1789年7月14日、王制にプッツンした民衆がバスティーユ監獄を襲撃し、フランス革命が始まった――というのが教科書および一般的な認識ですよね。
それも誤りではありませんが、実はほぼ同時に別の場所が襲撃を受けていました。
廃兵院(オテル・デ・ザンヴァリッド)です。
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廃兵院なら簡単に武器とか奪えんじゃね?
廃兵院とは、今も昔も“傷病兵”が暮らす施設のことです。
軍の関連施設ですから、当然、武器弾薬の類がある。しかも使い手は手負いか老人ばかり。
となると、襲った民衆側も「傷病兵相手なら丸腰でも勝てる」とでも思ったんですかね。ひでえ。
実際、このとき3万丁もの銃を奪ったといいますから、数の暴力以外の何物でもありません。
そして武器を手に入れた民衆はいよいよ本命・バスティーユを襲います。
既に来ていた民衆もいたので、彼らからすれば武器を揃えた援軍が来たことになります。士気が上がるのも当然ですね。
なぜバスティーユ監獄だったのか?
というと、ここには王制下で「政治犯」とされた人たちが収容されていたからです。
つまり、王制に反対する民衆にとっては「友軍の救出」みたいな感覚なわけで。これも士気を上げるポイントになったことでしょう。
もちろん、ここでも弾薬の略奪をしています。
最終的に革命が成功したから【民衆=正義】のように扱われているだけで、この後の展開を含めるとエゲツないんですよね。
フランス革命は集団ヒステリー?
そもそもなぜこれらの襲撃事件や、革命が起こったのか?というと、ルイ14世時代からの王室が散財に散財を重ねていたからでした。
ベルサイユ宮殿の造営を含めた単純なぜいたくだけでなく、何度も大きな戦争をしていたことによります。
戦争に勝てば、賠償金なり新たな植民地なり、特権なりを得られて財政改善できたかもしれませんが……この時期のフランスは負けっぱなし。
それでいて奢侈を改めようとせず、資産家からの借金を重ね続けたのですから、2代後のルイ16世の代にとんでもないことになったのは至極当然のこと。
さらに、ルイ16世の性格もこのような情勢に向いていなかったことが悲劇でした。
彼に関しては近年再評価の動きもありますが、優しすぎるがゆえに「優柔不断」という側面もあった人だったのです。
民衆から強く出られると民衆の意見を聞いてしまい、それでいて聖職者や貴族から真逆に強く出られると、またそちらの言うことを聞いてしまう……。
それが強く現れているのが、財務総監ネッケルの就任と退任です。
彼はブルジョワ層の出身で、民衆から人気を得てこの職に推されたのでした。
しかしネッケルが王室財政の引き締めを提案すると、王も特権階級も大反対。
強引に増税を推し進めようとしました。
「お金が無いなら税金を増やせばいいじゃない」というわけですね。
国王は特権階級への課税を主張しましたが、当然、特権階級が反発します。
すると、既にマリー・アントワネットの散財ぶりも広く知れ渡っていたため、
「なんであの女のぜいたくのために、俺たちが税金を増やされなければならないんだ!?」
と、王室を憎む人々が増えていきました。
【全国三部会】
聖職者や貴族たちも一枚岩ではありませんでした。
日本や他の国でもよくある話ですが、同じ聖職者や貴族でも、家によって代々の特権がある家とない家があります。
その”ない家”の人々は、当時広まりつつあった啓蒙思想への傾倒とともに、「民衆と合流して新たな政治体制を作ったほうが、自分たちのためにもなる」と考えるようになりました。
この”ない家”の人々が中心となって「どうしても増税したいのなら、国民全ての層から了解を取り付けるべきです!」と主張。
そこで開かれたのが【全国三部会】です。
フランス革命のキッカケとなった出来事として知られますね。
その会期中に王太子ルイ・ジョゼフが病死し、王室がその葬儀費用すら出せないという悲劇的、かつ財政難ぶりが露骨に現れるという出来事がありました。
おそらくルイ16世やマリーはこの惨状に対し「なんとしてでも増税しなければ」という気持ちが強まったのではないかと思われます。
彼らからすれば、こんな思いもあったことでしょう。
「もっと早く増税が決まっていれば、息子にこんな惨めな思いをさせずに済んだのに」
「あいつらが増税に反対したせいでこんなことになった!」
民衆の中にはその日食べるものや寝床に困る人も珍しくなく、看護して貰えただけ王太子はずいぶんとマシだったのです…。
まあ、彼らは外出する割に馬車の外を見ようとしないので、ガチでそう思ってたんでしょうね。
そんなわけで、王とその側近たちは「物理的に第三身分の議員を追い出して、議論に参加させない」という方法で増税を決定しようとします。
当然これは第三身分の反感と結束をより高め、革命の機運が高まっていったのでした。
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