歴史ドラマ映画レビュー

Gackt起用でザワついた大河ドラマ『風林火山』はやはり名作!もう1度見るべし

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上田原で重臣を失い「いたがぁきぃ~~!!!!」

素朴ながらも愛らしく、勘助との間に子まで宿したミツ。

なんと甲斐の大名・武田信虎に理不尽なかたちで惨殺されてしまいます(以下は武田信虎の事績に注目した記事です)。

武田信虎
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仲代達矢さんの信虎が、これがまた憎々しい!

ここで視聴者と勘助の怒りがひとつになり、武田への憎悪が燃え上がるのですが、この勘助がどういうわけか武田家に仕官してしまうわけなんですね。

勘助が武田に仕えるということは見ている側は皆わかっているわけで、それがこういうねじれた形のスタートでどうしてしまうんだろうか、そこが序盤のポイントであったと思います。

本作は井上靖氏の原作があるものの、原作は一年持つほど長くはありません。

脚本家の大森寿美男氏が、プロットをうまく作っていたと思います。

中盤からは武田晴信(後の武田信玄)という青年大名がのしあがっていく様と、それを支える勘助の活躍がメインとなります。

武田信玄
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晴信を演じるのは2代目市川亀治郎さん(現4代目市川猿之助さん)。

このキャスティングについても賛否両論ありましたが、前半の揺れる青年としての心理と、中盤の傲慢さ、終盤の円熟を巧みに演じ分けていたと思います。

同時に武田家臣団の豪華さ、渋さが際立っていました。

板垣信方役の千葉真一さんは、あれほどのキャリアを持ちながら本作が初の大河出演です。

円熟の殺陣、存在感は作品の厚みを増しました。ちなみに千葉さんの娘にあたる真瀬樹里さんも真田の女素破役で出演していました。

板垣信方と、竜雷太さんが熱演する甘利虎泰が、夏までの本作を支え、この二人が討ち死にする【上田原の戦い】で中盤のクライマックスに!

「いたがぁきぃ~~!!!!」

そう絶叫する晴信の声は未だ脳裏に焼き付いて離れません。

両雄を失った武田晴信ですが、欠けた穴と補うように真田幸綱(真田幸隆)が仕官し、宿敵・村上義清にも勝利をおさめます。

真田幸隆(真田幸綱)
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村上義清
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そしていよいよ、越後の龍こと長尾景虎との決戦の時が迫ります!

 

ある意味人間ではない……からこそハマッた

本格的な対決の前に、景虎は既にチラチラと出てはいました。

『思ったよりも悪くないんでは……』という声をもありましたが、それでも出番が増えていざ激突となると、本当にGacktさんで大丈夫なのかという懸念があったのは確かです。

しかし、です!

これが実にハマリ役でした。

本作の景虎は、戦以外どうでもいい、毘沙門天の生まれ変わりという自分で考えたシナリオに陶酔する、見ようによってはちょっと危ない人でした。

敵を前にして、矢が飛んでくる状況の中、悠々と酒を飲む場面はその真骨頂。

「この人はある意味人間ではないから仕方ないのではないか」

そう納得させられました。

本作には「俗世に嫌気がさした景虎が家出して高野山に来てしまい、そこで偶然山本勘助と出くわして斬り合いになる」という、今思い出しても形容に困るような場面があるのですが。

それでもこの景虎ならば仕方ない!

奇妙な説得力がGacktさんにはありました。

当初は受け狙いのイロモノ扱いされていたGacktさん。

しかし蓋を開けて見れば、写真集は出されるわ、謙信公祭に何度も呼ばれるわ、本作を象徴するキャストに数えられていたのでした。

Gacktさんを支える軍師・宇佐美定満役は緒形拳さんで、これまたいぶし銀で画面を引き締めています。

主君にあたる大名を大河では見なかったようなキャストで固め、家臣を渋く実力のあるベテランで固めた本作のキャスティングは実に巧み。

緒方さんを筆頭に上杉家臣団もバランスがよく、敵でありがなら実に魅力的に描かれていました。

冒険をしつつもしっかりとしたキャスティング、骨のある脚本、それに応える役者の熱演、こうした要素がかみ合って、本作は愛すべき作品になっていたのです。

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