『鬼滅の刃』作中で一番最初に登場する柱・冨岡義勇。
水の呼吸の使い手であり、己の命を賭けてでも禰豆子を救うと言い切ったその胆力――正直、カッコいいですよね。
ビジュアルにしたって美形でクールで、さらにアニメ版の声優が櫻井孝宏さんとくりゃ、完璧過ぎなようにも思えます。しかし……。
彼には決定的に残念なところもあります。
極度の言葉足らずで、友達は少なさそう。
現代で言えば【コミュ障】認定されてしまうところですが、そんな冨岡義勇のようなキャラクターでも社会から抹殺しないのが『鬼滅の刃』の良いところ。
アナタ自身あるいはアナタの周囲にも、彼のようなタイプは存在するでしょう。
2月8日はそんな富岡義勇の誕生日。
冨岡義勇を一人の人間として分析しながら、その接し方付き合い方なども同時に考察してみたいと思います。
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『鬼滅の刃』5巻(→amazon)
義勇は嫌われていないのか?
そんな義勇のクールな先輩像は、胡蝶しのぶとのやりとりで沈没します。
那田蜘蛛山編に駆けつけるクールな義勇としのぶ。そこでしのぶは、 禰豆子を発見、鬼として討伐しようとします。そんなしのぶを止め、禰豆子と炭治郎側につくのです。これに対して、しのぶはこう返します。
「鬼とは仲良くできないって言ってたくせに何なんでしょうか。そんなだからみんなに嫌われるんですよ」
そして義勇は?
「俺は嫌われてない」
これには読者も炭治郎もびっくりだよ!
しのぶはさらにこう来る。
「あぁそれ……すみません嫌われている自覚が無かったんですね」
「余計なことを言ってしまったようで申し訳ないです」
義勇はショックを受けたように見えますが……ここで、私なりに彼の気持ちを考えてみました。
心当たりは、あると思う。友達がいないというか、好かれないというか。まぁ、馴染めない。そういう言動を実際に義勇はボソボソと言っている。
心外! ハッキリ言われると、なまじ薄々わかっているだけにショックを受けるけど。だから「俺は嫌われてない」と返すけど。
無自覚ではないと思う。
むしろうっすらと肯定したい気持ちはあるのではないかと思います。
だいたい、義勇だって、友達をたくさん作って宴で踊りたい性格でもないでしょうに。
ただ、そう認めるのは嫌だ。彼なりにそんな葛藤はあるのでしょう。
ファンブックによれば、全員の柱からではないものの、実際に嫌わっている者もいると明かされてもいる。
それは仕方ないでしょう。だって、ああいう奴がそばにいて、あなたは好きになれますか?
意思疎通できない義勇の柱合会議
なんで義勇は嫌われているのか?
そのあたりは、柱合会議でわかってきます。
第1回:突然切腹を言い出す水の呼吸
・義勇、他の柱と距離を空けている……
やはり、薄々嫌われていると思っているからですよね?
距離感がつかめないのか? 他人が近いと単に嫌なのか? どのみち、無言で距離を空けている時点で相当感じ悪いですよ。
・禰豆子の処遇で切腹宣言
しのぶ相手でも揉めた禰豆子の処遇に対して、義勇を含めた水柱関連者は、もし何かあったら切腹すると言い切ります。いい話だとホロリときそうですが、ちょっと待て。
腹を切ったからといって、損害は保証されないんだぞ! 切っても何かあってからじゃ遅いんだぞ!
そもそも、何か起こらないとする保証と関係ない。これは不死川実弥がいう通りだ。
説明不足だ。なんなんだよ……ただでさえ無口で言葉足らずの義勇がいきなり「切腹する」と宣言したところで意味がわからない!
確かにちょっと不気味だし、意味がわからないし、チームワーク無茶苦茶ですね。“ほうれんそう”(報告・連絡・相談)をしのぶさんあたりに教わろうか。
第2回:絶望的なコミュニケーション力不足
そして第2回では、さらに悪化します。
・痣の話でやらかす、無駄にややこしい考えすぎの義勇
不死川実弥「チッ そんな簡単なことでいいのかよォ」
義勇「これを簡単と言ってしまえる簡単な頭で羨ましい」
ここで実弥が突っかかると、義勇は涼しい顔で「何も」と言います。
シラを切っているのか、それとも心底そう思っているのか、どちらなのか。
義勇は無表情なのでわかりにくいのですが、そもそもが思考回路が無茶苦茶複雑で、あの涼しい顔の裏は情報過多なのだと推察できます(これについては後述)。
・怒涛の塩対応が続く!
そして、そのあともこうです。
「あまね殿も退室されたので失礼する」
「六人で話し合うといい 俺には関係ない」
「俺はお前たちとは違う」
義勇は歩み寄らない。話し合う気力すら湧いてこない。どんだけ投げ出してるんだ。
しのぶも「さすがに言葉が足りませんよ」とこれには言いますし、嫌っている風柱と蛇柱のコンビは義勇に厳しい言葉を投げかけるのです。
義勇は、柱個人が嫌いというよりも、話し合うことそのものが苦手で無駄だという意識を感じます。
自我が強固であり、自分の意識で正しいと感じたら突き進める。もしも炭治郎と禰豆子が出会った隊士が義勇以外であったら、二人ともどうなっていたのかはわかりません。
低すぎる自己評価と足りない言葉
そんな義勇には悲しい過去がありました。
最終選抜における錆兎との過去を誰にも言えないまま、劣等感を抱えていることがそれです。
義勇さんにそんな悲しい過去が……ホロリ。そうなって理解を示せるのは、炭治郎だからこそかもしれない。
他の柱からすれば「めんどくさい」となりそうではある。
ましてやしのぶなら「劣等感を制御できないなんて未熟ですね」と言い切られそうでもある。
それにこの劣等感もおかしい。
最終選抜を潜り抜けたところで、大半の隊士は柱になれません。きっちり柱になっているからには、義勇はちゃんと功績を残しているのです。実力派です。
それでも、いつまでも錆兎と自分を比べるからよろしくない。
死んでしまった錆兎は、永遠に乗り越えられない存在なのに、いつまでも自分との比較をやめられないのです。そして自己評価がどんどん落ちてゆく。謙虚が裏目に出て、ひねくれたうえに感じが悪い奴になってしまうのです。
素直に語ることで、何か解決するかもしれない。
そんなことすら拒み続ける。お館様の気遣いと、心の壁を打ち砕く特性ゆえに選ばれた炭治郎のアプローチがなければ、義勇はこじらせたままであったと思えます。
義勇の過去は、悲しいし同情はする。
でも、その傷に向き合えず、無駄にこじらせていったことについては、義勇が悪いとしか言いようがないのです。めんどくさい奴だな……。
では、義勇の過去にあんなことがなければ、笑顔の優しい青年だったのか? 錆兎が生きていたら?
どうでしょう。生まれつき、めんどくさいこじらせ野郎だと思います。
錆兎にせよ、炭治郎にせよ、数少ない理解者の前では心を開けても、他の柱相手にはああいう態度であるのではないでしょうか。
あとファッションセンスですね。
姉と親友の羽織を半分組み合わせた羽織。そういう由来を聞けば泣けるし、良い話です。
しかし、半々に組み合わせている時点でかなり個性が強い。半分は女物ですからね。はなっから世間の評価や目をぶん投げていないと、なかなかできないセンスだ。
いろいろ言われている義勇ですが、やはり相当個性が強く、マイペースではある。改善の余地はあるのです。
本人がなんとかするか、周囲が理解するか。
歩み寄りが大事であり、だからこそめげない炭治郎は貴重な存在でした。
言葉足らずの裏にあるものは?
そんなめんどくさい義勇は、天然だの意外と可愛いだの、いろいろ言われています。
【コミュ障】というネットスラングもつきまといます。
けれども、義勇はそれでいいと思うのです。
トラウマがなければ普通のイケメンであったとも思えない。周りが理解し、合理的に配慮することで、なんとかなるとは思えます。
義勇は天然で【コミュ障】……そう片付けてもよいのですが、どうしてそうなったのか、彼なりの特性を考えてみました。
第1回で出てきたとき、饒舌に炭治郎に語りかけていました。
彼にしては珍しく、感情が昂っていたのでしょう。
そしてモノローグが圧倒的に多い。
どんだけですか。主役差し置いて、モノローグだらけ。彼の脳内がわかる珍しい局面です。
義勇本気の脳内処理は、基本的にこのくらいだいたい情報過多なのでしょう。義勇が出てくるたびにモノローグで埋め尽くすわけにはいかない。
ゆえに、よほどのことがない限り、彼の思考回路は見えないのだとは思います。
本作はワニ先生自身の個性なのか、脳内がどういう状態なのか、という点についてかなり描写されています。
そんな中でも、義勇はかなり思考回路がごちゃごちゃしている情報過多なのです。
五感組は鋭すぎる五感ゆえに、インプット過多で苦労が多い。義勇の場合は、観察眼と思考力が鋭すぎて、本人としても困り果てているタイプなのでしょう。
五感組がセンサーが高性能ならば、義勇はもっとややこしい。
敏感だし、処理する情報領域が高性能なのです。ゆえに、義勇は際立った言動をします。
初登場時からして、彼はそうでした。
義勇が禰豆子を見逃したのは、彼の優しさ由来だけとは言い切れません。
どうもこの鬼は何かが違うようだ。
この鬼の兄とやらも、洞察力がありそうだ.その上で庇っている。俺自身が告げている。この鬼は、殺してはならないと。そう確信している!
こういう自我の強さ、観察力、精神力を持って、思考回路をフル回転させて、禰豆子を救いました。
もしも、彼が空気を読める人物ならば……
「うーん、でも他の隊士の目があるし。逃したら俺まで処分受けるよな……」
「鬼は見逃すなと言っている、そもそも鬼は姉の仇。うん、なんか違うかなと思ったけど気のせいだな!」
こうなりかねない。
空気が読めないからこそ、義勇はえらい。個性があって、使えるのです。
鬼殺隊にいながら鬼を庇う。姉の仇である鬼でも見逃す。家族愛が根底にある炭治郎とも異なり、自分の思考力、しかも短時間の判断で義勇はそうしました。
思考を全部語ることは面倒で
そういう情報を全部しゃべるとなると、舌が追いつきません。筆談の方がはるかにマシ。
そうなると、話すことそのものがめんどくさい……どうせ全部しゃべっても聞いてもらえないし、お前の話は長いと思われる。
姉の死についてといい、そういうことが続きすぎて、彼なりの対処として黙ることを覚えたのだとは思います。しのぶに対しても、禰豆子の説明を2年前から始めようとしました。
義勇は、説明するなら全部言い切りたい。
それができないなら、そもそも話さない。
カラダに染み込んでしまっている。痣の話題で思考回路ミッチミチでフル回転していて、実弥のように簡単だと言い切れない。他の奴らと話している場合じゃない。どうせ理解されないし……考えすぎだのなんだの言われるだけだろ。ならはじめから何も言わん。
そういう情報過多にならない周りが、本気で羨ましいのだとは思いますが……それを言動に出したらダメだ。
しかし、ファンブック収録『キメツ学園‼︎』ですら、ぼっちご飯の義勇です。
喋りながら食べられない、合コンすら参加できない、デートすらあやしい。そんなことが判明しました。
義勇は猗窩座(あかざ)相手にこう言い切ります。
「鬼に名乗るような名は持ち合わせていない 俺は喋るのが嫌いだから話しかけるな」
猗窩座が鬼だから? 猗窩座が嫌いだから?
それ以前に、人生経験そのものの積み重ねで、本気で会話そのものが嫌いになったのだとは思いますよ。心底嫌いなんでしょうね。
考えてみてもくださいよ。一生懸命説明しても、相手にちゃんと聞いてもらえない。理解されない。意見を求めてくるから語ろうと、ひきつった笑みを浮かべられたり、しらけられたりする。
まるで世界全体から拒否されているようで、そんな拒否を味わうくらいなら、気遣いや会話すらもうやめてしまおう。
俺に関わるだけ時間の無駄だ。関係ない、自分でどうにかする。
そう諦めてしまったところで、仕方ない部分もあるのではありませんか?
炭治郎くらい根性のあるカウンセラー気質がいないと、義勇はこういう性格でしょう。
本人だって、話やテンポが周囲とズレていて、虚しくなることもあるかもしれません。
あなたの周囲にもいませんか? 無口でむすっとしていて無表情だけども、話し始めると長い人。
そういう人に「話長いね」「嘘ついてない?」「妄想乙w」「考えすぎでしょ〜」だの言っていると、義勇状態になってドツボに陥っていく可能性はあります。
『鬼滅の刃』には、今を生きていくヒントがたくさんあります。
義勇のような不器用な人がいたら、【コミュ障】だのなんだの笑い物にするのではなく、炭治郎のように話を聞いてみてはいかがでしょうか。しのぶのように、突っ込むのもありです。
義勇の悩み相談とハローワーク
義勇の悩みは、もう散々突っ込んできました。
五感組のように考えてみましょう。
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◆嫌われる、友達ができない
理解者が少数いればいい。友達は別に百人いなくてもいい。割り切りましょう。無理はしない。それに、別に嫌われている点は心外でもないでしょう。
◆理解されない
思考回路の中身を打ち明けたところで「わけがわからない」だの「話が長い」だの「考えすぎ」だの。
諦めも肝心かもしれない。炭治郎のような、どこかにいる理解者を探しましょう。
◆口下手で……
言葉が足りないとかなんとか言いますけど、そもそもインプットとアウトプットのバランスが取れないから、絶望的にできないわけですよね。
今ならメールなり、SNSなりでなんとかしましょう。オフ会で苦戦しそうですが、事前に考えて避けることはできると思いますし、あまり無理をしないように。
◆気づけば煽っているけど……
義勇は、結構口が悪い。そもそも初登場時だって、炭治郎に対して「それが妹か?」と煽っている。
名台詞のようで、キツイし、感じが悪いし、炭治郎でなければ「無茶苦茶嫌な奴!」と恨んでもおかしくはありません。
だってこれですよ。
「生殺与奪の権を他人に握らせるな‼︎」
「笑止千万‼︎」
言い方キツイし、炭治郎を愚かだと思いつつ全力で殴るし。危険人物じゃないですか……。
そうでないとわかるのは、炭治郎に助言をし、禰豆子には口枷まで作るほどケアをするから。
とはいえ、第一印象は最低最悪でもおかしくないのです。
義勇は、親切心や善意が伝わる前に、無駄にキツイ言動をするから、相手にものすごく恨まれるし、気づけば嫌われます。友達もなかなかできません。
このキツイ言動だって、「なまっちょろい気休めを言うよりも、真実を突きつけたほうがいい」という、彼なりの合理性の表れではある。
問題を解決したいのです。
でも、なかなか通じないから仕方ない。やはり、産屋敷耀哉のような教師や上司、しのぶのように突っ込んでくれる同僚、炭治郎のようなおおらかな理解者が必要なのでしょう。
自分を理解する気がない相手とは、無理してつきあわなくていい。それも義勇の生きる道だ。
◆義勇のハローワーク
『キメツ学園‼︎』での義勇はこう言いました。
「じっと見つめ合うだけでも相手の気持ちはわかる。誠実な人間は瞳に曇りがない。目は心の窓なんだ」
それを善逸から「俺はテレパシー使えないので‼︎」と言われてしまいますが、あれは心の底からの言葉だとは思います。
テレパシーというか、並外れた洞察力と察知力があるのでしょう。
モテようと思ったことがない。それも事実。ルックスだけをみて、自分の本質を理解せずにチョコレートをもらったところで困る。
そんなことより理解者が欲しい。だからぼっちメシ……。
そういう義勇とつきあえるのかどうか。
『キメツ学園‼︎』での体育教師です。しかし、スパルタ指導と容赦ない四角四面な対応で、保護者からクレームを入れられているとか。
ルール適用が厳格すぎて、地毛が黄色い善逸をぶちのめしていますし、全く適正がないのでしょう。
あれはあくまで漫画の設定ですので、現実では転職を推奨します。
クライアントとあまり交渉しないで済むIT系のプログラマー。
フリーランスのクリエイター。
専門職。
研究者にも向いていますが、大学教員は案外書類仕事や会議があるので、そこは注意が必要です。
ともかく、人間関係で摩擦が生じない職場がよろしいかと。
服装規定や飲み会ルールも守れませんので、ノーネクタイで飲みニケーションがないところが理想的ですね。
今、屈指の人気キャラクターに突っ込んで申し訳ない。
ただ、彼が面倒くさいことは確かです。
あなたの周囲にも義勇タイプはいませんか?
なんかめんどくさそうだと避けていませんか?
義勇タイプと交流することで、アナタ自身の世界に広がりが出るかもしれません。
こんな素敵なコミュニケーションを提唱する――『鬼滅の刃』を読む今の子どもたちは、きっとよい人間関係を築けるのでしょう。
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【参考】
『鬼滅の刃』5巻(→amazon)
『鬼滅の刃』アニメ(→amazonプライム・ビデオ)







