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【立花誾千代】
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私こそが立花家の主
跡継ぎらしく育った娘と、跡継ぎにふさわしいような気質の婿が一家族に居合わせてしまう。
誾千代は「私こそが立花家の主!」という考えを変えませんでしたし、宗茂は宗茂で「婿に来たからには当主の役目を果たさなくては!」と、お互いの責任感が真っ向からぶつかり合うことになってしまいます。
二人の年齢が同じだったことも拍車をかけたかもしれません。
戦国期は、女性の記録なんてほとんど残らないのが当たり前なので、この後、誾千代がどうしていたのかということは【関ヶ原の戦い】ぐらいになるまでハッキリしません。
秀吉による九州征伐の後、天正十五年(1587年)に宗茂が国替えを申し付けられて柳川に移った際、一緒に立花城を出たことはわかっているのです。ついでにその後に別居したことも。
ちなみに道雪は天正十三年(1585年)に亡くなっています。
娘夫婦のことを数年しか見られなかったのはある意味幸いだったかもしれません。
そのくらいなら、まだ子供が生まれなくてもおかしくはないですしね。
清正はん、あの辺に近づいたら襲われまっせ
さて、関ヶ原の際、誾千代についてとある伝説が残っています。
といっても戦に参加したわけではありません。
本戦が終わった後、居城に戻って徹底抗戦を続ける宗茂を説得するため、東軍についていた加藤清正が柳川付近にやってきました。
そのためには誾千代の住む宮永近辺を通らなくてはなりません。
しかし、土地に詳しい者によると「あの辺は近づかないほうがいいですよ」とのこと。
不思議に思った清正が詳細を尋ねると、こんな話でした。
「この辺の住民は立花家を慕っていますから、もし奥方であり立花家の血を直接引いている誾千代様の身に危険が迫ると思えば、皆反攻してくるでしょう」
「何それ怖い(無駄な戦をするのは趣味じゃない)」と判断した清正は、宮永付近の住民を警戒させないよう、かなり遠回りをして柳川へ向かったとか。
誾千代は自ら武装して、加藤軍と戦う素振りを見せたともいわれていますが、どっちもありえそうな話なのが何とも判断に困るところです。
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ちなみに清正は見事宗茂を説得し、柳川城は降伏・開城しました。
もし宮永で住民と争いを起こしていたらどうなっていたでしょうねえ。いくら夫婦仲が悪いからといって、正室を傷つけられたら宗茂も怒るでしょうし。
宗茂改易後も別居したまま
その後、宗茂が改易されたことから誾千代も宮永を離れることになりました。
が、夫婦は一緒に暮らそうとはしませんでした。
宗茂は浪人となって清正の食客になったり、家臣と共に京都へ向かったりする一方、誾千代は現在の熊本県玉名郡で一人住まいを続けていたようです。
そしてそのまま夫婦の溝は埋まることなく、関ヶ原の2年後、慶長七年(1602年)に誾千代は34歳の若さで世を去ってしまいます。
死因についてははっきりわかっていないようです。
マラリアや赤痢らしき記録があるので、お腹を悪くして亡くなったことは間違いなさそうなのですが……伝染病だったら「誾千代の周りの人が一気に病気になった」というようなことも残っていて良さそうなものですよね。
婦人病にもお腹を下すものがありますし、そっちの可能性もなくはなさそうで。
誾千代の死因やその経緯についてはちょっと悲惨な伝説がいくつかあるので、あまり勘繰るのも可哀相な気がします。
「夫の再起を祈って毎日お参りに出かけていた」という説もあります。
関ヶ原で敗戦武将となった宗茂は、その後、元和六年(1620年)に幕府から大名としての復帰を認められます。柳川城主として10万9000石を与えられたのです。
かくして大名として奇跡の復活を遂げた宗茂は、誾千代を弔うために良清寺を建立。
現在は夫婦揃って柳川城内の神社に祀られています。
なお、立花宗茂の生涯については以下の記事にございますので、よろしければ併せてご覧ください。
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長月 七紀・記
【参考】
国史大辞典
渡邊大門『井伊直虎と戦国の女傑たち~70人の数奇な人生~ (光文社知恵の森文庫)』(→amazon)
歴史読本編集部 『物語 戦国を生きた女101人 (新人物文庫)』(→amazon)
火坂雅志『戦国を生きた姫君たち (角川文庫)』(→amazon)
立花誾千代/Wikipedia