先週は崖っぷち、今週は危機一髪と、毎回ベリーハードモードが発動しそうなサブタイトルです。
おとわの運命やいかに?
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おとわの強硬手段に義元激怒 駿府へ来いとの命令が
鶴丸との縁談を断りたいおとわ(井伊直虎)は、剃髪という強硬手段を取ります(しかも血まみれ)。ウィッグではなく、本当に剃ったそうです。
おとわの行動に周囲は呆れ、振り回されます。
これには今川義元も激怒。忠義の証として、おとわを人質として駿府に送るようにと書状が届きます。
井伊直平は激怒して戦うしかないと主張。
昨年の矢沢頼綱に続き、一族長老が年を経て丸くなるどころか一番血気盛んなパターンのようです。むしろ何故彼がここまで長生きできたのか不思議なほどです。
井伊直盛が「ご隠居様はご乱心だ」とつぶやくと、直平は怒ります。
ここで直盛も感情的に反論。どこの親が娘を人質に出したいものか、しかし断れば今川家に潰されてしまうと訴えます。絶対に味わいたくない板挟みです。
直平はなおも激昂し「お前は、とわが佐名のような目にあってもいいと思うのか!」と言います。
直平の娘で直盛の叔母にあたる佐名はどんな目にあったというのでしょうか。直盛は言葉を失います。
ここで猫を抱き酒器を手にした南渓和尚(南渓和尚)が登場。井戸の横で座り込むとわを見つけます。
とわは泣き叫び、南渓に相談します。
「こんなことになったのは和尚様のせいだ! 和尚様が答えは一つではないから……」
しかし、和尚に「答えが粗末だったからではないか?」と言われ、気丈なおとわもすっかり参ってしまい泣き叫びます。こんなかわいいおとわちゃんを泣かせるな! 今川許せん……と心に響くものがありますね。
南渓はここで、いっそ今川にとわの出家を認めさせたらどうかと切りだします。
今川は井伊が勝手に行動することに怒っていて、とわの出家の意味がわかっていないのではないか、というのです。
とわが出家したら彼女は婿を迎えられないので、次の当主はとわの夫以外の誰かになります。
その当主を今川から送り込むことができるわけで、むしろ今川にとっては好都合なのです。そう言えば出家を認めるのでは?というわけです。
そうしておいて、ほとぼりが醒めたらとわを還俗させるわけです。
出家させることで人質を逃れ、今川の怒りも解ける一石二鳥の策。
なるほど、なかなかこの和尚もただの猫好き酒好き担当ではありません。
美人娘・瀬名は龍王丸の妻の座狙うも不幸の翳が漂い
南渓は駿府で太原雪斎に会うことになったととわに告げます。
とわは駿府にいる叔母・佐名はどんな人かと問いかけます。彼女は南渓の妹にあたりますが、井伊の人は誰も語りたがらないそうです。南渓は苦い顔をしております。
南渓のあとを追い、とわは駿府(現在の静岡県静岡市)へ出立。すぐに戻ることになるだろう、と楽観的なとわです。
その頃、何者かが鶴丸を捕らえていました。
鶴丸誘拐の知らせが直盛の元に届きます。犯人は……直平。って、ご隠居一体何やっているんですか!
直盛は険しい顔で直平に会うため出立します。
とわは賑やか、華やかな駿府の街並みを見て、歓声を上げます。
昨年の安土や大坂ほど栄えてはおありませんが、井伊谷よりはるかに発展しています。
瓦葺きの屋根、賑やかな店、すっかり大都会ですね。とわは人質であることも忘れてはしゃぎ回ります。
今川の屋敷に案内されたとわはの元に、鞠が転がってきます。持ち主は着飾った少女でした。こわばった顔の少女ですが、とわが坊主頭を見せると打ち解けて笑います。
少女の名は瀬名。それにしてもこの子役の丹羽せいらさん、奈々緖さんにそっくりで驚きます。
瀬名(後の築山殿・徳川家康の妻)は、義元の息子・龍王丸(後の今川氏真)の妻になるため、彼の趣味である蹴鞠の練習に励んでいるそうです。
うーん、この子……史実を抜きにしてもこの時点で不幸フラグが立ちすぎていて、辛くなってきました。
あとでこの初登場を思い出してきっと泣いてしまうんだろうなあ。誰にでもこういう夢を語っちゃう子って危ういんだよなあ。
瀬名の母も美人ながら圧倒的薄幸オーラ!
瀬名の母である佐名がここで登場します。
な、なんという圧倒的な薄幸オーラ!
佐名は哀しげな顔でとわを見つめ、去ってゆきます。
とわが庭を見ると、育ちのよさそうな貴公子が蹴鞠をしています。とわは叔母の佐名は何故ああなのか乳母のたけに尋ねます。
たけは暗い顔で、佐名は太守様=義元のお手つきになったのだと説明します。当然のことながらとわには意味がわかりません。
たけの苦悩をよそに、おとわは「お手つきってつかまえたってされること?」と混乱しております。たけはさらに「飽きたら雑巾のように捨てられたのです……」と続けますが(雑巾は流石に酷いのでは)、とわは理解できません。
ここのずれまくった「たけ&とわの会話」はギャグポイントかもしれません。ある意味昨年以上に今年の笑いのポイントは独特ではないかという気がしました。
ここで直平が怒り、直盛が苦い顔をしていた理由が判明。娘を飽きたらポイ捨てされたら、そりゃ父親なら激怒しますよ!!
一方で南渓は雪斎と会談中です。見るからに雪斎は身分が高いことがわかります。南渓も改まった格好です。
この智恵者に、南渓は弁舌でかなうのでしょうか。
僧侶同士の頭脳バトルも今後見られるのでしょうか。
ここで南渓がとわと再会。
とわは南渓から書状を預かり佐名に渡すよう頼みます。ここで寿桂尼の名が登場。書状の中身は寿桂尼へ取りなしを頼むもののようです。
とわは佐名の元を訪れます。こうして主人公におつかいをさせることでメインプロットに絡ませるのは昨年と同じ手法です。
佐名は書状を読むとわなわなと震え「よくもこのようなことを頼めたものじゃ! 生臭(=南渓)に恥をしれと申し伝えよ!」と激怒します。
南渓は、心が揺れていることだろう、そういう性分だ、と動じません。
が、その策はことごとく失敗しています。
雰囲気はあっても、彼も井伊一族。昨年の真田と比べるとそこまで知恵が回るわけでもありませんでした……。
ラスボス・寿桂尼さんの登場! 優雅なれど何か恐ろしい
直平の元に向かった直盛。案の定、鶴丸が人質とされています。
鶴丸は「人質にするなら弟も捕らえるべき、自分一人だけなら父は見捨てるだけだ」と落ち着いた口調で言います。
直平は笑顔で頷き、出かけようとして直盛に止められます。直平、もしや子供以下の智謀……?
こうしてとわが人質になる朝となります。
南渓は義元に直訴するため、あとをついて来ました。
ここで出迎えたのは小野政直。南渓は門前払いされます。そしてここでも言い返せずそのまま見送るしかない南渓。
昨年が『信長の野望』智謀パラメータ平均80マックスカンスト直前の真田一族なら、今年はせいぜい30から50台の井伊一族ということなのでしょう。
そしてラスボス感漂う寿桂尼がついに登場!
雪斎に続き、井伊一族が束になってもかなわない智謀の持ち主が出てきました。
政直の元に、鶴丸誘拐の報が入ります。政直は本当に我が子を見捨てるのでしょうか。鶴丸誘拐の件が義元に知られたら、事態は悪化することでしょう。
義元は能の稽古中で政直は面会できず、雪斎と話し合うことになります。
とわはついに寿桂尼と対面します。頭巾が淡いピンク色で着ているものも上品です。
今年は女性の出家姿が長期間描かれることになるので、こうした衣装にもおそらくこだわりがあるでしょう。
出家の身ながらファッションリーダーとしての地位も保ち続ける、それが寿桂尼なのでしょう。
すごく優雅で、綺麗でもあります。が、やっぱり何かが恐ろしい人です。
同じ京都の貴族出身でも寿桂尼と昨年の真田昌幸正室・薫では身分の差がかなりあります。
こう書くと薫さんには大変失礼ですが、寿桂尼からは「姫君の中の姫君」という尊いオーラがにじみ出ています。
今にして思えば薫さんは庶民的でした。
今川家といえば蹴鞠、蹴鞠といえば今川家
寿桂尼は待ち時間に蹴鞠でも見るかと誘います。
今川家といえば蹴鞠、蹴鞠といえば今川家くらいのイメージがあります。
蹴鞠を見守る子供の中には瀬名の姿も。瀬名はいつも蹴鞠を見守り、勝てば龍王丸の妻にしてもらうと頼みこんでいる様子です。
瀬名ちゃん……何かすごく駄目な子というか、不幸になるしかない人生を驀進している気がするのですがどうしたものでしょう。
寿桂尼から龍王丸に勝てば褒美をもらえると聞いたとわは何かを考えているようで、いきなり龍王丸に挑みます。
「誰じゃこいつは」と当惑を隠せない龍王丸。見ているこちらも当惑しています。
なんだか少年漫画のような展開になりますが、とわは案の定負けます。
そしてその弾みで頭巾が取れて、じゃりじゃりの剃髪姿があらわに。皆がたまらず笑い出します。めげずに再戦を挑むとわ。って、スポ根展開かい!
そこへ雪斎と小野政直もやって来ます。
とわはめげずに挑みますが、またも失敗。何度も何度も挑み続けるとわ。本当にこれはスポ根展開ではないですか。
大河としてありなのかと突っ込みたいのですが、顔をあからめて蹴鞠を続けるとわがかわいいのでなんだかこれもありかと思えてきました。
幾度もしつこく勝負を挑み、ついに勝利!
とわはすかさず褒美が欲しいとすがりつきますが、龍王丸は「あつかましいにもほどがある!」と突き放します。
それはそうでしょう。とわはスタミナ勝負に持ち込んだようなものですから。ここでとわは怒りのあまりラフプレイ、タックルで龍王丸を倒します。
見かねた政直が止めに入ります。
そしてこのタイミングで義元が登場。とわはまったく空気を読まず褒美を要求します。
義元は直接話さず、扇でお付きの者に「何が所望だ」と言わせます。とわは井伊に戻して欲しいと訴えます。
ここで雪斎が「よい戦いをした者には褒美を取らせるのが武門のならい。褒美を取らせるべきです」と進言。
寿桂尼も口添えします。なんとここで義元が去ってよいとの判断。
優しい、昨年と比べてなんて優しいんだ!(昨年は去らせると見せかけて刺客を放つイメージ)なんととわの出家と本領安堵が求められました。
まさかの蹴鞠ファンタジスタ展開に驚きを禁じ得ません。
今年の大河は珍味だ!! 今川様優しい!!
とはいえこれにはからくりがあり、鶴丸が人質に取られていること、井伊に恩を着せて三河攻めに働いてもらいたいという今川の思惑もありました。
そんな思惑を抜きにしても今川家はかなり優しいのではないでしょうか。
駿府からの去り際、南渓は寿桂尼に取りなしてくれた礼を佐名に告げます。佐名は二度と来て欲しくないと告げるのでした。
まさかの蹴鞠ファンタジスタでおとわは危機を脱しました。めでたしめでたし。
しかしとわが出家して隙を見て還俗なんてそんなことができるのか、南渓の策が通じるのか不安はあるのでした。
井伊家は最悪の事態は回避したように見えますが、借りを作っただけで何も解決していません。
MVP:南渓
雰囲気が凄そうなだけで、実は大して策がないとバレた南渓和尚。
このレベルを井伊家一族の知恵袋にしている時点で「大丈夫なの?」と視聴者をハラハラさせる役所でした。
当然、雪斎相手に歯も立ちません。
猫を抱いていないと本領発揮できないのかも。むしろ逆MVPかも。
総評
昨年や他の大河が「主人公一族にはこんなすごいカードが揃っているんだ」と見せ付けるのが序盤ならば、今年はむしろ「こんな弱いカードしか手元にないけどゲームしなきゃいけないんだよ」と見せて来ている印象。
あえて地方の小大名で始める『信長の野望』の縛りプレイのようなと言いますか。そこがむしろ今作のスリルなのかもしれません。
直平は暴走、直盛はおろおろ、南渓は見かけ倒し。そりゃ小野一族にしてやられるわ、というところ。
今川家も本気を出せばいつでも潰せるけれども、それより飼い慣らして使おうという気持ちがあるからこそ、井伊家は存続しているわけです。昨年とは違うスリルがあります。
ミラクルな子供が暴れ回ったら何となく決着というありがちな展開にも、裏があるわけでして。
とわの機転というよりも大人の事情で何とかなっただけとネタばらししているのはよいと思います。そんなにうまくいくわけない、という不満も回収します。
そして今週は、憂いを帯びた佐名が今週の「苦い現実」パートでした。「お手つき」の会話は独特のギャグセンスを感じました。好みは分かれるところでしょう。
今週はのちの今川氏真である龍王丸、のちの築山殿である瀬名が登場した回でもありました。
瀬名の暴走ぶりはすさまじいです。
愛する人のためなら暴走するというのは昨年のきりと同じですが、こちらはバッドエンドが見えています。
彼女の場合、龍王丸の人柄が好きというよりも、シンデレラ願望ゆえの熱ではないでしょうか。
思い込みが激しく暴走する性格がどう空転するのか、今から楽しみです。
昨年よりスロースターターですが、今度が気になります。
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絵:霜月けい
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【参考】
おんな城主直虎感想あらすじ
NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』公式サイト(→link)