奥平信昌

奥平信昌/wikipediaより引用

徳川家

奥平信昌~武田と徳川に挟まれた苦難の国衆~長篠の勝利を引き寄せ勝頼を滅亡へ

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亀姫と信昌を夫婦とするべし

足利義昭方との決着がつき、今まさに上り調子の信長はこう伝えてきました。

家康の長女・亀姫を、定能の長男・信昌に娶せるべし――。

要は姻戚関係を結べということで、家康は同案を受け入れます。

仮に亀姫が「田舎に嫁ぐなんて嫌」と思ったところで、お家の一大事にそれどころではありません。夫となる信昌の人柄なんてのも関係ない。

ただし、年齢は当然考慮されたことでしょう。

亀姫:永禄3年(1560年)誕生

奥平信昌:弘治元年(1555年)誕生

縁談話が持ち上がった元亀4年(1573年)、信昌は数え歳で19、亀姫は14ですのでやや幼いとはいえ、二人は適齢期といえます。

二人が結婚に至った背景として、同年の大事件と言える武田信玄の死も影響したでしょう。

いくら厳重に秘されても、不穏な情報は漏れるもの。奥平氏は信玄の死は確実であると、家康に伝えています。

信玄という巨星が堕ちたのであれば、徳川についたほうがよいですし、ましてや当主の娘婿となれば、実に上手い話です。

しかし、武田も無策ではありません。人質としていた信昌の妻・おふうと、弟・仙千代ら、奥平氏の者を武田勝頼は処刑しているのです。

信昌と亀姫の結婚ばかりが注目されがちですが、その陰では犠牲になった者たちもいました。

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奥平信昌が重要な役割を果たす【長篠の戦い】

人質を処刑した武田勝頼としては、それで手打ち――とはならず、三河についた奥平氏を許すわけにはいかない。

そこで、大挙して奥平勢の籠もる長篠城へ押し寄せました。

長篠の戦い】の始まりとも言えるこの包囲戦、城に籠もる信昌は単独で強大な武田軍を追い返せるはずもなく、籠城戦へ。

徳川家康織田信長の救援を求めるべく、使者を送り出します。

そこで登場となるのが鳥居強右衛門です。

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城にいる仲間を救うため、長距離を走り、そして長篠城の付近へ戻ってきたところで武田軍に捕縛され、磔に処される――そんな劇的な展開も含めて奥平勢の働きが注目されるためか、織田信長は、戦後、信昌の働きを讃えて「信」の偏諱を与えたともされます。

これは後世の誇張ともされていて、確実とは言えませんが、いずれにせよ大軍が押し寄せる中、信昌と配下の兵士たちは武田軍の攻撃をよく防ぎ切りました。

そして設楽原における両軍のぶつかりあいを経て、見事【長篠の戦い】に大勝利を収めた織田・徳川連合軍はその後も勢いにのり、一方、武田の凋落は顕著になってゆきます。

長篠合戦図屏風/wikipediaより引用

 

家康から「大般若長光」を授けられ

天下を決定付けることとなる大決戦は、長篠城に籠った奥平信昌の奮闘により起きたと言えるでしょう。

国立博物館所蔵の名刀「大般若長光」は、このとき家康より信昌に授けられたと伝わります。

さらには籠城を支えた奥平家臣に声を掛け、知行を子孫代々保証するとしました。

情勢不安定だった奥平氏にとって、これは素晴らしい戦果であり、戦いのあと、信昌は父・定能から家督を譲られました。

徳川家康にしてみても、好機到来です。

長篠の戦いの勝利を契機に山家三方衆を従属させ、奥三河を平定、武田という後顧の憂いを断てたのです。

その押さえが娘婿・奥平信昌であるというのは、一層の忠義を望めることであり、家康にとって良い事づくめと言える。

奥平信昌にとっても人生におけるハイライトであり、義弟である松平信康とは明暗が分かれています。

家康の長男である信康も、武田と領地を接した岡崎城を守っていました。

しかし天正7年(1579年)、信康と母・築山殿は、家康によって死を命じられています。

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その背景には武田方の干渉があったとされます。大岡弥四郎事件はじめ、岡崎城には不穏な気配が漂っており、そうであってもおかしくありません。

家康を父とし、築山殿を母とする亀姫と信康――まさに明暗が別れた姉と弟。

嫡男の信康と糟糠の妻である築山殿を失った家康にとって、亀姫と信昌夫妻は心理面で大きな支えとなったことでしょう。

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