御嶽山

2014年噴火後の御嶽山/photo by Alpsdake wikipediaより引用

明治・大正・昭和

1979年にも水蒸気爆発を起こしていた「御嶽山」2014年の悲劇は避けられた?

「歴史とか知ってても意味なくない?」

そんな風に軽くディスられ、切ない思いをしたことのある歴史ファンの皆さま。

落ち込むなかれ、過去を知ることで確実に効果を見込めるものもあります。

災害史です。

地震や火山など。

その地方で起きた災害を知ることで対策できることは多々あり、たとえば救助までの3日分の水・食料は自宅に保存しておくとか、あるいはつい最近の事例であれば津波や川の洪水を警戒してスグに逃げることができた人もおりました。

本日はその一例を見てみたいと想います。

1979年(昭和五十四年)10月28日は、長野県の御嶽山(おんたけさん)で水蒸気爆発が観測された日です。

木曽町上空から望む御嶽山/photo by As6022014 wikipediaより引用

この山の名前を聞くと2014年の噴火を連想される方も多いでしょう。

実は昭和でも顕著な火山活動をしていたんですね。

本日は御嶽山の歴史や災害について触れていきますので、何らかの理由で読むのが辛くなる方もおられるかと思います。

そういった場合は、恐れ入りますがページを閉じてくださいますようお願いします。

 


人類の歴史上では「死火山だ」と思われていた

かつて御嶽山は、有史以来、噴火したことがない山だと思われていました。

最近の研究では、数十万年前と約1万年前~5000年前にたびたび小規模な噴火を繰り返していたことがわかっていますが、人間の歴史と全くかぶっていないために、長い間「死火山だ」と思われていたのです。

また、774年と1892年に噴火活動があったという記録が存在するものの、これは現在では否定されています。

おそらくは直接見ていない人が伝聞で書いたか、別の山と取り違えたものでしょう。

御嶽山は山岳信仰の対象となっていた山でもあり、かつては厳しい潔斎を行ってから入るところでした。

女人禁制でもありました。

明治時代に他の寺社同様女人禁制が解かれてから、郵便局が設置されたり、道路が作られたりと開発されるようになっていきます。

そのぶん人の出入りも増え、いつしか「登山初心者にも登りやすい山」として知られるようになります。

しかし、1979年のこの日、人類の歴史上においては初めての活動期が訪れたのです。

 


水蒸気爆発は珍しくはない

噴火というとマグマや火砕流を連想することが多いでしょう。

もしかしたら”水蒸気”爆発というのもピンとこない感じがしますが、実はそう珍しいことでもありません。

日本での有名どころでは、1888年に会津磐梯山、1973年に西之島新島で起きています。

水蒸気爆発では山の形が変わるほどの「山体崩壊」が起き、史書には「◯◯崩れ」と記載されることがあります。

以前の記事でご紹介した帰雲城は、天正地震による帰雲山の山体崩壊で消えてしまったものです。

帰雲城
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幸い、1979年の御嶽山における水蒸気爆発は、山体崩壊を起こすまでにはなりませんでした。

それでも、軽井沢や群馬県前橋市にまで灰が落ちていったというのですから、只事ではありません。

その後、付近では1984年に長野県西部地震(M6.8)が起きたり、御嶽山自身でも小規模な噴気活動などが観測されていました。

継子岳と三ノ池(火口湖)/photo by Bergmann wikipediaより引用

しかし1979年ほどの活動は見られず、気象庁のほうでも監視・観測を続けながら、警戒レベルは低いとみなしていたのです。

2014年の噴火の際、あんなにも被害が拡大したのは、いくつかの不幸な偶然があったからとされています。

一つずつ見て参りましょう。

 


○登山に関する情報の周知不足

火山以外の山でも、登山客の準備不足や情報不足による遭難等は絶えません。

が、御嶽山の場合も似たようなものでした。

噴火の二週間ほど前から火山性地震が観測されていたものの、一旦収まったために「警戒レベルを上げる必要はない」と判断され、一般へ情報が流されていなかったのです。

しかも、御嶽山は「3000m級の中では初心者向け」と各所で紹介されており、家族連れでも安心して登れる山だと認識されていました。

さらに、2014年の噴火当時、御嶽山は紅葉シーズンの始め頃で、より登山者が増えていたといいます。

噴火が起きた時刻が正午直前ということも、悪く働きました。

「景色のいいところで昼食を取り、一休みしてから下山しよう」という計画を立てていた人がたくさんいたそうです。

「昼時に災害が発生したために、被害が大きくなった」という点は関東大震災と同じですね……。

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