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【麻疹の歴史】
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麻疹は元号をも変える
元号は基本的に天皇の即位で変わります。
しかし過去には、天災や疫病の流行を断ち切るために元号を変えることがありました。
「災異改元」と言います。
おそらく皆さんの想像以上に頻度は高く、過去に災異改元は100回以上行われております。
そのうち
・天然痘が12回
・麻疹が7回
なのですから、近世以前の麻疹がどれだけヤバかったかご理解いただけるでしょう。
一例を挙げますと、鎌倉時代の【建長】8年は、10月5日(新暦:1256年10月24日)に改元されて【康元】となりました。
なぜならこの年の年末4ヶ月間、鎌倉で麻疹が大流行したのです。
6代将軍だった宗尊親王を筆頭に、執権・北条時頼や問注所執事・三善康連などが次々に罹患。
この時、三善康連と北条時頼の娘が死去しております。
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改元はこの麻疹の流行をおさめるために行われたようです。
ちなみに、災異改元の中には「ハレー彗星が来たから」ってパターンもあります。
更にはおめでたいときも元号を変えることがあり「珍しい亀が見つかったから年号かえました!」ってパターンも奈良時代に4回もあります。
奈良時代でも「池の水ぜんぶ抜く」とかしたんですかね。
あれってやたらと巨大亀が出てきますし……。
幕末の江戸で最大40万人の感染
江戸時代に入っても麻疹は猛威を振るい、13回の大流行が記録されております。
中でも1862年は被害が大きく、約20~40万人の罹患者数を観測(参考:日本医史学雑誌PDF)。
江戸期の文化・風俗・災害などを記した『藤岡屋日記』によると、このときの死者は実に1万4210人に達したとされ、致死率からしてあながち誇張とも言えない状況です。
かように恐ろしい麻疹。
現代では【◯万人が麻疹にかかった!】というニュースは聞きませんよね?
何故だと思いますか?
現在、麻疹が大きく騒がれない理由。
それはワクチンがあるからです。
麻疹ワクチンは1978年に定期接種として小児に導入。2006年からは免疫獲得性をあげるため、1歳児と小学校就学前の計2回接種となりました。
2007年に高校・大学を中心に【成人麻疹】が流行した際は、2008年から5年間の限定措置として中1と高3生に追加接種をいたしました。
その他にも定点報告から全例報告に変えたり、厚生労働省がそりゃーもうがんばったわけです!
そのかいあって2002年には約20万人、2008年に年間11000人であった麻疹患者数は数百人まで激減して、2015年3月には世界保健機関西太平洋事務局(WPRO)から麻疹排除国の認定を受けました。拍手パチパチ~。
麻疹とコナ・コーヒー
しかーし、排除といっても天然痘のように本当にゼロになったわけではありません。
流行国から持ち込まれて、患者が発生したり、流行したりします。
最近は患者数がグッと減ったせいで麻疹の恐ろしさが伝わらず、ワクチンをうっかり忘れたり、打たなくても大丈夫なんでは?と思う方もいるようで……。
ワクチン接種率が低下すると、抗体をもたない人が増え、患者発生や流行の拡大につながります。
排除宣言に油断せず、勝って兜の緒を締めよ!ですよ。
さてさてここまで書いたらコーヒーが空になってしまいました。
コーヒーといえばハワイ島の西岸「コナコースト」で栽培されるコナ・コーヒーは高級品として有名ですよね。
実はコナ・コーヒーの誕生には麻疹が関わっております。
ときは1824年。
ハワイ国王・カメハメハ2世は、イギリスとの同盟交渉のために王妃と渡英しました。
しかし、運悪くイギリスで麻疹にかかり王妃共々命を落としてしまいます。
太平洋諸島には麻疹の流行がなく、免疫がなかったためでしょう。
二人の遺体を載せた英国艦は、ハワイに帰る途中でブラジルのリオ・デジャネイロに立ち寄りました。
このとき同乗していたオワフ島知事のボキが、コーヒーの木を持ち帰ったことが今日のコナ・コーヒーにつながったそうです。
あ、私が飲んでいるのはコナ・コーヒーのような高級品ではなく、インスタントの粉コーヒーですよ、なんちゃって。
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文/馬渕まり(忍者とメガネをこよなく愛する歴女医)
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【参考】
神奈川県衛生研究所(→link)
アル・ラーズィー/wikipedia
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