小さな子供が感情を抑え切れないように、発達しきっていない社会では、暴力沙汰が多く、紛争や戦争も少なくありません。
現代が仮に大人だとすれば、江戸時代は思春期あたりでしょうか。
過渡期であり、その特徴として挙げられるのが
への転換です。
徳川家綱の時代に切り替えが行われたもので、日本史の受験などでもおなじみの存在になっておりますね。
本記事で武断政治と文治政治を見て参りましょう。
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文治政治と武断政治 ナゼそんな考えがある?
本題の前に、少しイメージの話をしておきます。
文治政治と武断政治。
なぜ、そんな考えがあるのか?という根底の話です。
日本が中国の文化を元にして、平安時代以降に独自の発展をしてきたことは皆さんご存じの通りです。
文治政治・武断政治にもそういった考えが少し出ています。
元々、中国で王様の諡号(しごう・高貴な人に死後つけられる名前)をつけるときに、最も理想的・偉大とされた王には「文王」とつける習慣がありました。
それに次ぐ者、あるいは武力における功績が際立つ王は「武王」という名が送られます。
封神演義で有名な、周王朝の祖とされる姫昌は「文王」、実質的な初代の王・姫発は「武王」です。
三国時代の魏では、祖である曹操が「武皇帝」であり、その息子である曹丕が「文皇帝」となっています。
曹操は詩心もあった文武両道な人ですが、やはり武力で王朝を作り上げたイメージが強かったのでしょうね。
諡号に使われる文字には他にも候補があり、やはり良い王には良い意味の字がつけられています。
逆に、悪い王様だと「幽王」など、暗いイメージの字がつけられました。
これも周王朝の幽王が有名ですね。彼は「美女の笑顔見たさにアレコレやらかし、家臣に見限られて周王朝を途切れさせた」という、まさにダメ君主のテンプレみたいな人です。
ともかく「文は武よりも優れている」というイメージが前提にあるわけです。
感情に偏りがち=乱暴になりがち=武力と結びつくからでしょうかね。
また、文治政治などの「文」は法律の意味も強く出ています。
つまり、文治政治とは「法律を元にした政治」ということにもなります。
現代からすれば、これはごく当たり前のことですよね。
しかし、江戸時代になるまでの日本は、地域ごとの違う法律しかなかったため、出身地が違う者同士での紛争が絶えませんでした。
現代でも、食文化や地域ごとの習慣によって、修復不可能なレベルに人間関係が悪化することもありますよね……嫁姑問題などもその系統でしょうか。
御家を潰してハイおしまい!の時代じゃなくなった
個々人の衣食住程度なら、「そういう人もいるよね」で済みます。
これが武器と腕力のある武士同士だと、思わぬ刃傷沙汰になりかねません。
それを防ぐのが法律の役目ではありますが……三代将軍・徳川家光の頃までは、キリシタン問題やら外交関係やらで、武士のトラブルまで丁寧に付き合ってられません。
結果、どんどん火種が増えてしまいました。
となると、改易で御家を潰してしまうなど、手っ取り早く力で処断するしかありません。
『武家諸法度』という一応の法律はあれど、この頃は戦国時代に生まれ育った世代もいて、理で説き伏せるより力を見せつけたほうが早かったでしょう。
少し時代が下り、四代・徳川家綱(在任期間1651-1680年)の頃になると、戦国生まれはほとんどいなくなります。
上方の皇族・公家に対しても『禁中並公家諸法度』などが少しずつ浸透。
文治政治に切り替える下地が整いました。
また、家綱の性格も文治政治へ切り替えるにはちょうどいいものだったかもしれません。
父であり三代将軍である家光は、就任直後に自ら「余は生まれながらの将軍である」と宣言したエピソードもあるくらいですから、剛毅な人物でした。
しかし家綱は、父とは真逆で実におとなしい性格。
かつ、周囲の者や下々の者、遠流になった罪人にまで思いやりを見せたエピソードがあるほど優しい人です。
むろん全て真実とは限りませんが「この人ならそういう言動をしてもおかしくない」と思われていたからこそ、そういう話が残ったのでしょうね。
もしも家綱が家光と同じような剛毅タイプだったら?
文治政治への転換はもう少し遅かったかもしれませんが、異母弟の五代将軍・徳川綱吉が儒学を尊ぶ主義だったので、大きな流れは変わらなかったと思われます。
不思議というか面白いのが、綱吉へ儒学を叩き込んだのが、他ならぬ父の家光だったことでしょうか。
家光は幼い頃、同母弟・徳川忠長と家督を争ったことがあるため、異母兄弟である家綱・綱吉ではその危険が大きいと判断し、長幼の序列を尊ぶ儒学を用いたといわれています。
それはそれで、後に別の問題が起きるわけですが、まあ、その辺は別の機会にということで……武断政治から文治政治へと切り替わったことで、具体的に何が変わったのか?見てまいりましょう。
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