ゴールデンカムイ21巻表紙/amazonより引用

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ゴールデンカムイ21巻 史実解説!満洲鉄道と満洲国とは何なのか

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ゴールデンカムイ21巻史実解説
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シベリア抑留、極東国際軍事裁判証人喚問、中国共産党が支配するかつての母国に送還され、9年間の収容生活を送ります。

一市民として北京に戻ったのは、1959年、53歳でのこと。よき人民となった彼は、1967年に61年の人生を終えるのでした。

彼の後半生は平穏なものでした。

しかし、彼の周囲はそうではありません。

非業の死を遂げた皇后婉容(えんよう)はじめ、彼の周囲で非業の運命を迎えた人々が数多く存在しました。

溥儀の妻に日本人はおりませんが、溥儀の弟・溥傑(ふけつ)は、嵯峨浩と結婚しました。彼女の自伝『流転の王妃』は何度も映像化されております。

※『流転の王妃』

こうした満洲皇族は、どうしても複雑な評価を受けます。

彼らは運命を狂わせられた存在であるとはいえ、中国を裏切った「漢奸(売国奴)」とされてしまうのはやむをえないことでした。

川島芳子(本名・愛新覺羅顯㺭・あいしんかくら けんし)は、日本では男装の麗人として様々な作品に登場します。

川島芳子(本名・愛新覺羅顯㺭)/wikipediaより引用

しかし、戦犯として処刑されている以上、ネタ的な扱いをすることには慎重になったほうがよいかとは思います。

歴史人物を扱うソーシャルゲームにおいて、彼女をモチーフとしたキャラクターファンアートが投稿され、炎上しております。

日本の政治的思惑で人生を翻弄された人物です。そこは慎重な扱いが求められるのです。

彼女は処刑前、自分の実際の行動以上に喧伝されたと漏らしていました。

死後においてまで、あることないことを描かれるとすれば、不幸なことでないでしょうか。

※香港映画『川島芳子』、1990年、梅艷芳(アニタ・ムイ)主演

 

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王道楽土、五族共和のまぼろし

苦難の道を辿ったのは、何も溥儀や関東軍だけではありません。

内地(日本本土)ではなく、満洲という新天地で新たな生活を始める――。

そこは王道楽土「五族共和」(和=日・韓・満・蒙・漢=支、5つの民族が協力して平等に暮らす)の新天地であると喧伝されていました。政府は、新天地として満洲を開拓するよう推奨したのです。

かくして海を越える日本人は多数おりました。かつての大陸浪人のように野心と行動力があふれる人物のみならず、ごく平穏な日本人までこうした夢を見るようになったのです。

満洲は米も育たないほど寒冷であり、その開拓は厳しいものでした。積雪は少ないものの、真冬ともなれば零下20度から30度までに低下してしまいます。大地は凍土と化し、吐いた息がその場で氷の粒となるほど厳しい寒さでした。

春を告げる黄砂が吹き荒れるまで、待つしかないのです。

それでも新天地を夢見て、多くの人々が海を超えたのです。しかしそれも、日本の敗戦戦までのことでした。

満洲は、地理的にソ連の侵攻の影響が甚大な地域です

。昭和20年8月15日の玉音放送直前、ソ連軍が南下するという驚異的な報告が襲いかかります。開拓民を守る関東軍はおりません。対ソ連兵力として温存されていた状況は変貌していました。

終戦間近の7月、満洲にいる男子は「根こそぎ動員」と呼ばれる兵力補充が行われていたのです。南方戦線に送り込まれたものの、精度は弱く装備も貧弱でした。

満洲の開拓民は地力で逃げるほかありません。大地を歩き、屋根もない避難列車にすし詰めとなるのです。ソ連軍、解放された中国人の襲撃もありました。

命を奪われるくらいならばと、中国人に我が子を託す人。中国に残る婦人。こうした人々は、中国残留孤児、中国残留婦人として取り残されることとなります。

集団自決を選ぶ人々。捕縛され、シベリアへと連行されていく人々。

開拓団を逃すため、ソ連兵に人身御供のように捧げられた女性。

◆ ‪あの地獄を忘れられない…満州で「性接待」を命じられた女たちの嘆き

命からがら引き揚げ船に乗っても、衰弱し祖国を踏まずに亡くなる人もおりました。

◆平和祈念資料館 海外からの引揚げコーナー

満洲の歴史を伝える

満洲引き揚げの苦難は、近年の作品でも描かれてきています。

※満洲からの引き揚げ(『めんたいぴりり』)

朝の連続テレビ小説

2018年『半分、青い。』:ヒロイン祖父は満洲帰り。

2019年『なつぞら』:ヒロインの養父であり、ヒロイン実父戦友である柴田剛男は満洲帰り。シベリア抑留を逃れたことが幸運であった設定。

2019年『スカーレット』:草間という、満洲で働いていた人物が重要な役割を果たす。

2020年『エール』:主人公が満洲を旅し、代表的な曲を作る。

※『エール』主人公モデル・古関裕而が満洲からの帰りに作曲した『露営の歌』

大河ドラマ

2019年『いだてん』:古今亭志ん生は満洲で慰問。敗戦後、自殺しようとしてウオッカを一気飲みする。

五りんの父は、満洲でソ連兵に射殺される。

かつて、日本人にとって満洲とは、祖父母や父母が味わった苦い経験がある土地でした。残留孤児のニュースには、胸がしめつけられたものでした。

近頃話題の「町中華」には、満洲時代に習った中華料理を出したことが由来である店も多いのです。

宇都宮と浜松が毎年餃子日本一を争っておりますが、ああした料理も満洲帰りの人が懐かしんで作ったものでした。

中国では伝統的に餃子を焼いて食べることはありません。焼き餃子には、日本人は満洲で味わった中国の味なのです。

しかし、そんな記憶を持つ人々が世を去り、薄れていくようではあります。満

洲がどれほど寒かったか。引き揚げの厳しさ。そうした歴史は、苦いものであれ伝えていく必要があるはずです。

ゴールデンカムイ』において「満洲鉄道」が登場し、しかもその背景に騙すものと騙されるものがいるということに、興味深いものを感じます。

鶴見の真意は何か?
鯉登の運命は?

それだけではなく、かつて満洲に生き、苦労した人々のことも考えることが必要なのではないでしょうか。

文:小檜山青

【参考文献】
『ゴールデンカムイ』21巻(→amazon
『中国の歴史10 ラストエンペラーと近代中国』
『満洲国 「民族共和の実像」』塚瀬進
『図説 写真で見る満洲全史』
『満洲からの引き揚げ 遥かなる紅い夕陽』平和祈念展示資料館
『満洲帝国 北辺に消えた“王道楽土”の全貌』
日清戦争から盧溝橋事件』吉岡吉典
『知のモラル』小林泰夫編
『馬賊で見る「満洲」』澁谷由里
『中国の歴史を知るための60章』

 



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