英国ドラマ『ウルフ・ホール』レビュー

英国ドラマ『ウルフ・ホール』/amazonより引用

歴史ドラマ映画レビュー

世界史の勉強にも役立つBBC作品~英国ドラマ『ウルフ・ホール』レビュー

イギリス史上、最も人気のある国王は誰なのか?

そう問われたら、なかなか難しいものがあります。

大英帝国全盛期を築き上げたヴィクトリア女王なのか?

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それともエリザベス2世なのか?

 

あるいは同じエリザベスでも1世の方っていうチョイスも?

 

人それぞれ基準はありましょう。

ただ、これが「ネタとして出てくる王様といえば誰?」と問われたら、やはりあの方。

ヘンリー8世でしょう。

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結婚のためにかなんだか知らんけど、結果的に宗教改革をして、6人の王妃がいた。

そのうち2人を斬首している。

あまりにひどい!

と、人間的には無茶苦茶ですが、ネタとしては最高なんですね。

そんなわけでやたらと映像化されており、今回はその一つ海外ドラマの傑作『ウルフ・ホール』をプッシュしてみたいと思います。

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基本DATAinfo
タイトル『ウルフ・ホール -愛と陰謀のイングランド』
原題Wolf Hall
原作ヒラリー・マンテル
『ウルフ・ホール』(→amazon
『罪人を召し出せ』(→amazon
放送話数シーズン1、エピソード4(エピソード数は編集によって異なる)
制作年2015年
制作国イギリス(BBC)
舞台イギリス、ロンドン
時代1530年代(16世紀)
主な出演者マーク・ライアンス、ダミアン・ルイス、クレア・フォイ、マーク・ゲイティス、トム・ホランド、ハリー・ロイド
史実再現度最新の研究に基づいて、かなり真面目に作っています
特徴教材に使えるくらい上出来です。流石BBC
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勉強に使えるくらい真面目です

人気があるだけに作品も多いヘンリー8世。

そんな中でも最新にして、一番真面目な出来であるのが『ウルフ・ホール』です。

BBC制作ですので、うっかりミスをしようものなら「公共放送が何をしているのか!」とガンガンにクレームが入りまくる。

この時点で、極めて真面目に作ることが想定でき、さらにはキャストも似ていて面白い。

実は、ヘンリー8世の時点で、キャスティングがかなり難しいのです。

肖像画だとわかりにくいのですが、史実の彼は、祖父のイケメンプレイボーイ・エドワード4世を彷彿とさせる赤毛の美少年でした

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それが中年以降、ふくよかになり……なんかゲスっぽい容貌になっていく。

難しいんですね。

彼を描くとなれば、繰り返されるロマンス、結婚、悲惨な破局は欠かせない。

ならばイケメンにするか?

というと徐々に史実からかけ離れてしまい、一体どこに着地すべきなの?という葛藤があった。

過去には、ウケ狙いでイケメンにしちゃえ……という流れはありました。

『TUDORS』(2007-2010年、ジョナサン・リース=マイヤーズ)

 

『ブーリン家の姉妹』(2008年、エリック・バナ)

 

そして本作『ウルフ・ホール』でヘンリー8世を演じるのはダミアン・ルイス。

これがかなりいい線をいっていて、史実に近いキャスティングを探ったのがわかります。この一点だけでも素晴らしいものがある。

アン・ブーリンも、これまた難しかった。

妖婦風か?

賢い美女か?

彼女も当時の文献に「あんなイケてない女にメロメロになるもんかな?」と書かれているような史実があり、これまた難しいものでした。

それが本作のクレア・フォイは、肖像画に近いのです。

『TUDORS』のナタリー・ドーマーは名演でしたが、肖像画により近いのはこちらのクレア・フォイ。

そういう歴史系要素を抜きにして、キャストだけ眺めるにしても価値アリ。

マーベルユニバースでおなじみのトム・ホランド、『SHERLOCK』のマーク・ゲイティス、『ゲーム・オブ・スローンズ』のハリー・ロイドが見られるのです贅沢です。

 


教材として抜群の完成度

本作は、息抜きしながら歴史の勉強をしたい――そんな学生にもお勧めできる作品です。

ヘンリー8世ものの難点は、ロマンス重視だと漏れなく18禁になる点でした。

歴史を題材にしたソープオペラに吹っ切った『TUDORS』は、そのあたりが顕著。衣装も時代考証より見栄え重視で、ちょっと派手なものが多かったのです。

その点、本作は際どい台詞はあり、姦通だのなんだのモヤモヤした場面はあるものの、エロという点では安心です。グロという点でも、若干の流血と斬首はあるものの、そこまででもありません。

世界史の授業で先生が流しても、まずクレームはつかない。それどころか、細かいところでも勉強になりまして。

例えば衣装やヘアメイクもそうですね。

本作の上流婦人たちは、髪の毛をおろしたスタイルにしていません。まとめてベールを被せてあります。

長い髪の毛はまとめる国と地域がむしろ多数であったものですが、見栄えのためにおろすことが多い。その点、本作は真面目です。

食事の場面にしても、ナイフとフォークはなく、手掴みで食べています。

こう書くと「どういうことなのか……」と驚いてしまうかもしれませんが、見てくださいとしか言いようがありません。これはこれで、理にかなっていてマナーがある食べ方です。

当時は、イギリス料理がまずいと言われる前の時代です。ヨーロッパの大半の国がこんなものでした。

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イタリアの豊かな料理が婚姻関係を通してフランスに伝わり、宗教改革でカトリックとプロテスタントに分かれて、格差が生じるのはこの先のこと。

食事の場面一つとっても、実に興味深く、勉強になるのです。

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