そう重々しく語られる中、江戸城で秀忠(大河主人公経験あり)が苦しみ倒れます。
いきなり死亡!
出てきたと思ったら死ぬ……なんでも食あたりによる中毒死と推測されたとか。
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はい、二代将軍がいきなり退場しました。早いぃぃぃ!!
うん、このスピード感がいいですね。やはり、こういう時代劇は、開始早々誰か死なないと。
そんな父の死を受けて、嫡男の徳川家光はオロオロする。一方、弟の徳川忠長は冷静です。
よくわかる! 将軍継嗣問題
兄・家光(大河主人公経験あり)
御福(大河主人公経験あり)
松平信綱
vs
弟・忠長
於江与(大河主人公経験あり)
土井大炊頭利勝
信綱が本作ではまだ小姓です。
「お前のような老けた小姓がいるか!」というツッコミはとりあえずさておき、ここで一悶着があります。
お毒味役は自害するし、世継ぎも決まらぬまま将軍が亡くなったとなれば、世の中が混乱するというわけです。
土井の提案で父の死を伏せることに対して、それでは成仏できぬと憤る家光。ピュアなんだね。
対する忠長は、世の中の太平のためならば仕方ないと割り切り、於江与がそんな忠長を猛然とプッシュします。忠長こそが将軍によいとグイグイ。斉藤由貴さんが絶品の悪女顔で、もはや何も言うことはない領域!
そしてこのやりとりを、一人の男が聞いているのでした。
将軍家剣術指南役・柳生但馬守宗矩――。
実は彼にも大河主人公経験があります。1971年第9作『春の坂道』です。
でも……なんだか陰謀を企む腹黒いあの柳生のおっさん扱いの方が定着した感がある。そういう人物でして。
この宗矩を演じるのは『麒麟がくる』では松永久秀を演じている吉田鋼太郎さんです。
久秀も、宗矩も、奈良を代表する人物。宗矩の父である柳生石舟斎は、松永久秀に仕えておりました。もう吉田さんは、名誉奈良県民ですね。
奈良県民の誇りである久秀と宗矩を熱演する。奈良県民としては「いや、なんか腹黒いイメージがある久秀と宗矩より、むしろ島左近を推したい」という思いがあるかもしれませんが、まあ、それはそれとして。
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秀忠は「砒石を盛られた」
このあと、上野増上寺の霊殿に何者かが侵入します。そのうえで秀忠の内臓を取り出す。
秀忠の扱いが酷い? まあいいんです。もう死んでいる。
そして、その臓物を持って去ってゆく動きを、服部半蔵が見ています。
「あの女、確か柳生の……」
持ち去ったのは、柳生一族でした。
持ち帰られた胃を調べ、宗矩は「砒石を盛られた」と判断しています。
銀に毒をつけると、即座に黒くなる判定法です。本当にそんなもんでわかるかどうか。かなり怪しいものですが、本作はそうした今や消えつつある――そんな時代劇のお約束を復活させています。
そもそも、元の映画が傑作だけに、始まる前から「期待していない」という声もあったようです。
では、なぜ作るのか?
答えは作らねばならないから。技術と伝統の継承でござる。
ここ数年、ずっと気になっていたことがある。
時代劇の土台が崩れているのではないだろうか?
伝奇的なプロット、派手な殺陣、基本的な日本史知識に基づく描写とアレンジ、エログロバイオレンス。
そういうかつて一世を風靡した流れが衰退してきている。
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家計簿とか。金の勘定とか、ほのぼの日常とか。それが悪いとは言いません。
けれども物足りなさはあった。
藤沢周平のしっとりした世界観。悪くない。彼の作品は好きです。
歴史研究者の地道な史実を基にしたもの。それもよいことではある。そういうものが1990年代あたりから増えて、伝奇的なものはばかばかしいとされてきたとは思うのです。
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でも、それは世界のニーズとトレンドからは周回遅れになっているとは思った。
リンカーン大統領が吸血鬼と戦い……。
リージェンシー(摂政皇太子時代・ジョージ4世の治世)のイギリスでは、紳士淑女がゾンビと戦っているのにッ……。
そういう伝奇のギトギト歴史劇が、世界では受け入れられているのに、日本の時代劇はしっとりしていて、地味。
もっと血しぶき、殺陣、無茶苦茶な展開が見たかった。
『サムライマラソン』は、そんな世界のニーズが反映されていた力作でした。
それなのに、ユーザーレビューではトンデモバカ映画扱いをされていて、正直、寂しいものはあった。
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世界は、柳生一族が生首を投げるような映像を望んでいるのに……そんな嘆きは、今夜、過去のものとなる!
やはり、我が受信料は殺伐とした時代劇に使っていただきたいものでござってな。
はい、そんなわけで証拠を握った宗矩は家光を呼び出します。
三名の地獄に堕ちる宣言
宗矩は、ご逝去は毒殺だったといきなり家光にバラします。
奪還した胃から砒石が出たとペラペラ言うと、同席している御福と松平信綱は困っております。
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しかも、宗矩は若君のため毒を盛ったと言い出す。家光は、剣術指南がどうしてそんなことをするのかと戸惑っております。確かにわけがわからん!
家光は困惑し、短刀を抜いて宗矩に突き付けます。
しかし、彼は握り返してしまう。すると御福と松平信綱が動揺するのです。そして白状します。
毒を盛ったのはこの二人でした。
なんだ、この徳川将軍家周辺は……。
秀忠殺害犯
犯人:御福・松平信綱
動機:家光廃嫡を決めたから。でもそれは家康公の遺言を蔑ろにすることでしょ!
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大河ドラマの主人公経験がある御福、ご存知、春日局が暗殺……やはり、こういう大胆さが大事ですね。
徳川将軍は暗殺されてこそ。そういう気持ちが大事です。今は令和。江戸時代じゃないんだから、将軍は自由に扱ってよいでしょう。
家光は、ヤケクソになってくる。
弟の忠長を比較し、人徳も胆力もない、見向きもされていない自覚はあったようです。
だからこそ自己研鑽をはかり、父に認められたかったのに廃嫡を決められていてショックを受けています。繊細ですね。
ここで、胃を盗もうとしていたのは土井大炊頭だと明かされます。
それを察知して、宗矩はとめた。そのうえで、強引にこの陰謀に割り込んできます。
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なんか番組予告では、不穏なフラグを立てつつも一応宗矩が助っ人扱いですが、そういう綺麗な話でもありません。
家光は父を殺してまで将軍職につけるという計画に困惑しています。そりゃそうなるでしょ……しかし、宗矩はこうだ。
「つかねばなりませぬ。それが若君の持って生まれた天命に御座います」
逃げてはならないとハッパをかけたうえで、「これより先」と前置きをしてこれです。
ポイント
親に会えば
親を殺し
仏に会えば 仏を殺す
いわば善悪を超えた不退転の決意が肝要
なんかいいセリフ扱いですが、冷静に考えると意味がわからない。ただの外道宣言です。
でも、宗矩の圧力がすごいし、我ら三人(御福・信綱・宗矩、3人中2人が大河主人公)をお手討ちにしろと迫ってきます。
「あいわかった……今日よりこの家光、そなたらと共に地獄に堕ちようぞ!」
「はは〜っ!」
柳生一族と根来衆
タイトルが出てきます。
【柳生一族の陰謀】
ドーン!
……って、なんか最低最悪の団結を見せつけたな。
仕事のできる男・宗矩は休まない。フルスロットル陰謀に突っ走り、人員を集めます。
柳生宗矩が呼んでくるユニットとは?
・根来衆(忍者)
・長男の十兵衛
二男の左門友矩は不満そうですが、宗矩は強い剣豪カードを使いたいのです。
兄弟争いは徳川将軍家だけでもない。柳生一族でも真面目な左門と、フリーランス剣豪ライフを満喫する十兵衛の間には何かあるようです。
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そんな左門と家光のボーイズラブ作品もありますが……話が逸れるので、それはさておきまして柳生一族の確認。
柳生一族のカード
・S:宗矩(腹黒いあいつ)
・SS:十兵衛三厳(みんな大好き、眼帯剣豪!!)
・A;左門友矩(史実では夭折、気づけば死んでいる扱いが多い)
・B:茜(本作オリジナル)
・B:主膳宗冬(史実では柳生家当主になるのに、弱い残念扱いをされる不幸な人物)
そして根来衆(ねごろしゅう)とは一体何者なのか?
サラっと見ておきますと……。
根来衆とは?
根来寺周辺に居住していた僧兵集団。雑賀衆同樣、鉄砲による武装が得意だった。
そういう史実はさておき、伝奇時代劇では、伊賀・甲賀・そして根来という第三勢力扱いが定番です。第三勢力忍者には、他に風魔あたりのこともある。伊賀と甲賀は盤石として、三番手以降はフレキシブルです。
本作の場合、サンカの要素も含まれている。定住の地を失い、故郷を得るために戦っている設定のようだ。
みんなが愛してやまない十兵衛は、根来衆の村付近にいるらしい。フリーランスライフで仲良くなったそうです。
御頭の左源太は、宗矩より密書が参ったと言ってきます。動乱の兆しがある――それゆえ力を借りたいのだと。根来衆は、根来の国を再興させると言い出すわけです。
「根来の国」であって「根来の寺」ではないので、やはり本作独自の設定にしているとは思います。
日本単一国家宣言は、定期的に炎上します。こういうサンカのような民族を見なかったことにはできない。
大河じゃない、伝奇時代劇にはそういう問題提起の側面もあるんですね。「チェスト関ヶ原」が有名な『衛府の七忍』は、そこをテーマにしている。実は真面目な問題提起がある。
根来衆の若い男女であるハヤテとマンは、思い合う仲のようです。腕がなるぜ! そう張り切っております。
これも切ないんですよね。定住の地を得るために、汚い仕事に動員されるわけですから。そういう問題提起も念頭に入れておきたい。
そこへ、早速弓矢が飛んでくる。
溝端十兵衛の参上!
忍者! NINJA!!
忠長派は服部半蔵以下、伊賀がついているようです。伊賀vs根来ですな。
佐野岳さんが持ち前の高い運動能力で、鮮やかな殺陣を見せます。オリジナル版ではあの真田広之さんが演じたハヤテ。このまま第二のデューク真田になりましょう!
そしてここで、傘を被った剣豪が忍者を斬り捨てる。
十兵衛だあああああ!!
「腕をあげたな、ハヤテ」
溝端順平さんです。
オリジナルの千葉真一さんと比較して、いろいろ言われるでしょうから、大変だとは思います。けれども、令和現在、一番の模範解答を選んできたところだとは思えます。
ルックス、身体能力もあります。それに、千葉真一さんほどワイルドでもない。けれども、気品だけでもない。
爽やかなようできっちり人をズバリと斬るし、血糊も似合うし、セリフの滑舌や時代劇の言い回しもできているし、和服の所作もよいかと思います。いい十兵衛です。
十兵衛は讃岐国まで宗矩から知らせがきた。勘当同然なのによほどのことだろう、並々ならぬ覚悟だとわかっています。修行もお預けにして、協力する、望むところとやる気満々です。
はい、この時点では十兵衛は隻眼ではありません。
十兵衛って隻眼だったのか? その原因は? それは好きなように設定できます。伊達政宗とは違うのよ。
十兵衛隻眼パターンとは?
・幼少期の事故
・宗矩の厳しすぎる修行による(そりゃ親子仲もこじれるわ)
・作中で誰かにつけられる
本作は3番目パターンですかね。
忠長も、秀忠毒殺に感づいています。皮肉っぽくそこまでして家光を支持する御福に驚いてはおります。「抜け参り」とか、いろいろしてますもんね。
真相究明は父の冥福にも関わると困惑しますが、土井と於江与はそんな道を踏み外した家光派に国政を任せてよいものかと問いかけます。これはなかなかストレートな政治への提言かも。
そのうえで、家光に遺骸の確認を申し出ます。
塩対応の家光が口を開く。毒殺のフェイクニュースなんか調べてどうするつもり? そこまでして兄を出し抜いて貶めたいの? そうネチネチとのらりくらりとかわそうとして、言葉がエスカレートします。
後ろめたいことがあるから断るのかと迫る弟。ゲスの勘ぐりと返す兄。
家光はつっぱね、甲府に帰れ、せいぜいママにかわいがってもらえと煽るのですが……。
真っ直ぐな忠長は焚きつけられ、事の理非を正すと言い切る。
でも、正面突破はできない。ここで、於江与と御福の対決へ向かうのです。
御福は、於江与が家光を「愚鈍」と言い切ったことに、取り下げを要求します。
そんな御福の頭を扇で叩く於江与。そのうえで手をグリグリと踏みつけます。
「江戸に戻るときは、家光の首も、そなたの居場所もないと思え……」
斉藤由貴さんも美村里江さんも最高です。
女と女のバトルと矮小化する流れはいらん。やはり女性だろうと、首を取る宣言くらい力強くしないと。時代劇の発声もうまいし、着物の所作も綺麗だし、もはや何も申しますまい。
斎藤さんは、目を見開くと黒目の周りを白目が囲むようになって、それが独特の雰囲気を出しています。
彼女らも、戦国乱世を知る最後の世代といえばそうなんですよね。
どんなに愚鈍でも、血筋さえあれば将軍になれる。生母の身分もどうでもよい。そうなってこそが太平の世の完成形ではあるのです。そこまで至らないと。
十兵衛の帰宅に様々な反応
十兵衛がそのころ帰宅しています。茜は嬉しそうです。
「十兵衛兄様、お久しぶりでございます」
「茜、しばらく会わんうちに女っぷりがあがったな」
「いつまでも子どもではありませぬ」
微かに匂わせる、恋心。茜は養女かつオリジナルキャラクター。こういう伝奇時代劇では【オリジナルキャラクター=死】はお約束ではあります。
根来衆の左源太も「こんなに早く悲願が叶うとは」と嬉しそう。十兵衛は「俺の力ではない」とさわやかに言い切ります。
着実に惨殺フラグを立ててるわ……。
やっぱりこの溝端十兵衛、無茶苦茶いいですよ! この調子で、久しぶりに十兵衛ドラマを作って欲しいところです。
ちなみにオリジナル版の千葉真一さん。暑苦しいイメージがありますが、若いころは溝端さんポジション、正統派美形アイドルだったんです。
それが『仁義なき戦い』の大友勝利あたりで変わった。溝端さんも、そういう道に進める可能性はあるんです。応援しなくちゃ!
このあと、十兵衛はうまいうまいと満足そうにご飯を食べています。なんでも茜が心を込めて作っていたとか。
主膳は、自分には作ってもらえないと言っています。こういう切ない恋心が、あとで全部ぶっ刺されるお約束があるからさ……。
十兵衛は、諸国巡り、あたたかく迎えた根来の里のことを語ります。
でも、きょうだいのことは忘れたことがない。基本的にナイスガイなんですね。まあ、その割にフィクションでは躊躇なく敵を殺しますけど。
ご飯を食べつつ、茜にいい婿を見つけて安心させろと言い出す十兵衛。その上で左門と酒を飲もうとするのですが、相手は冷たい反応です。
フリーランスエンジョイしておいて、今になって家業を継ぐつもりなのかとイライラしています。
十兵衛は、ここに至ってそのつもりはないと断言します。仕官、要するに公務員ライフは性格的に向いていないってよ。それができるのは弟なんだから、自信を持てと励まします。
左門はそんな兄に、明日も早いから酒はほどほどにと釘を刺しながら酒を飲み合うのでした。
腹黒宗矩との対面
目を瞑ったまま扇を受け止める十兵衛。扇は宗矩でした。
不肖の息子の罪滅ぼしと語る十兵衛に、頼りにしていると励ます宗矩。
十兵衛は、確認があると言います。上様(秀忠)を亡きものにしたのは忠長周辺か? そうチェックするわけです。
「無論、疑う余地なし」
宗矩、断言しやがりました……。腹黒いなぁ。もうやだこんな親父。
はい、一応は病ということになっている秀忠ですので、京都から病気見舞いも到着しました。
公家どもなんて無視していいじゃない。と、言いたいところですが、江戸初期ってなかなか難しいものがありまして。
政治の中心が関東に移転された日本史上でも大きな転換点ですが、京都から権力を移すまで色々と面倒なことがありました。幕末、このことに鈍感になったがために、面倒くさいことになってしまいます。それはさておき。
麻呂のご機嫌をとらねば、将軍宣下もできない事情もあります。この世界で麻呂は優雅なだけでもないと来た。
秀忠の死。兄弟争い。大体麻呂どもはお見通しです。オーッホッホッホ!
家光と御福にこんなこと言い出しました。
「実のおたあさんでもないのに、なぜそこまで家光さんに肩入れなさる、慈悲深きことよの〜」
で、こんなこともそっと言いやがると。
「欲に溺れたる者を操るのは、他愛無いものでおじゃるのぉ〜ホーッホッホッホ!」
愉快な麻呂たち
三条西大納言(ノーマル、強くない)
烏丸少将文麿(むちゃくちゃ強い麻呂)
そんな烏丸文麿、通称「強い麻呂」。本作オリジナル版でも屈指の人気キャラクターです。最近は『ポプピピテック』の竹書房彦摩呂(くそまんがのくげ)の元ネタでもあります。
どんだけ……こういう……強い麻呂が見たかったことかッ!
演じるのは波岡一喜さん。オリジナルの成田三樹夫さんを敬愛していて、ノリノリで演じていたそうです。
実は本作予告動画で、手応えを感じたのはまさしくこの波岡さんの強い麻呂でした。
成田さんに波岡さんが絶対に勝てる要素が、この役回りならばあります。
成田さんは山形出身。波岡さんは大阪出身。関西の言葉のイントネーションについては、波岡さんが負けるはずがないわけです。
これは当時の限界がある。
『仁義なき戦い』は傑作で、菅原文太さんには文句のつけようがない。と、言いたいところですが、宮城出身の彼はどうしても広島弁をそこまですんなりとは言えていないというところはあるわけです。
波岡さんの文麿は、関西弁で煽り立てるいやらしさが絶品。身体能力や演技力もあるけれども、発声の時点で外さないから期待できると感じていたわけでして。
本作の強みは、ここだとは思う。
リメイク版って、どうしてもオリジナルに近づけることを正解としたくはなります。この役ならば、山本耕史さんあたりが、成田版には一番近いとは思えます。リメイク版の佐野史郎さんも意図はわかる。
でも、本作は一から別の解釈で、強い麻呂を作っていく意思を感じるんですね。
オリジナル版より軽薄といえばそうだし、チンピラぽいと思えるかもしれない。でも、令和版の強い麻呂として、これが正解だと思える演技と存在感です。これぞ強い麻呂!
そんな強い麻呂は、煽りがすごい。十兵衛と左門を見つけ、剣豪だから血の臭いがすると言い出します。
「おやおや、おそろしや、長刀やなあ、おほほほ、オーホホホホ!」
茜がそんな麻呂を不審がっている。十兵衛は、烏丸文麿、あれで宮中随一のの利き者だと言います。
それにしても烏丸文麿って、モデルからどうしてこういう着地に向かったのか。まぁ、みんな無茶苦茶に突っ走ってはいるけどさぁ。
『麒麟がくる』の足利義輝との落差に心臓がキュッとなります。
刀を握ったまま斃れる壮絶な最期~足利義輝13代将軍の生涯30年まとめ
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でも、ああいう義輝だけではものたりない。優雅だけどぶっ壊れている、強い麻呂を、この時代は必要としているんです!!
新陰流の内部分裂
そのころ、忠長派は土産2つをゲットしたそうです。
土産の内訳
・奥州の独眼竜こと伊達政宗、息女との御婚儀を承諾する。政宗は本当にこういうとき、ロクな扱いされないからさ。まぁ、本人の性格もああだけど
伊達政宗は天下を狙っていた?派手な逸話を検証しながら70年の生涯まとめ!
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・そして剣豪レアカード! 小笠原長治、号は玄信斎だ!
なんでも、宗矩の父・柳生石舟斎と同門だそうで、新陰流の正統を証明するために、将軍家の剣術指南役になりたいそうです。
「武芸者の欲することはいつの世も同じじゃ」
サラリとそう説明されるんですけどね。これ、伝奇時代劇慣れていないとわかりにくいと思うんですが。
【新陰流の内部分裂】です。
源氏にせよ、ギャングスタラッパーにせよ、ヤクザにせよ、なまじ元が同じ仲間だと内輪揉めが厄介。伝奇時代劇では、新陰流がやたらと分裂を繰り返し、殺し合いをします。
定番は、江戸柳生vs尾張柳生ですね。しょっちゅう新陰流同士で殺し合いをしている印象がある。伊賀と甲賀みたいなもんですね。
史実で実際に強いのは、悪党逮捕術をベースにした天然理心流、ともかく殴りまくるジゲン流だと幕末に証明されますが、それはそれとしまして。
さて、麻呂たちは出雲阿国の舞を見ています。文麿はあくびをしています。
そのうえで、内密な話。家光が将軍宣下したら2万石、忠長は10万石をオファーします。汚い話だなぁ。
あと、ここで突っ込みたい人はいると思う。
小笠原玄信斎も、出雲阿国も時代的にどうなのよ?
はい、史実ではもう生きていないとは思うのです。阿国は何代目かもしれないけど。
答えは……何を期待してんの? なんで伝奇時代劇で歴史の勉強するつもりになってるの? となります。
史実はどうでもいい。でも、それがゆえに上級者向けかもしれない。
で、この阿国なんですが。オリジナルは大原麗子さんです。そりゃもう、見ているだけでため息が漏れるほど美しい。絶品の存在です。
あの彼女を目指したら、追いつける人がいるかどうか怪しい。
森田望智さんは、コケティッシュでセクシー、度胸のある動きです。そういう捉え方があったか。そう思わされます。魅力的なんですよね。
このあと、忠長が笛を笛を吹いていると、この阿国に音が揺れていると指摘されます。二人は恋仲で、自室で忍んで会っているのでした。
これも森田さんをキャスティングした意味があるなぁ。正面切って美しいだけではなく、こういう魅力のある女性なら、純粋培養の忠長がメロメロになってもおかしくない。生々しさを感じます。
忠長は、愛する女性だからこそ、兄と戦になるやもしれぬ、危険な目にあわせたくないと苦しい本音を打ち明けるのです。
阿国は勿体無いお言葉と感謝しつつも、一介の女芸人、武家の女のようには振る舞えないと返す。それを収めたあかつきには呼び戻すと誓い、信じてくれという。
このあと、我が子の思いを察知した於江与は、廊下で「そなたを見損なうた!」と、あんな女と交際するなと我が子に迫ります。
心配もある。それだけではなく、祖父に織田信長の血を引くプライド高き女性です。ある大河ではなんだかごまかしましたが、夫の浮気には苦い思いがあったはず。そういうニュアンスを感じるんですよね。
忠長は妄執にあらずときっぱり言い切ります。荒井敦史さんのキリッとした生真面目さが出ていますね。これは正統派時代劇俳優だ。
さて、そのころ……。
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