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【大阪は東洋のマンチェスター】
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都市インフラ整備と一三の功績
五代友厚の死後、大阪は順調に商工業都市として発展を続けます。
それにブレーキがかかったのが、1904年から始まった日露戦争バブル崩壊後の不況でした。
日露戦争なぜ勝てた? 仁川沖海戦に始まり講和条約が締結されるまで
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この不景気で路頭に迷ったのが、証券会社の設立計画が流れてしまった小林一三です。
しかし結果として、この小林の挫折は、彼自身にとっても大阪の発展にもプラスであったかもしれません。
証券会社の話が立ち消えとなった小林は、電鉄事業を展開します。
才知あふれる小林は阪急電鉄の社長となり、彼の構想はそれだけにとどまりませんでした。
デパート経営、宝塚歌劇団、東宝映画等、様々な事業を展開し、大阪経済を牽引することとなるのです。
彼はドラマ『わろてんか』で高橋一生さんが演じる伊能栞のモデルとされております。
より詳しい功績につきましては以下の記事をご覧ください。
渋沢に負けぬ西の実業王・小林一三~宝塚も成功させた84年の生涯とは
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そして「東洋のマンチェスター」へ
1909年、大阪北部で大規模火災が発生し、市街地が焼け落ちました。
「キタの大火」と呼びます。
さらに1912年には、今度は南部で「ミナミの大火」が発生します。
この二度の大火災によって、江戸時代からの大阪の街並みは焼失。
復興の際は、燃えやすい木造建築ではなく、鉄とガラスとコンクリートによる建物が建てられました。
そして1914年に第一次大戦が起こると、大阪は工業都市として凄まじい好景気に見舞われます。
「東洋のマンチェスター」
ついにイギリスに比する都市として呼ばれるようになったのです。
1920年代に入ると、大阪は全国一の都市計画を遂行する都市としても知られるようになりました。
コンクリートの近代建築がそびえたつ街並みを、モボ・モガ(モダンボーイモダンガール)が颯爽と歩く。
ネオ・バロック建築の美しい大阪府立中之島図書館は、当時の面影を今に伝えます。
ただし、これだけで日本一になったワケではなく、そこには不幸な天災が影響しておりました。
1923年、関東大震災が発生し、東京が壊滅的な打撃を受けたのです。
このとき一部の被災者は大阪へと転入し、人口は211万人を突破。
ついに大阪が日本一の都市となったのでした。
それは1932年に東京市が市域を拡張して人口を逆転しても、大阪の活気は止まりません。この頃には、大阪のシンボルが新たに一つ増えました。
大阪タイガースです。
ご存知、阪神タイガースの前身で、同球団は1934年末に誕生。創設当初から、日本最古のプロ野球チーム「東京巨人軍」とライバル関係にありました。
巨人VSタイガースは、都市をも代表する、まさに宿命の対決なのです。
日本第二の都市、関西最大の都市、東京にも負けない都市、大阪。
その賑わい、明るさは商人文化と相まって他の追随を許さないものです。
が、それだけに戦争の影響は小さいものではありませんでした。
大阪大空襲からの復興
戦局が悪化し、日本中が空襲にさらされた1945年(昭和20年)。
日本第二の商工業都市である大阪も、その標的となりました。
モダンな近代建築と美しい街路樹が立ち並ぶ、「浪華の八百八橋」と呼ばれた大阪の街並みは、軒並み焦土と化します。
2013年朝の連続テレビ小説『ごちそうさん』では、ヒロインの姪っ子たちが、空襲の最中、地下鉄で避難する場面がありました。
この事実は、1990年代後半に再発見された史実であり、それをドラマに反映させるというのは意欲的な取り組みでした。
それでも焼け跡を生き延びた大阪の人々は、戦後復興に取り組みます。
ミシンで服を縫い、洋品店店主として生き抜いた、2011年朝ドラの『カーネーション』。
戦後、闇市に出回る粗悪品ウイスキーに対抗し、安く品質のよいウイスキーを販売することにこだわった2014年の『マッサン』。
復員する夫を待ちながら、子供服ブランドを立ち上げた、2016年『べっぴんさん』のすみれ。
そして2018年放送予定の『まんぷく』では、闇市で一杯のラーメンのために並ぶ人々を見て、誰もが簡単に食べられるインスタントラーメンを生み出す主人公・安藤百福(あんどう ももふく)の姿が描かれました。
近年の大阪製作の朝の連続テレビ小説は、大阪を中心とした関西地方の歴史を背景としています。
かつての姿を想像しながら鑑賞すると、より楽しめるのではないでしょうか。
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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
【参考】
『笑いを愛した吉本せい (洋泉社MOOK)』(→amazon)