度肝を抜かれる日本人――。
もはや大河ドラマなどフィクション作品でお馴染みとなった光景でしょう。
いわゆる【ペリー来航】です。
この黒船の到来に対して、実は、日本中の誰もが「なにあれ、怖っ! 黒いバケモンだ!」と驚いていたわけでもありません。
「あ、黒船ね……。やっぱり来るよなぁ……わかってたけどさ……」と冷めた反応もありました。というのも19世紀の初頭から、日本の沿岸部には捕鯨船はじめ外国船が姿を見せていたのです。
大河ドラマ『西郷どん』では島津斉彬が「予測していた!」なんて、芝居がかった演出がされていましたが、その先代である島津斉興の時代からわかっていたことです。
海岸線が長く、外国船を目にする機会の多かった水戸藩でもあらかじめ認知しておりました。
当然、情報は幕府にも届いていて、彼らの中にも、
「うちも早く黒い船みたいなやつを作らないといけないな……しかし費用はいかほどだ?」
と考えていた者がいました。
幕末作品にありがちな“幕府が無能”というのは、フィクションゆえの過小評価。
実は江戸幕府の時代でも、船艦建造と海軍創設はなされていたわけです。
ただ、印象が薄い。
それはナゼだったのか?
今回は、明治2年(1869年)5月16日が命日となる中島三郎助に注目しながら、江戸幕府の海軍について振り返ってみたいと思います。
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探索好きの与力・中島三郎助
ペリー来航の嘉永6年(1853年)。
彼らが浦賀で待機していると、浦賀の与力である中島三郎助と香山栄左衛門らは、そこへ乗船してゆきました。
定番の幕末作品であればドキドキ……と、慌てふためき、船の中で縮こまっている幕臣の姿が描かれるかもしれません。
しかし、現実は真逆でした。
中島と香山の優雅な仕草と溢れる教養に、ペリーも驚きます。
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ただし、二人の印象は対称的です。
香山は丁寧な物腰で、優しく、物静かな紳士で、ウイスキーが大好き。
一方の中島は、どこまでも詮索好きで厚かましく、止められようがアチコチ探索し、銃器類の構造を見て、測定まで始めてしまう。
「なんなんだあの男は、いくらなんでも厚かましい」
なぜ中島はそんなに空気も読まずキョロキョロしていたのか?というと、もちろん偵察のためです。
そう考えると、気持ちよく酔っ払ってしまった香山より、仕事をしたということかもしれません。
とはいえ、ペリー艦隊側も、まさか日本人が自分たちの手で蒸気船を作るとまでは考えていなかったと思われます。
その“まさか”に、幕臣たちは挑むのです。
今度は自分たちで黒船を作ろう!
時代は海軍だ――。
そう先を読んでいた者は、前述のように幕臣にいました。
阿部正弘がペリーに対する意見を求めたところ、蘭学に通じた勝海舟が海軍の創設を提案。
優れたその意見は、即座に採用されます。
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と、その前に少し歴史を振り返ってみましょう。
それまでの江戸幕府は、どんな造船政策をとっていたか?
・慶長14年(1609年)に徳川幕府は諸大名の500石以上積みの船を没収し、建造を禁止
・寛永12年(1635年)の【武家諸法度】では、500石積み以上の船の停止を規定
要は、大名による海軍力保有を禁止していたわけで、阿部正弘は、この禁令を撤回したのです。
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そして、浦賀では早速、船の建造がスタート!
1853年に取り掛かるやいなや、なんと8ヶ月後の1854年に完成というスピードで「鳳凰丸」ができあがりました。
その中心人物として建造を進めていたのが中島三郎助です。
なんでもかんでも日本人スゴイ論に結びつけるのは避けたいところですが、生来の器用さ、頭の良さがうかがえますね。
あるいは江戸時代の成熟した職人技術が可能にしたのかもしれません。
勝海舟らからは「なんちゃって西洋船サ」と断言されてしまったこの船。
実は勝のハッタリ低評価とも言えるものです。
中身は相当シッカリしたもので、一年も経たずに自力で船を作ってしまう幕府の底力を感じさせます。
次に作られたのが「ヘダ号」でした。
津波にあった「ディアナ号」が壊れてしまい、帰国できなくなったプチャーチンらを帰国させるために建造さたものです。
イギリスの文献を参考にしつつ、悪戦苦闘しながら作られた「ヘダ号」は、プチャーチンらを帰国させることができました。
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黒船来航でアタフタしていた印象の強い幕府は、実のところ来航早々自分たちで船を造れるようになったんですね。
たいしたものではないですか?
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