね。

いずれにせよ途方もない数の死者が出たのは間違いないでしょう。

「原住民が死に絶えると言うことは、神がこの土地を支配する権利を与えたのだ」

という当時の欧州人の考え方。どう見たって許されたものじゃありません。

ゆえに「コロンブス・デー」の変更は妥当ではないか。個人的にはそう思います。


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文:小檜山青

【参考文献】

『殺戮の世界史: 人類が犯した100の大罪』(→amazon

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