書店へ足を運べば、常に何らかの新刊が発売されている歴史関連の書籍。その中で、
「まるでミステリーのように興奮させられる一冊がある!」
と知人にオススメされたらどう思います?
一瞬、身構えてしまいません?
歴史関連でその手の書物と言えば、どこか眉唾。大半は【トンデモ本】と紙一重というのが相場です。しかし……。
「あれはヤバイやつや……ラストまで読み切った時の、謎の爽快感……」という評判を聞き、思わず手にとってしまった一冊がこちらです。
その名も『武士の起源を解きあかす──混血する古代、創発される中世(→amazon)』という新書。
歴史界隈の研究者も太鼓判を押していることもあり、これは読まねばならないッ!
と、妙な使命感を抱えながら、その一冊を手にしたのでした。
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言われてみればわからんぞ「武士の起源」
本書は、衝撃的なテーマを投げかけるところからスタートします。
「武士って、そもそもどういう起源の持ち主なのか?」
ハハァ〜!
んなもん、わかりきったことじゃないですか!
皆さんご存知の通りいくつかの説がこれまで提唱されています。
※以下は武士の起源・諸説まとめ記事となります
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ところが、です。
序盤のページを少し読み進めるだけで、にわかに混乱してきます。
本書は冷静に、その起源に突っ込んでいくのです。
このあたり、ややこしい話ではあるのですが、「国衆」と混同してしまったりする部分もあるわけです。
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血で血を洗う物騒な時代に、その土地の有力者が武装して名を残した「国衆」。
それはそれで様々な伝説があるとして、彼らが主君として仰いだ「武士」はもっと毛並みがよいものです。
例えば、最上義光は愛用の指揮棒にこう刻んでいます。
「清和天皇末葉山形出羽守有髪僧義光」
要は【清和天皇の子孫で、剃髪していない僧である義光である】というワケです。
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このへん混同がハッキリとして来ます。
各地の国に住み着いた強い連中が、武士になったというけれども、その上に立つ名門武士は、それこそルーツをたどれば天皇まで到達してしまう――。
こうなってくると、源氏と平氏が争うよりももっと前へと遡らねばならなくなります。
だからこそ武士よりも古代・中世専門家である著者・桃崎先生の出番となるのです。
武士は東アジアではむしろイレギュラー
日本で生まれ育つと、
武士は存在して当然
と思い込みがちです。
しかし、東アジアの歴史の中で見れば、
『かなり変わっているんじゃないか?』
という疑問がムクムクと湧いてきます。
例えば中国や朝鮮半島。
科挙制度があった国では、軍隊を率いる将は科挙や武科挙合格者、推挙を通った人員であるわけです。宦官が指揮を執ることすらありました。
ちなみに日本でも科挙が導入されておりますが、肌に合わなかったのか短期間で廃止されています。
例をあげますと、日本でも能書家として名高い唐の顔真卿(がん しんけい)は、安禄山相手に奮戦しているわけです。
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日本史と照らし合わせると、不思議な気持ちになるかもしれませんね。
そんな試験勉強ばっかりしてきた官僚で、ちゃんと戦えるのかと思ってしまいませんか?
顔真卿の肖像画からして、これで戦ったのかな?という気持ちになりそうで、
他国からしたら、日本を見て次のように思う可能性があるわけです。
「いやいや、むしろ世襲の武装勢力(武士)が常にいるってどういうことなのよ?」
武士がいてこそ日本史――そんな考え方をしていた時には思い浮かばなかった妙な違和感が沸々と湧いてきました。
私の脳裏に浮かんできたのは『マッドマックス 怒りのデスロード』におけるイモータンジョーと、ウォーボーイズですね。
あの世界において、どうしてイモータンジョー一派が強くて権力を握っているのか?そんな説明は一切ありません。
視聴者としては、これだけ荒廃していたら強い奴とその配下が仕切ってもおかしくないよなあと理解して、世界を見渡して終わりです。
つまり武士とは、このイモータンジョーのようなものではないのか?
荒ぶる世の中だから、強い者がいて支配して、それでなんとかなっていく、そんな世界だったのではないのか?
なぜ、こんな風に思考回路が吹っ飛んだのか?
それは本書をお読み下さいとしか言いようがありません。
要するに、武士のヒャッハー時代に突入する以前、古代中世の時代からして日本は割とヒャッハーだった……そんな印象が湧いて来るのです。
ヒャッハーワールドだからこそ、武装勢力が必要となってくる。
その起源をたどると、天皇の子息であるわけです。しかし……。
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