殿、利息でござる!

殿、利息でござる!/amazonより引用

歴史ドラマ映画レビュー

江戸期の限界が見えて勉強になる~映画『殿、利息でござる』レビュー

こちらは2ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
殿、利息でござる!
をクリックお願いします。

 

元凶の殿様がキラキラしている

本作の問題点を挙げるとすれば、元凶である伊達重村が大変キラキラしていて、そこにいるだけで涼風が吹いてきそうなプリンスぶりを発揮しているという点でしょうか。

伊達重村を演じるのは、仙台出身のフィギュアスケーター・羽生結弦選手です。

本職の役者ではないから演技がイマイチ、ということはありません。

むしろ反対。演じる競技の選手だけあって、呼吸の仕方までしっくりと来ています。

それが他の役者とは異なる雰囲気を出していて、殿様らしくてよい効果を出していました。

しかし、本作の前半で描かれているのですが、仙台藩の領民が重税に苦しんでいるのは、重村の責任も大きいのです。

本人の自己満足にしかつながらない官位を、薩摩藩主に対抗するためだけに欲しがり、そのために金が必要となったのです。

政宗が東北代表の戦国大名として担がれるのはなぜ?仙台藩vs薩摩藩の影響か

続きを見る

 

憎むに憎めない殿様の気品

殿様がそんなことをしなければ、ここまで生活は苦しくないはず。

ところがいざ現れてみたら、その元凶がキラキラしたプリンスぶりではありませんか。

憎むに憎めない――しかも彼は反省の言葉も口にするんですよねえ。

殿様の気品というのはそういうもので、そこがリアルかもしれませんが、殿様に感じていた怒りをどこにもぶつけられないなあとちょっと困惑していまいました。

これは決して羽生選手のせいではない。

むしろ、彼の演技は素晴らしいのです。

本作は人々の忍耐や工夫、無私の献身に感動するだけではなく、江戸期のシステム限界点を考えるうえでも勉強になる一本だと思います。

チャンバラや合戦がなくとも、有名な人物が出てこなくとも、面白い時代劇は作れます。

平凡な人々が成し遂げる偉業を静かに描いた、しみじみと感動させられる名作です。

原作の併読もおすすめします。

原作『無私の日本人 (文春文庫)』(→amazon

映画『殿、利息でござる』(→amazon

あわせて読みたい関連記事

政宗が東北代表の戦国大名として担がれるのはなぜ?仙台藩vs薩摩藩の影響か

続きを見る

映画『サムライマラソン』が控えめに言って最高だ~愛すべき歴史バカの世界観

続きを見る

柳生一族の陰謀
タランティーノにも影響を与えた深作欣二『柳生一族の陰謀』はギトギトに濃厚だ

続きを見る

コメントはFacebookへ

NHKドラマ『柳生一族の陰謀』徹底レビュー! 時代劇への熱量が夢じゃない夢じゃない

続きを見る

映画里見八犬伝
映画『里見八犬伝』は時代劇系エンタメの元祖~若干チグハグがいい!

続きを見る

魔界転生
歴史ファンも唸るトンデモ映画『魔界転生』転生モノの元祖が面白い

続きを見る

著:武者震之助

【参考】
原作『無私の日本人 (文春文庫)』(→amazon
映画『殿、利息でござる』(→amazon

TOPページへ

 



-歴史ドラマ映画レビュー
-

×