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【信長の茶器】
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【信長からのご褒美ver.茶器】
・丹羽長秀へ【珠光茶碗】

丹羽長秀/wikipediaより引用
・柴田勝家へ【乙御前釜・柴田井戸(茶碗)】

猛将として知られた柴田勝家/Wikipediaより引用
・織田信忠へ【初花肩衝・松花茶壷・竹子花入・藤波の釜・道三茶碗・珠徳茶杓】

織田信忠/wikipediaより引用
信忠だけ別格ですが、これほど数多くの名物を贈ったのは、家督を譲った後のことです。
「俺と同じように、何か手柄を立てたヤツにやれよ」という信長流の教育だったんでしょうかね。
また、長秀に与えた珠光茶碗を召し上げる代わりに、名刀・鉋切長光(かんなぎりながみつ)を与えるという割とめちゃくちゃなこともしています。
付き合いの長い長秀相手だからできた気がしますね。
これが光秀相手だったら……。
詳細がわからないのですが、豊臣秀吉にも中国攻略の褒美として、茶道具の名物十二個をあげたといわれています。太っ腹すぎ。
この他、実際にあげていないものとしては「蒲生氏郷が褒美に珠光小茄子という茶器を所望したら『もっと手柄を立てたらな^^』と言われた」という話が有名ですね。

蒲生氏郷/wikipediaより引用
ちなみに珠光小茄子は、本能寺の変で焼けてしまったといわれています。
氏郷涙目。
なお、信長が所望しながら、松永久秀が爆発自害と共に散逸したという【平蜘蛛の釜】は?
というと、そもそも久秀の自爆が現在では否定されております。
復元した――という見立てもあるようですが……一体どうなったんですかね。

2020年3月に高槻市の市立しろあと歴史館が発表した松永久秀の肖像画/wikipediaより引用
親しい側近と膝を突き合わせたかった?
信長は、茶道というより「茶席の平等」を愛していたのかもしれません。
信長は織田家の中では傍流とはいえ、れっきとした武家の家系の長男ですから、歳をとればとるほど家臣と気ままに話すこともできなくなります。
若き頃から近習とともに駆け回っていた信長にとって、信頼できる人間と側近くで話せなくなるというのは、不便としか思えなかったでしょう。

若き日の織田信長/絵・富永商太
しかし茶席ならば、親しい人や信頼できる人と膝を突き合わせて話すのも不自然ではありません。
茶器に領地同様の価値を持たせたことで、より説得力も増しました。
ということは、信長にとって茶を愛することは、公私共に一石二鳥・三鳥、あるいはそれ以上のメリットがあったのでしょう。
「安土城建築のときに岐阜城と家督を織田信忠に譲ってしまい、お気に入りの茶器だけを持って出て行った」というのはやり過ぎな気もします。
この話も有名ですので「どんだけその茶器好きなんだよwww」と思った人も多いのではないでしょうか。
ただ、このとき持って行った茶器の名前などは記録がないんですよね。
ということは「部下に褒美として与える茶器」と、「日常的に自分で使う茶器」の間にははっきり区別をしていたのでしょうか。
緑茶のカテキンはストレス解消に効いた?
「緑茶には殺菌成分であるカテキンが含まれている」というのは有名です。
最近の研究では「ストレス解消や高血圧にも効果がある」ということもわかってきています。
カフェインによって一時的に血圧が上がっても、カテキンが血圧を下げるのだそうで。
「晩年の信長は高血圧だっただろう」というのも定説ですので、もしかすると本能的に心身の緊張緩和を求めて、緑茶を好んだのかもしれません。

織田信長/wikipediaより引用
信長ほどの人物でもストレス解消に手を焼いたのなら、現代の多くの人がストレスで心身を壊しかねないのも当然というものです。
家庭や職場でプチ本能寺の変が起きたり起こしたりすることのないよう、上手に休憩を取りたいですね。
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長月 七紀・記
【参考】
太田 牛一・中川 太古『現代語訳 信長公記 (新人物文庫)』(→amazon)
日本史史料研究会編『信長研究の最前線 (歴史新書y 49)』(→amazon)
谷口克広『織田信長合戦全録―桶狭間から本能寺まで (中公新書)』(→amazon)
谷口克広『信長と消えた家臣たち』(→amazon)
谷口克広『織田信長家臣人名辞典』(→amazon)
峰岸 純夫・片桐 昭彦『戦国武将合戦事典』(→amazon)