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信長公記 足利家

信長が義昭お説教【十七箇条意見書】の中身とは~超わかる信長公記87話

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今回から巻六――元亀四年(1573年)以降の話に移ります。

元亀三年(1572年)、織田信長から足利義昭へ出した【十七ヶ条の意見書】に対し、義昭が反抗し、ついに兵を挙げたという衝撃的な始まりです。

武田信玄の西上
・今なお織田家に対抗する浅井・朝倉勢
本願寺勢(石山・長島・越前)

こうした周囲の状況を踏まえ、義昭は「反旗のチャンス!」と感じたのでしょう。

 

微に入り細を穿つ十七ヶ条の意見書

十七ヶ条の意見書については、あまりにも細かく書かれていて長いので、ここでは各項目の内容を簡潔にマトメさせていただきます。

ただ、なんというか……面白いです。
信長さんって、結構、細かいんだな、というか気配りができていることがわかるんです。

決して魔王なイメージではなく、官僚的思考もできるキレ者と申しましょうか。
まずは見ていきましょう。

1. 貴方の兄君(十三代将軍・足利義輝)は宮中への参内を怠っていたために、あのような悲惨な最期永禄の変)になってしまいました。
だからこそ上様には参内を欠かさずなさるよう申し上げていたのに、なぜなさらないのですか?

永禄の変って実は戦国インパクト大!三好三人衆に襲われ、剣豪将軍、刀で応戦

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2. 必要なものは信長が用立てると申し上げていたのに、諸国へ手紙を書き、馬やいろいろなものをこっそり献上させているのはどういうわけですか?

3. 前々からよく働いている者には恩賞を与えず、新参の気に入った者にばかり与えているそうですが、それでは忠節を尽くす者がいなくなってしまいますよ。

4. 信長が上様の邸を普請しましたのに、大切な宝物の類を他に移していらっしゃるとか。何のためですか?
そのせいで「将軍と信長の仲が悪いのだ」という噂が立っています

5. 賀茂神社の領地を一部取り上げて、岩成友通に与えたそうですね。
友通は所領が少なくて困っていると聞いていたので、私がどこかから用立てようと思っていましたのに、寺社の土地を取り上げてまであてがうのはよろしくありません。

いかがでしょう?
もし、自分が言われていたら、苦しくて逃げ出したくなりませんか?

 

まるで中学生のような態度と金遣い

ましてや義昭さんは将軍ですので、それはもう腹が立って仕方がなかったことでしょう。

しかし、おかしな行動さえしなければ、信長に保護されていたとも言えます。
続きを見てみましょう。

6. 信長に縁のある者となると、身分の低い侍女にまで冷たくされているとか。
なぜそんなことをなさるのですか?

中学生かっ!

7. 上様がきちんと働いている者に給料を与えないので、彼らは生活に困り、私のところに泣きついてきています。
私からもお願いしましたのに、なぜいつまでもお与えにならないのでしょうか?

どケチかっ!

8. 若狭の代官について起こされた訴訟の件、私からもいろいろと進言させていただきましたが、未だに決済されていませんね。

ごまかす気かっ!

9. 先日小泉某が喧嘩で亡くなりましたが、彼が妻の実家に預けておいた物や、質入れしていたものを上様が没収なさるのはおかしなことです。
彼は謀反を企んでいたわけではないのですから、法に従って処理してください。
でないと、世間の皆に「公方様は欲深く、部下の財産まで取り上げるような方だ」と思われてしまいますよ。

やっぱりどケチかっ!

10. 元亀の年号になってから良くないことが多いので、幕府から改元の費用を捻出するべきだと、以前申し上げました。
宮中からもご催促が来ているのに、未だに費用を出されていませんね。このことは天下皆のためなのですから、怠るのはよくありませんよ。

またカネの問題かっ! ドコで無駄遣いしとんねん?

信長公記は信長を礼賛する書物のため、信長の言い分だけを全肯定するのはいささか危険があります。

しかし、ここまで列挙されると
『義昭さんて、お金にだらしないのね……』
という印象は否定できないでしょう。

続きを見てみましょう。

 

ついには光秀や延暦寺の名前まで出て

11. 烏丸光康を懲戒した件、賄賂を受け取って許してしまわれたそうですね。
過料として受け取るならばわかりますが、この件についてはあてはまりません。

キタ!やっぱりお金絡みです。

12. 諸国から金銀を受け取っているのに、貯め込んでばかりで宮中の御用にも使っていないようですが、何に使うおつもりなのでしょうか。

どんどん深堀りされてきましたよーーーーー!

13. 私から明智光秀に命じて、京都市中から取り立てておいた地子銭(税金)は、京都での買い物に使うようにと申し付けていたものです。
なぜ後から「その土地は延暦寺料だから」とおっしゃって、差し押さえになるのでしょうか。不当です。

ついには光秀や延暦寺の名前まで出てきてしまいました。
もうこうなると笑えてきますよね。

14. 昨年の夏、幕府に蓄えておいた兵糧米を売って、お金に変えてしまわれたと聞きました。自ら商売をする将軍なんて、今まで聞いたことがありません。
兵糧をしっかり蓄えている軍こそ、世間は頼もしく思うものですよ。

「自ら商売をする将軍」って、信長さんのツッコミセンスが冴え渡っておりますw

15. 若衆に扶持を与えるならば、その場で適切なものをお与えになるべきです。
後々からどこぞの代官や訴訟の肩入れをなさるのはよろしくありません。

幕府や戦国大名、つまり統治者の大切な仕事の一つに訴訟の処理がありますが、足利義昭さんは場当たり的な措置ばかりで、政務能力がゼロだった可能性がありますね。

16. 今幕府に仕えている武将たちは、兵法よりも金銀を蓄える方法に強く興味を持っているとか。上様が金銀に執着するからそうなるのですよ。

そしてカネの話。
もう泣けてきますね。

17.「今の将軍は欲深い、悪御所だ」と農民にまで言われていますよ。なぜそう言われるのか、ご自分の行いを顧みてください。

最後までお金がらみのことでした。

足利義昭/wikipediaより引用

※全文が気になる方は『現代語訳 信長公記 (新人物文庫)』(→amazon)をご参照ください。

 

武士を統べる将軍とはいえない

確かに細かいといえば細かいですし、これを受け取ったほうはうるさく感じることでしょう。
しかし、信長の意見書に書かれていることが事実ならば、義昭にかなりの問題があります。

17ヶ条を大まかにまとめると、義昭は

・やるべき仕事をやっていない
・上洛や将軍就任の最大の立役者である信長と、その関係者をないがしろにしている
・自分が気に入った者だけえこひいきする
・お金のことばかり考え、武芸や兵法をおろそかにしている

という振る舞いをしていたことになります。

これではとても武士を統べる将軍に適しているとはいえません。

信長としては、上洛以降、これまで義昭や幕府にかけてきた時間やお金、労働などなどを無駄にしたくないところ。
世間体も悪いですしね。

そのため、日常朝山・島田秀満・村井貞勝などを派遣して、将軍に人質と誓紙を出すことなどを提案しました。
しかし、これは義昭に拒否され、失敗に終わります。

義昭は味方を集めて今堅田(大津市)へ進み、石山(同)に砦を築かせて信長を阻もうとします。

この動きに信長も和解を諦め、柴田勝家・明智光秀・丹羽長秀蜂屋頼隆に撃退を命じました。
それでも、一応、義昭が交渉に応じやすいメンバーを選んだフシがあります。

勝家は織田家の筆頭家老、長秀もそれに続く立ち位置です。
蜂屋頼隆も信長の重臣として知られていた人物。
光秀は織田家では新参の部類ですが、義昭とはたびたび会っていましたし、信長に義昭を仲介したとされる人物でもあります。

全員、信長と将軍の間の連絡役としては、申し分ない立場といえるでしょう。

もしも義昭の気が変わった時、この四人のうちの誰かであれば、話をしやすかったのではないでしょうか。
残念ながら、そういう流れにはならなかったのですが……。

※以下に、四名人物伝の記事リンクを張っておきますので、よろしければ併せてご覧ください。

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【参考】
国史大辞典
『現代語訳 信長公記 (新人物文庫)』(→amazon link
『信長研究の最前線 (歴史新書y 49)』(→amazon link
『織田信長合戦全録―桶狭間から本能寺まで (中公新書)』(→amazon link
『信長と消えた家臣たち』(→amazon link
『織田信長家臣人名辞典』(→amazon link
『戦国武将合戦事典』(→amazon link

 



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