日本人にとって大河ドラマとは?

現在NHKオンデマンドでご覧いただける大河ドラマの数々/amazonより引用

大河ドラマ感想あらすじ

日本人にとって大河ドラマとは?『大河ドラマが生まれた日』から考察

2023年2月に放映された『大河ドラマが生まれた日』をご覧になられたでしょうか。

今ではNHKの看板とも言える時代劇がいかにして始まったか――さぞかし、当初から大物を集めて、鳴り物入りでドーン!と豪華に作ったんでしょ?

と思いきや、まったくの真逆で、手探りの状態で動きだした様子が生田斗真さん主演で描かれたのです。

そもそも「大河」という名前すら後付けであり、決して成功を確約されたわけじゃない。

そんな黎明期を経て、なぜ日本のテレビシーンには欠かせない存在感を得ることができたのか?

大河ドラマとは何なのか?

その歴史を振り返りつつ、考察してみました。

 


テレビは当初コケにされていた

大河ドラマが始まった昭和38年(1963年)、当時、テレビドラマがどれだけバカにされていたか。

NHKドラマ『大河ドラマが生まれた日』では、生田斗真さん演じるアシスタントディレクター・山岡進平自身が下に見ている前提から始まっています。

たとえドラマであっても生放送のため、役者がセリフを忘れて放送時間をオーバーしたらリカバリできない――そんな苛立ちがあったのです。

劇中の山岡にしたって、そもそも映画会社に入りたかったのに採用試験で落ち、たまたま職員の大量募集をかけていたNHKに転がり込んだだけ。

しかし、結果的に山岡は幸運に恵まれていました。

当時、娯楽の王者として君臨していた映画の観客数は、昭和33年(1958年)をピークに下がり始めていたのです。

代わって台頭するのが、ご存知の通りテレビです。

「あんな重箱見たってツマランだろw」と当時の映画業界人が考えていた、取るに足らない存在のテレビが、グイグイと視聴者数を伸ばしている。

しかし映画に比べりゃ下の下でしょ、と低劣に扱われてしまう――。

そこで一念発起したのが中井貴一さん扮する成島庭一郎でした。

成島は、プロデューサーの楠田欽治を呼び出し「映画に負けない日本一のドラマを作れ!」と一喝するのでした。

「いいか楠田。貴様に対する要望はただひとつだ。

日本一の大型時代劇を作れ!

しかも連続ドラマで9カ月だ。演者は映画、歌舞伎、新劇の大スターを勢ぞろいさせて息をのむようなチャンバラから濃厚なラブシーンまで、ありとあらゆる娯楽を詰め込んだ、空前絶後のその上を行くような、新感覚の連続大型時代劇を作り出せ」

この現場に、無理矢理連れてこられたのが山岡。

んなこと、いきなり言われても無理だってばよ――と、強引な展開で大河一作目は始動したのです。

そんなドラマ『大河ドラマが生まれた日』は、昭和日本を美化しているわけでもありません。

仕事場は無茶ぶりの連続。パワハラや長時間労働は見ていて辛くなります。

それが当たり前の時代があったんですね。

 


原作は『花の生涯』主役は井伊直弼

当時、日本の娯楽王者といえば、やはり時代劇。

日本人がどれだけ愛していたか――思えば明治時代から、真田十勇士や忍者もの、美少年剣士が暴れる娯楽を楽しんできました。

大正時代にかけては、少年雑誌や少女雑誌が創刊され、子ども向けの楽しいお話が、美麗な挿絵つきで掲載されました。

お金持ちのボンボンやお嬢様が買い、それを近所の子ども同士で回し読みをする。

そんな情操教育を受けてきたのが日本の少国民です。

一方GHQは、アジア太平洋戦争の終戦を経て、そこに目を向けました。武士道賛美が軍国主義に繋がったのではないかとみなし、一時的に制限したのです。

それが解き放たれたタイミングと、戦後の映画ブームが伸びた時代は一致します。映画館でチャンバラをバンバンやる時代、テレビで対抗するならやはり時代劇でした。

ここで『鞍馬天狗』なり『真田十勇士』なりを選んでいたら、大河ドラマも違っていたかもしれません。

しかし、NHKは新聞連載が注目をあびた原作を選びました。

船橋聖一『花の生涯』です。同連載が新聞の部数を伸ばしたというほどで、映画化もされています。

井伊直弼が主人公の大河――というと、今の私たちからすると意外性がありますよね。殺されて最期となるのですから、盛り上がらないんじゃないか?

と、思いきや、それがエンタメのツボを抑えていて、かつ時代的にも斬新性がありました。

まずは艶かしいヒロイン・村山たか。井伊直弼の愛人とみなされ、生き晒しにされた悲運の女性です。

村山たか
女スパイ・村山たかは直弼の懐刀~粛清の恨みを買い 京都三条河原に晒される

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このたかをファム・ファタールとして登場し、男たちのドラマにセクシーな恋心が絡む。

昭和に受けるロマンが満載だったのです。

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