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【紀州征伐と太田左近】
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雑賀衆の矜持を見せつけ開城→自害
雑賀衆のプライドを天下の秀吉軍に存分に見せつけた太田左近さんは、ここにきてついに降伏を決意。
これは当然ながら、自らの死を意味することになります。
太田左近さんは降伏の条件通り自害し、同じく主だった城兵たち52人の首と共に秀吉軍に差し出されました。
こうして4月24日に太田城は開城を迎えます。
太田左近ら53人(51人とも)の首は大坂の阿倍野で晒され、53人の女房衆(奥さんたち)23人(28人とも)も磔となって処されたといいます。
その後、首は故郷に戻り、太田城の周辺に3ヶ所に分けて埋められたとのこと。その1つが現在も来迎寺の東に「小山塚(おやまづか)」として残されています。
また、おそらく阿倍野で磔になったであろう太田左近さんの正室とされる「砂」のものと伝わるお墓も来迎寺の境内に残されています。
太田城はその後、秀吉軍によって火を放たれて廃城になりました。
昭和初期の宅地開発などもあり、建築物や土塁や堀などはほとんど残されていません。
しかし、大立寺(だいりゅうじ)には太田城の「大門」を移築したと伝わる山門が現存して和歌山市の文化財となり、秀吉の堤防は「太田城水攻め堤跡」として一部残されています。
ちなみに、秀吉は開城した日に太田城の城兵に3ヶ条の朱印状を出しており、その最後に次のような一文があります。
一、在々百姓等、自より今以後、弓箭きゅうせん、鑓やり、鉄炮、腰刀等、停止 ちょうじせしめ訖 おわんぬ。然る上は、鋤、鍬等、農具を嗜たしなみ、耕作を専らにすべき者也。仍よって件くだんの如し。
これ、簡単にまとめますと
「百姓は武器没収! 農業に集中しろ!」
ということです。
あれ?なんかどっかで聞いたことがあるような一文ですね。
そうです!秀吉の『刀狩令』です。
秀吉の「刀狩り」は実際どこまで狩った? 兵農分離をできればOKだったのか
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秀吉の刀狩令は、学校の授業で「天正16年(1588年)に出された」と習います。たしかに全国的にはそのタイミングですが、実はそれに先駆けて太田城の城兵たちに出されていたんですね。
また秀吉は、太田城を手中に収めて廃城とした同4月末に、紀州の新たなお城の築城を命じます。
それが「和歌山城」です。
秀吉はその時に「岡山」と呼ばれていた築城地の名を「和歌山」に改名したといいます。
由来は『万葉集』にも登場する、和歌山城から南に位置する古くからの景勝地の「和歌浦(わかのうら)」だそうです。
中世紀州の在地土豪の気風を集約した人物
太田左近さんの死によって雑賀衆は壊滅しました。
傭兵部隊として織田信長を苦しめ、その後も独立気風の強さゆえに権力者へ歯向かった集団は歴史上の表舞台からは姿を消します。
生き残った雑賀衆は、帰農したり、腕を買われて別の大名に仕えたりしました。
現在は「太田城史跡顕彰保存会」さんを中心に、太田左近さんたちの霊を慰めるために毎年4月に法要が行われ、平成27年(2015年)には開城から430年を記念した記念祭も開催されています。
また、太田左近さんをモデルにした「自由の戦士 さこんくん」と、太田城に籠城して槍を持って秀吉軍に突撃したと伝わる朝比奈摩仙奈をモデルにした「愛の戦士 ませんなちゃん」も誕生しています。
あ、お二人の幟の後ろには太田左近さんの像が立っており、その案内板の文言も郷土愛が溢れていて個人的に好きなんです。
「太田左近は、天正十三年(一五八五)全国制覇をもくろむ豊臣秀吉に対し、太田城に立てこもり、紀州の土豪を指揮して抵抗したという。
一ヶ月に及ぶ水攻めをうけた後、最後はみずからの命を賭して城中の子女の助命を願い城を開城したという。
中世紀州の在地土豪の気風を集約した人物といえるであろう」
“もくろむ”からにじみ出るアンチ秀吉感(笑)も良いですが、最後の一文からも“太田左近は俺たちの兄貴”感が伝わってきてまた良いですね!
雑賀衆の意地を見せた不屈の紀州人!
太田左近さんの太田城、ぜひ登城してみてくださいませ!
それでは次回もお楽しに〜。
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文:れきしクン(長谷川ヨシテル)
◆れきしクンって?
元お笑い芸人。解散後は歴史タレント・作家として数々の番組やイベントで活躍している。
作家名は長谷川ヨシテルとして柏書房やベストセラーズから書籍を販売中。
【著書一覧】
『あの方を斬ったの…それがしです』(→amazon link)
『ポンコツ武将列伝』(→amazon link)
『ヘッポコ征夷大将軍』(→amazon link)