国司と受領と遙任の違い

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飛鳥・奈良・平安 光る君へ

平安時代の国司と受領と遙任の違いは何なのか?伊周が飛ばされた大宰府とは?

大河ドラマ『光る君へ』で越前守として現地へ赴任することになったまひろの父・藤原為時

劇中では、佐々木蔵之介さん演じる藤原宣孝が、二人の門出をやたらと喜んでいましたが、その理由は端的にいえば「儲かるから!」でした。

越前守といえば越前国の国司長官という意味であり、現代に無理やり例えるなら県知事みたいなものです。

それがなぜ儲かるのか?

一方で、地方へ飛ばされることを大いに嘆いていたのが藤原伊周です。

伊周は大宰権帥(大宰府の長官)として大宰府へ、弟の隆家は出雲権守(出雲国の国司)として出雲へ。

二人とも現地では名目的にはトップ同然の地位を与えられるのですが、それでも嘆くのはなぜなのか。

平安時代の地方行政は、少々ややこしい制度になっていて、単に「国司」という役職だけでなく、それに付随する「受領」や「遙任」なども同時に把握していないと理解が難しいかもしれません。

てなわけで本記事ではドラマとも密接に関わる

「国司」
「受領」
「遙任」
「大宰府」

を振り返っておきましょう。

 

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国司とは

まず”国司”とは何なのか?

歴史の授業でお馴染み、各国に派遣されて地方政治を担当した役人の総称ですね。

地方の役所群のことを「国衙(こくが)」と言い、その中の中枢機関を「国庁」、それらを含む都市部全体を「国府」といいます。

そして国司の中で一番エライ人が「守(かみ)」となります。

続いて、次官を「介(すけ)」、三番手が「掾(じょう)」、四番手は「目(さかん)」と呼ばれました。

守(かみ)

介(すけ)

掾(じょう)

目(さかん)

これに国名がつくと「相模守」とか「上野介」となり、時代劇などでもよく見る官職名となりますね。

基本的には全ての国にこうした国司が置かれますが、例外もあります。

常陸・上総・上野の長官(守)には「親王」が就くことになっており、親王は実際に現地へ下向しなかったので実質的な長官はそれぞれの介(すけ)が務めました。

後世の武家社会になると、こういった官職をお金で買ったりもしましたが、それでも上総守や上野守になった武士はいません。

時代がかなり違うので今回は詳しく扱いませんが、朝廷や貴族の権力が落ちていた時代であっても、そういった形式は守られていたということですね。

 


受領とは

次は”受領”について。

国司の中で、実際に現地へ出向き、行政担当者となる者のうち、一番エライ人のことです。

親王任国以外でも、◯◯守に任じられながら現地へ行かない人がいたため、異なる呼び名である受領が生まれました。

現代の会社員であれば、転勤を命じられて実際には行かない……なんてことはありえないので、不思議に感じられるかもしれませんね。

しかし、平安時代は京都での役職と国司を兼任しなければならないケースが出てきて、

「ならば現地には行かんでもええで」

という、ある意味なぁなぁな制度がありました。

これを「遙任(ようにん)」といいます。

遙任を現代で例えるとすれば、普段本社に勤めている重役が、名前だけ支社の役職も兼ねるという感じですかね。

前述の”親王任国で親王が赴任しない”というのも、遙任の一例です。

 


受領のメリット

では受領の大きなメリットは?

というと、『光る君へ』の中でも佐々木蔵之介さん演じる藤原宣孝が何度も言ってましたように、“財”です。

現地へ赴任した者は、とにかく蓄財しやすい傾向がありました。

税を中心に地方の財が集められたからです。

源氏物語』に出てくる受領としては、光源氏が若い頃に関係を持った女性・空蝉の夫だった伊予介があげられます。

この夫婦は年が離れていてあまり釣り合っていなかったのですが、空蝉は若い頃に両親を亡くしていて頼る人がおらず、経済的に安定していた伊予介との結婚を承諾した……という流れになっています。

ついでにお話しますと、伊予介の死後、継子(伊予介の息子)に言い寄られたため、空蝉は若くして出家することを選びました。

それを聞きつけた光源氏は、ちょうど建てたばかりの二条東の院(邸)に空蝉を引き取り、その後は色めいたやり取りはせず、生涯にわたって生活の支援をしています。

かように物語の世界でも財力があると設定されるような受領。

そのメリットは、他ならぬ文学の世界にも影響がありました。

紫式部を含め、平安時代の女流文学を書き残した女性の父の多くが、受領または同等の経済力を持った貴族です。

実家が一定以上の財産と身分を持っており、下女ではなく女房として宮仕えができ、当時は貴重だった紙を安定して得られたことも、女流文学が発展した理由のひとつといえます。

紙は高価なもの。

ゆえに財力がなければ物語も書けない。

古今東西共通することですが、文学を含めた芸術や学問が発達するには、まず絶対的に資本が必要なんですね。

ただし、財力も行き過ぎれば単なる“強欲”となり、こんな言葉も生まれています。

受領は倒るる所に土を掴め

字面からして「転んでもタダでは起きない」という意が伝わってきますよね。

そもそもは『今昔物語集』に収められていた話で、要するに「どんなときでも何でも懐に入れろ!」という受領の強欲さを表現した一文です。

では受領は実際にどれだけ旨味があるのか?

というのは、以下の記事に詳細がございますので、よろしければ併せてご覧ください。

平安貴族の国司(受領)とは
なぜ平安貴族は国司になると経済的にウマ味があるのか?受領は倒るる所に土を掴め

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最後に、地方の役所の中で、最も重い役目といっても過言ではない”大宰府”について見ておきましょう。

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