武士の起源を解きあかす

笠懸をする武士『男衾三郎絵詞』より/wikipediaより引用

歴史書籍

誰も知らないサムライの根源に迫る『武士の起源を解きあかす』が読み応え抜群だ

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戦いによってヒャッハー化したのか?

ただし、ヒャッハーせざるを得ないから武士のような階級が生まれたのか?

というと、そうではない……。

異民族との戦いで統治に悪影響が及ぶという点では、中国と朝鮮半島も同じことではあります。

どちらも異民族相手に苦戦を強いられて来ました。

中国では後漢時代からの争乱と異民族侵入によって、漢民族の七割が減少したという統計もあるほどです。

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※朝鮮半島に侵入してきた満州族との戦いを描いた傑作映画『神弓』

それではこれらの国で武士のような階級が常にいたのか?

答えはNO。

前述した中国や朝鮮半島では、皇帝や王家の血縁関係者は、王朝交代をしてしまえばその時点で価値がなくなってしまいます。

皇帝や王の血筋が何世紀にわたっても尊いということは当然ではありませんでした。

交替しないからこそ天皇家の血脈が尊ばれるということ。

これも武士の起源と関わりがあるのだろうと、思えてくるわけです。

むしろ東アジアで【武士は特異な存在】だということ。これは外してはいけないポイントです。

この点については、はるか西の騎士の方が近いのではないか、とは昔から言われて来たことではあります。

確かに西洋の騎士と武士は、共通点があります。

その一例が、家紋です。

「家紋」というと、どこの国でもあるように思えるかもしれません。

が、実は西洋では長いこと「騎士独自のもの」と考えて来ました。それが日本にもあると知って、驚いたのだとか。

確かに中国の軍旗は「李」や「孫」等、姓を掲げているものですよね。

西洋と日本の家紋では様式に差がかなりありますが、それでも家をシンボルで示し、旗に掲げる点では一致しているのです。

しかし、ここで

「東洋の武士と西洋の騎士! どちらもスゴイ階層がいたんだね!」

と、素直に浮かれるのはやめておきましょう。

そういう話でもないのです。

武士はスゴイだのエライだの、そんなことは本書ではどうでもいい。

そう、焦点はとにかくその【起源】なのです。

犬追物/wikipediaより引用

 


半分を過ぎたあたりから、心臓がバクバクしてくる……

武士はどこから始まったのか?

その起源に迫ってゆくと、だんだんと心臓がバクバクしてきます。

なぜか。
それは、武士の起源がまるでブラックホールであり、中世の何もかも吸い寄せてしまう、そんな存在に思えてくるからです。

やっぱりどうしても、イモータンジョーのあのまなざしを思い出してしまいます。いや、これは個人的な意見ですけれども。

同時に、中世舞台の物語で描かれた世界観や、引っかかっていた疑問が解かれていって、もう頭が破裂しそうになって来ます。

例えば『源氏物語』や『伊勢物語』を読んでいて、

「嫌だぁ〜、都から離れるなんて嫌!」

「東国ぅ? あの危険でヒャッハー軍団がウロついている場所でしょ? 行くなんて怖すぎぃ」

という感覚に首をひねったことはありませんか?

なぜ、そんなに東国を嫌うのか?

いくらなんでも大げさ。同じ日本でしょ。

例えば紫式部にしたって「地方にいたことをやたらと自虐的に語っているよなぁ」と感じたことがありました。

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その理由が解ける……本書で解けるんすわ!!

本書を読み終えますと、平安貴族の人々が地方を、特に東国をリアル『北斗の拳』扱いしていた理由も実感として体に入ってきます。

もうひとつ、中世武士のおそろしさの核にも触れることができます。

武士という階層は、時代がくだるにつれて洗練されておとなしくなってゆくものです。

しかし中世の武士は、江戸時代はおろか戦国武士よりもよっぽどワイルドで、ともかくヒャッハー度が凄まじい。

例えば、屋敷の側を歩いていた浮浪者を捕まえて、弓矢の的にしたりしていたわけです。

大河ドラマ『平清盛』は、ああした武士の荒っぽさをを再現しようとして、叩かれたものでした。ともかく……。

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