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【幕末の訪日外国人が見た日本】
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先祖返りしたいかも? 幕末クールジャパン
当時の西洋人の記録を見ていると、残念ながら現在は失われたかもしれない美徳も記録されております。
◆子供への深い愛情
西洋人が驚いたことは、日本の子供の幸福な状況でした。
大人たちは好きなおもちゃを買い与え、大事に育てていたのです。
日本人ほど子供を愛することはない、と驚かれたほど。
これは、日本が恵まれていただけではなく、西洋の児童労働が過酷であったこともあるかもしれません。
当時のイギリス少年水兵、少年の煙突掃除人の不幸な状況は、以下の記事からご覧になれます。
人がゴミのようだ!った英国「救貧法」地獄のブラック労働とは?
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◆動物愛護大国
来日西洋人が唖然としたことのひとつに、日本猫が鼠を捕らないことがあったそうです。
「なんだこの猫は。ごろりと寝ているばかりで、可愛がられているじゃないか」
魔女の手先とされ、西洋では処分されたこともある猫。
その恐怖が終わった後も、今度はネズミ獲りばかりに使われる。
一方で日本の猫は、愛玩対象として、生活をエンジョイしておりました。
ろくに鼠も獲らず、豪華な首輪を付け、主人からヨシヨシと可愛がられるばかり。
篤姫の愛猫なんか、確かにセレブライフの極みでございます。
幕末に薩摩から将軍家へ嫁いだ篤姫ってどんな人?47年の生涯まとめ
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西洋人の悪童は、石を投げつけて遊ぶこともあった犬。
しかし、日本の犬は人々から可愛がられ、そんなこともありません。
首輪に現金を付けた犬が、お伊勢参りできたほどですからね。
人に代わって旅をする 犬のお伊勢参りが江戸時代に意外と流行ってた
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外国人にとっては「動物愛護大国なんだなぁ!」と感嘆するほど、江戸時代の人間と動物の関係は良好でした。
これはナゼか?
かつては、犬を弓矢で射る【犬追物】もあったほどです。
何か改革あったの……?と言えば、ご存知ですよね。
生類憐れみの令は日本人に必要だった?倫理観を正した“悪法”に新たな評価で考察
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この動物愛護傾向は、その後も続いてきたのか?
というと、残念ながら明治以降に途切れてしまいます。
西洋犬を飼うことがステータスシンボルになった代わりに、飼い主不明の日本犬は駆除対象となり、大量処分。
そして戦時中は、供出対象とされてしまいます。
結果、日本原産犬は絶滅種も出たほどで、現在残っている日本犬はわずか11種(純和犬6種+日本原産5種)です。
そして今なお日本は、残念ながら動物愛護大国とは認定されておりません。
日本で行われている犬猫の生体販売も、動物愛護が進んだ西洋の国から見ると、ショッキングなものだとか。
江戸や幕末の智恵を取り戻し、もう一度動物愛護大国を目指すのもありではないでしょうか。
クールなエコ愛好
西洋人からすれば、日本の高温多湿も興味深かったようです。
地震や火山が多い点についても理解が足りない部分もチラホラ。
ですから、紙や木造が多い建築も、
「カッコイイ!」
or
「なんかキモい!」
で意見が分かれていました。
そんな中、注目されたのがエコロジーな共存生活です。
盆栽や、狭くても家に庭を作る風習が素晴らしいと絶賛されたのです。
「こんなふうに緑とふれあう、それもありか」というわけですね。
イギリスはじめ、西洋諸国は緑とのふれあいを重んじますから、こういう手もありなのかとさぞや感心したのでしょう。
確かに身近な緑を愛でる傾向、現代社会にこそ必要と思えますよね。
ここも江戸の智恵に学んでよいですよね!
★
いかがでしょうか。
教科書にはなかなか載らない、当時の反応です。
明治政府が西洋文化を取り入れたことで、失われてしまった部分もあります。
本当の日本らしさ、江戸以前の日本らしさについて想像をめぐらせ、先祖返りしたほうが幸せなこともあるかもしれませんね。
個人的には、江戸自在以前の露出度アリになれば、夏でもかなり涼しいかもと思ってしまいます。
※ただし攘夷運動には、ほとほと困り、日本刀にかなり恐れていたこともあります(以下の詳細記事をご覧ください)
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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
【参考文献】
石川榮吉『欧米人の見た開国期日本―異文化としての庶民生活』(→amazon)
『国史大辞典』