「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」
この歌の作者と言えば、藤原道長(966-1027年)ですね。
皆さんご存知、平安貴族の頂点に立ち栄華を極めた人であります。
そんな道長さんが、実はある病気にかかっていた(可能性が高い)のをご存知ですか?
ズバリ「糖尿病」です。
糖尿病は膵臓(すいぞう)から出るインスリンの作用不足により高血糖になる病気。
高血糖が長く続くと血管が傷み様々な合併症を併発します。
このうち微小血管障害によっておこる「神経障害」「網膜症」「腎症」は糖尿病に特有の症状であり『糖尿病の3大合併症』と呼ばれるほどです。
そして道長さんに関する文献には、糖尿病を疑わせる記述がいくつか認められるのです。
『小右記』や『御堂関白記』に疑惑濃厚な記述あり
同時代の貴族が書いた『小右記』の中に、道長は51歳頃から「口が渇きやたらと水を飲む」ようになったと書かれています。
血糖値が高い状態になると、血管内の浸透圧が高まり、細胞から血管の中へと水分が移動します。
結果、血管内の水分量は増え尿量が増えますが、細胞は脱水となるので口が渇き、多飲となります。
※詳しく知りたい方は「浸透圧利尿」で調べて下さい
道長の多飲はこの浸透圧利尿によるものと考えられます。
実は『小右記』の作者・藤原実資は道長のことも遠慮なく書いており、ずばり「飲水病(糖尿病)」と言い切っちゃってるんですね~。
※以下は藤原実資の生涯まとめ記事となります
『光る君へ』で異彩を放つ藤原実資(ロバート秋山)史実ではどんな貴族だった?
続きを見る
『御堂関白記』には道長が目を悪くしていた記述も出てきます。
「二、三尺相去る人の顔も見えず」
これは糖尿病性網膜症ないし、糖尿病による白内障の悪化が疑われます。
道長が「この世をば~」の歌を読んだのは50代。
ゆえに
「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも 実はもう見えない……」
だったのかも知れません。
兄の道隆、叔父の伊尹、甥の藤原伊周が糖尿病です
糖尿病の原因は、肥満や過食などの生活習慣はもちろんです。
が、実は“遺伝的素因”が大きいこともご存じでしょうか?
糖尿病で診察するときの話ですが、初診の方には必ず「親、兄弟などの血縁に糖尿病の方はおられますか?」と家族歴を尋ねます。
では、道長さんにも家族歴を聞いてみましょう。
道長「兄の藤原道隆がそうですし、叔父の藤原伊尹や甥の藤原伊周も糖尿病です」
疑惑が特濃クラスですね。
藤原道隆(光る君へ井浦新)の死後 道長と対峙する中関白家はどんな命運を辿るのか
続きを見る
平安時代の食生活は現代と比べればかなり質素だったようですが、貴族のトップともなれば食事も贅沢な献立となりましょう。
当時のお酒は今と違って大量の糖分を含むあま~い濁り酒だったようですしね。
糖尿病は贅沢病とされ、現代と比べて患者数も少数でした。
しかし飽食の現代、糖尿病の患者数は増えに増え、2010年の調査では糖尿病と糖尿病予備群の合計は2,050万人、国民の5人に1人が該当。
お金持ちでなくても普通にかかっちゃう病気となりました。
皆さまもわが世の春を謳歌するために糖尿病には気をつけて下さいね。ではまた♪
あわせて読みたい関連記事
◆ドラマや平安時代など全ての関連記事はこちら→(光る君へ)
◆以下、名前をクリックすると各人物伝の記事へ飛びます
紫式部 まひろ | 藤原為時 まひろ父 | 藤原惟規 まひろ弟 | 藤原宣孝 まひろ夫 |
藤原道長 兼家三男 | 藤原兼家 道長の父 | 藤原道兼 道長の兄 | 藤原道隆 道長の兄 |
藤原時姫 道長の母 | 藤原寧子 道綱の母 | 藤原道綱 道長の兄 | 高階貴子 道隆の妻 |
藤原詮子 道長の姉 | 一条天皇 66代天皇 | 藤原定子 道隆の娘 | 藤原彰子 道長の娘 |
源倫子 道長の妻 | 源雅信 倫子の父 | 藤原穆子 倫子の母 | 赤染衛門 女流歌人 |
藤原公任 道長の友 | 藤原斉信 道長の友 | 藤原行成 道長の友 | 藤原実資 ロバート |
藤原伊周 道隆嫡男 | 藤原隆家 道隆四男 | 清少納言 ききょう | 清原元輔 |
藤原頼忠 公任の父 | 安倍晴明 陰陽師 | 源明子 道長の妻 | |
円融天皇 64代天皇 | 花山天皇 65代天皇 | 藤原忯子 | 藤原義懐 |
朱仁聡 宋の商人 | 周明 宋の医師 | 三条天皇 67代天皇 | 藤原顕光 兼家の甥 |
藤原頼通 道長嫡男 | 藤原為光 忯子の父 |
◆配役はこちら→光る君へキャスト
◆視聴率はこちらから→光る君へ全視聴率
◆ドラマレビューはこちらから→光る君へ感想
文/馬渕まり(忍者とメガネをこよなく愛する歴女医)
本人のamebloはコチラ♪
※著者のテンション上がりますので、できましたらamazonレビューへ感想をお願いします! →amazonと→告知ページ