こちらは2ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
【上野西郷像の犬の正体】
をクリックお願いします。
お好きな項目に飛べる目次
お好きな項目に飛べる目次
銅像の犬のモデルは?
さて、冒頭でもあげた上野公園の西郷隆盛像。
こちらは当初、軍服姿で作ることになっていたそうです。
しかし彼は逆賊でもあるため、平服で犬を連れたあの姿に変更されました。
妻の糸が「うちの人はこげなお人じゃなか!」と言った言葉は、実際に似ていないのか、それともこんなだらしない格好ではないと言いたかったのか、と様々な解釈があります。
真相はどうなのでしょう。
モデルは、特定の犬ではないようです。
西郷の愛犬複数を混ぜ合わせたイメージであり、特にこの犬!という指定はありません。
犬種は薩摩犬で、西郷の愛した故郷の犬です。ツンという雌犬であるという説もありますが、銅像の犬は雄です。
現在はかなり少なくなり、絶滅説もあり、見た目としては、柴犬に近いようですね。
薩摩犬は小さめの犬種ですし、兎狩りに使う犬はそもそも大きいものは不向きだそうです。
そのリアリティを追及して小さめにしたところ、結構なクレームがありました。
「西郷さんを大きく見せたいから、犬をあまりに小さくし過ぎてではないのか?」
「日本の犬ではない、ポインターかセッターのような洋犬ではないか?」
そんな難癖もつけられましたが、銅像を製作した側としては、西郷とその犬をできるだけ忠実に作っているのです。
犬の綱と首輪もリアルに
ちなみにこの像は、よく見ると犬の綱と首輪もリアルに作り込まれています。
西郷の従弟である大山巌は、維新後に下野した西郷へ、犬の綱と首輪を贈っていました。
その大山が銅像製作に関わっていますので、綱と首輪の形状をアドバイスした可能性があります。
銅像は草履まで西郷のものを取り寄せて作ったそうですから、犬の綱と首輪も実物をモデルとしていてもおかしくはありません。
そこまでこだわって作られた像なのです。
幕末維新の荒波の中、時に人を騙し、あるいは自らが騙され、心痛に悩まされていた西郷。
そんなとき、つぶらな瞳で見上げてくる愛犬たちの姿は、心の癒やしであり、支えだったことでしょう。
もしも、上野の西郷隆盛像に犬がいなかったら?
物足りなくて味気ない。
やはりあの格好で犬を連れているからこそ、今なお西郷像は多くの人々に愛されているのではないでしょうか。
あわせて読みたい関連記事
西郷隆盛~幕末維新の時代を最も動かした男~誕生から西南戦争まで49年の生涯とは
続きを見る
敵に囲まれた城を獅子舞で突破!会津藩士・山川浩の戦術が無双だ!
続きを見る
西南戦争が起きた本当の理由は何なんだ「視察」が「刺殺」の真相は?
続きを見る
ホントはすごい西郷従道(信吾)兄の隆盛に隠れがちな”小西郷”の実力に注目
続きを見る
西郷3番目の妻・岩山糸~夫の銅像を見て「こげなお人じゃなかった」と頑なに否定
続きを見る
文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
【参考文献】
仁科邦男『犬たちの明治維新 ポチの誕生』(→amazon)