1936年(昭和十一年)9月7日は、フクロオオカミが絶滅させられた日です。
「何それ?」
と思われた方が多いでしょうから、どんな生態の生き物だったのかというところから見てみましょう。
ちなみに外見は、上記の画像になります。なかなかスリムな体型をした生物ですね。
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タスマニア島で家畜を襲うからという理由で
フクロオオカミとは、オーストラリアの東南部にあるタスマニア島に住んでいた、狼のような動物です。
「フクロ」とつく通り、狼でありながらカンガルーなどと同じ有袋類でもあるという、珍しい生態を持っていました。
ユニークな顔で有名な、タスマニアデビルと近い種類だったそうです。
かつてタスマニアデビルが、伝染病で絶滅の危機から急速に進化を遂げ、回復の兆しが見えてきた――なんて報道が駆け巡りましたが、覚えてらっしゃる方もおられますかね。
しかし、フクロオオカミのほうは、タスマニア島にヨーロッパ人が入植すると、羊などの家畜を襲うからという理由で虐殺されてしまうことになります。
1933年には野生の個体が絶滅。
1936年のこの日9月7日に、オーストラリアのホバートという場所で飼育されていた最後の個体が亡くなったのでした。
「送り狼」の語源にもなったというニホンオオカミ
似たような理由で絶滅に至った動物として、ニホンオオカミが挙げられますね。
縄張りに入った人間の後をつける習性から、「送り狼」という言葉の語源になったともいわれています。
飼い犬や馬、人家を襲うこともありましたが、一方で山間部では鹿や猿など他の害獣を食べるため、信仰の対象ともなりました。こういうのって地域性がうかがえて面白いですよね。
しかし、享保十七年(1732年)あたりに狂犬病が流行し、人家の被害が広がると、駆除される数が格段に増えました。
明治二十五年(1892年)までは上野動物園で飼育されていた個体がおり、その後生き残りがいたかどうかは不明です。
一般的には絶滅したものとされています。
たまに目撃談がありますけれども、多くは他の動物を誤認したものです。
フクロオオカミやニホンオオカミの場合は過剰防衛という感が強いですが、ただ単に人間の欲のために絶滅に追いやられた動物もたくさんいます。
何とも胸糞の悪い話ですが、その実例をいくつかご紹介しましょう。
リョコウバト
1906年野生個体絶滅
1914年飼育個体絶滅
(北アメリカ)
全長40cmほどで、渡りを行うハトです。
インディアンが食用としていたそうで、西洋人の入植以降、食肉・羽毛の採取を目的に乱獲の度合いが激増。
1890年代には、ほとんど見られなくなってしまいました。
それまでは「地球上で最も個体数を増やした鳥類」とまで言われるほどの生息数を誇っていたといいます。
一方で繁殖力が弱く、生息地だった森も破壊されたため、さらに繁殖しにくくなり絶滅してしまったのだとか。
推定で50億羽いたとされていますので、人間の業の深さが如実に出ているというか何というか……。
オオウミガラス
1844年絶滅
(北大西洋・北極海)
ペンギンに似た生態を持っていた大型の鳥です。
飛べないのもペンギン同様でした。
8世紀頃からたびたび食用として狩りの対象になっていて、16世紀の大航海時代あたりから、西洋人による大乱獲がスタート。
一気に数を減らしてしまいます。
1750年頃までは複数の繁殖地がありながら、そのわずか70年後、1820年頃にはアイスランド沖の一ヶ所だけになっていたそうです。
しかも1830年には付近の海底火山噴火により繁殖ができず、さらに個体数を減らしていきました。
そのため希少価値がさらに上がり、金に目がくらんだ好事家やハンターによる乱獲が更に進んだといいます。
最後のつがいは抱卵中に殺され、卵も割れてしまったそうで。
もうどうしようもないですね。
ドードー
1681年以降絶滅
(マダガスカル島沖モーリシャス共和国)
オオウミガラス同様に陸上で暮らす、大型の鳥でした。
某ゲームのように頭は2つありません。
こちらも大航海時代にこの島へ寄港したヨーロッパ人により、捕獲されるようになりました。
煮込むと肉が固くなるため、最初は好まれなかったのですが、そのうち塩漬けにしてから調理するとウマイということがわかりり、乱獲が進んでしまいます。
地上で生活しているからには、巣を作るのも地上なわけで、これがまた数を減らすことになってしまいました。
ヨーロッパ人に持ち込まれた犬や豚・ネズミによって雛や卵が食べられてしまい、繁殖が大きく阻害されたのです。
ドードーの姿を描いた絵は複数ありますが、標本はチェコ・ストラホフ修道院内の図書館の一羽分しか現存していません。
しかも保存のためか、木炭で全身を覆われてしまっていて、在りし日の姿をうかがうことはできません。
ステラーカイギュウ
1768年以降絶滅
(北太平洋)
ロシアの探検隊の船が座礁し、壊血病で苦しんでいた中で見つかった巨大なカイギュウ(ジュゴンやマナティーなどの大型海生哺乳類)です。
1頭あたり3トンほどの肉と脂肪を入手することができ、皮・ミルクも有用という万能な動物でした。
遭難中にこんな動物が現れたら、古代であれば「神の恵み」として尊ばれていたでしょうね。
「ステラー」はこのとき遭難した人々を指揮していた医師の名前です。
しかし、生還したステラーたちからこの動物の話を聞いた毛皮商人やハンターたちがこぞって乱獲をし、たった30年程度で絶滅してしまったそうです。
仲間が傷つけられると集まって助けようとする習性があり、そこを利用されたとか……。
ゴクラクインコ
1927年頃絶滅
(オーストラリア)
体の部分ごとに青・赤・黄緑の色鮮やかな羽毛を持ったインコの仲間でした。
全長(頭の先から尾羽の先まで)で30cmぐらいだったそうなので、だいたいハトくらいの大きさです。
ペット用の乱獲・生息地の開発による環境破壊により絶滅したとされています。
1927年に卵が確認されたものの、親鳥が巣を放棄してしまったため、その後に絶滅という……。
よく似た名前の「ゴクラクチョウ」は「フウチョウ(風鳥)」という別の鳥の異名なので、ゴクラクインコとは直接関係はありません。生息域は近いですけどね。
日本も決して人事ではありません
他にもたくさんありますが、気分が害される一方ですのでこの辺にしておきましょう。
知れば知るほど人という生き物がイヤになりそうです、自戒の念もこめまして(´・ω・`)
むろん、現在も人間の行いによって、多くの動物が絶滅寸前に追いやられています。上記ではヨーロッパ人によるものを多く紹介しましたが、日本も他人事ではありません。
「奄美大島でハブ退治のためにマングースを入れたら、アマミノクロウサギなどの天然記念物ばかり狙うようになった」
「ブラックバスの放流によって、他の魚がほとんどいなくなってしまった」
他の地域でも、
「捨て犬や捨て猫によって、元々住んでいた生き物が絶滅一歩手前まで追いやられている」
というケースは珍しくありません。
「他の国のオオカミを連れて来て、ニホンオオカミを復活させよう!」という試みもあったようですが、実行に至っていないのはこのためです。
外国の例だと、象牙のためにゾウの乱獲が進んでいるという話が有名でしょうか。
象牙の密輸出で(不名誉に)有名になってしまったケニアとガボンの大統領が、8,000本の象牙を燃やして抗議活動をしていましたね。
トキやジャイアントパンダのように、人間の手で繁殖が試みられている動物もいますが、本来であればそんな状態になるのがおかしい話です。
今後はそういうことがないといいのですが。
絶滅させるのは病原菌だけでお願いしたいものです。
長月 七紀・記
【参考】
フクロオオカミ/wikipedia
絶滅/wikipedia
8000頭分の象牙を焼却 ケニア大統領が着火し密猟根絶アピール/ハフィントンポスト