そんな言葉がある一方、世の中には実態とかけ離れたものがたくさんあります。
本当はゴリゴリの独裁国家なのに、“民主ナンチャラ”とか“人民ナンチャラ”など聞こえの良い国名にしてしまうとか、そういうパターン。
かような例の中でも、世界史的にぶっちぎって「名と実」のかけ離れた国がこちらでしょう。
「コンゴ自由国」
字面からすると一見平和な民主国家にも見えますが、実態は“切断された手足だらけ”という、恐るべき凶行が繰り広げられていました。
命令を下していたのはベルギー国王のレオポルド2世であり、1909年12月17日はその命日。
いったい何のために、そのような非道を行っていたのか。
レオポルド2世の所業を振り返ってみましょう。
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スタンリーのアフリカ探険が始まりだった
時は19世紀――ヨーロッパは探険ブームに沸いていました。
未踏の地(といってもあくまでヨーロッパ人にとってですが)を旅して、見聞を広め、あわよくば植民地なり交易品なりを獲得できればラッキー、というわけです。
1841年、ウェールズ出身のヘンリー・モートン・スタンリーもそうした野心を抱いた探検家の一人でした。
貧しい家庭に生まれ、一時期は救貧院で過ごしたこともある苦労人です。
文才と好奇心を生かしてジャーナリスト、そして探検家となったスタンリーは、1870年アフリカ奥地で消息をたっていたデイビッド・リビングストン博士捜索隊に参加し、見事発見に成功しました。
一役、時の人となったスタンリーは、さらに野心を燃やします。
アフリカ大陸こそ、俺の栄光の土地なんだ、というわけですね。
探検で留守にしたせいで、婚約者が別の男と結婚してしまったという、悲しいニュースも彼の野心をさらにあおったのかもしれません。
スタンリーはザイール川流域を探険し、その紀行文を発表。
彼は、このザイール川流域・コンゴ盆地を探険し大興奮でした。
「資源と可能性を秘めた広大な土地だ! ここを我が祖国イギリスの植民地にすればいいじゃないか!」
「植民地も場所を選ぶ時代なのよ」
しかし、待っていたのは祖国の無情でそっけない対応でした。
「コンゴねぇ……。あのね、スタンリーさん、アフリカ黄金時代なんてもうとっくに終わっているんですよ。しかも大陸ど真ん中、一年中暑いじゃあないですか。植民地に向いているのは海沿いで気候が温暖なところなんですよ」
植民地というのはともかく取ればいい――そんな時代は終わっておりました。
維持管理して確実に黒字が出るようにしなければならない。
なかなかシビアなもので、イギリス政府は、気候が比較的温暖な南アフリカや、到達が楽な海岸部に興味が集中していたのです。
それがアフリカのど真ん中だなんて……。探険する以外、用はない!
と、少し砕けた言い方にしすぎましたが、他国も含めたヨーロッパでは「アフリカは別にいいや」という態度でした。
スタンリーはイギリス政府の冷たい反応に納得がいかず、新聞に社説を発表する等、コンゴ獲得キャンペーンを行います。
しかしイギリスの中産階級を中心とした人々は「維持するのに赤字になるような土地取って、どーすんねん」と冷たい反応ばかり。
うぐぐ……と悔しがるスタンリー。どうにかしてコンゴに関心を向けるため、だんだんと言うことも大げさになってきます。
と、そこへ興味を示すある人物が現れます。
「アフリカのど真ん中に植民地? いいねえ、ビッグなドリームだねえ」
ベルギー国王レオポルド二世。
コンゴの悪夢は、この二人の出会いから始まりました……。
植民地がどうしても欲しい!
当時、ベルギー王国というのは、ヨーロッパ諸国の中でも新参者でした。
レオポルド二世は産まれながらの王族ではなく、5歳の時に父が即位して王子になったという経歴の持ち主。
そんなベルギーに植民地があるわけでもありません。
虚栄心の強いレオポルド二世は、喉から手が出るほど植民地が欲しくて欲しくてたまりませんでした。
「ああ〜どっかに植民地ないかな~。植民地さえあればちっぽけな国とか言われてコケにされないだろうにな~。小さな国なんてないんだ、小さな心があるだけさ!」
まぁ、小さな国なんてない、っていう心意気だけはあっぱれですね。
レオポルド二世は「どこかの国が植民地売ってくれないかな~」と妄想にふけるようなことを吹聴しますが、他国はむろんのこと、議会も相手にしません。
そこでこのレオポルド二世が、スタンリーの「やたらと話の盛られたコンゴ」についての著作を読んでしまうわけです。
「そうだ、アフリカに植民地を持とう!」
レオポルド二世は「貧しい黒人に白人が文明の光を示そう! 今こそ考えたいアフリカの未来」みたいな、そんな美辞麗句で飾り立てた国際会議や国際協会を作り、前向きな姿勢を見せます。
周囲は「またあの国王が何か変なことやってる」と冷淡な姿勢を見せていたのですが……。
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