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【唐伯虎(唐寅)】
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書記、家庭教師、そして番頭までできる“華安”
かくして、無錫に到着。そして持ち前の口のうまさと機転で「華学士」の屋敷を突き止めます。
目的を達成すると、なんだかんだと言い訳して友人と別れたのです。
そしてボロボロの服に着替えると、貧乏書生に変身。人づてを頼り、書記にでも雇ってくれと強引に頼み込んだのでした。
華学士が就職希望者の筆跡を見てみると、なんとまあ立派なこと!
気になった華学士が面接試験をすると、才気煥発で只者ではありません。
「よし、採用! うちの息子の家庭教師でもしてくれ」
「ありがたいことです。私は衣食住さえあれば給与はいりません」
「きみ、才能ある上に謙虚だねえ。気に入った! これからは私の姓をとって華安と名乗りなさい」
かくして唐伯虎の作戦は成功します。
◆ボロボロの唐伯虎
『水都百景録』の唐伯虎はラフでほつれた服装をしています。
それも彼の特徴であり、物語や逸話を元にしているのでしょう。
◆家庭教師
唐伯虎はマルチな才能を発揮し、華学士のもとでさまざまな業務をこなします。
ここで息子の家庭教師まで引き受けることが重要です。
明代、家庭教師にせよ、書院の教師にせよ、文人としては最下等の職業とされていました。
科挙に落第し続けるからこそ、教師になるしかない。生徒にもその保護者にも軽蔑されることもあり、ああはなりたくないと思われていたのです。
それを気にせず、恋のために引き受ける唐伯虎はスゴイのです。
◆姓名をもらう
ここで「華」と姓をいただくわけですが、これはこうした家庭教師となる者がどれだけ身分が低いかということでもあります。
自分の先祖の姓ではなく、与えられた姓を名乗る。それだけ軽んじられていることの裏返しともとれます。従僕の身分にまで身を落としたのです。
『水都百景録』では秋香が本来の名である「林奴児」として登場します。
侍女は主人から花鳥風月をモチーフとした名前をつけられます。ゲームでの彼女は秋が名前につくため、衣装に紅葉が描かれています。
あの笑った彼女と結婚する
そんな唐伯虎は何をさせても絶好調!
ちょうど番頭が亡くなったため、対処を任せるとピッタリ金勘定もこなします。
これはもう正式に番頭として採用したいと考え始める華学士。となると、年齢的にも独身ではちと体裁が悪い。ひとつ、嫁でも面倒見てやるか。そう考えます。。
おっしゃー!
ここで唐伯虎は媒婆(メイポ、結婚仲介人の女性)に心づけを渡し、こう告げます。
「実は俺、この家の侍女から妻を選びたいんだなぁ。そう伝えてくれ、頼むよ」
「あなたの頼みは断れませんねえ。華夫人に伝えておきましょう」
こうして華夫人は夫に希望を伝えると、華学士も納得します。
こうして好きな侍女を選ばせるとなると、唐伯虎はあの船で見かけた秋香の元へ向かい、かくして結ばれたのでした。
そして結ばれたあと、夫婦の寝室で唐伯虎は打ち明けます。
自分は、本当は華安でなくて唐伯虎。船で見かけて一目惚れして、従僕にまでなって、こうして手間暇かけて彼女を迎えにきたと。
「ああ、あの時の!」
秋香も彼を覚えていました。
かくして唐伯虎は仕事を全て終え、いただいたものは妻以外きっちりと返却の手続きをし、夜になると妻ともども姿を消したのです。
華学士は一体何が起きたのか驚き捜索するものの、消えた“華安”と秋香は行方が知れません。それから一年ほど経過し蘇州に向かったところ、お供が華安をみかけたと告げてくるではありませんか!
調べてみると、華安の正体はあの唐解元とわかります。驚きながらその家を訪ねる華学士。そこには見覚えのある顔と指が六本ある左手の、華安と特徴が一致する人物がいました。
「まさか、あなたがあの唐解元だったとは!」
そう驚きの結末。これ以降、華学士と唐伯虎夫妻は親しく付き合うようになったのでした。
―完―
◆金勘定にも優秀な唐伯虎
彼は商人の子であり、才能を売ると宣言した人物でもあります。
だからこそ、金勘定もお手のものなのです。
◆左手に指が六本ある
これは唐伯虎ではなく、彼の親友であり「江南四大才子」の一人、祝允明の特徴です。
彼はそのことから「枝山」という号を名乗っております。
どうやらこの物語では、この二人の特徴が混同されたようです。
“祝枝山”の『水都百景録』での実装が楽しみですね。
世の道理に叛逆する恋のドラマ
この話を読んでも現代人はピンとこないかもしれません。
しかし、明代の人々は熱狂しました。
当時定番であった「才子佳人」(美男美女)ものとは一味違う、パロディのような仕掛けが随所にあります。
・ヒロインの身分が低い
林奴児は侍女であり、“秋香”という名を主人にあてがわれています。
身分が低い女であり、お嬢様ではありません。
・唐伯虎はこんな面倒なことをしなくてよいはず
ラストで身分を明かすと、華学士は驚きます。
そんな面倒なことをしないで、頼んでくれればいいじゃないか。そうなってもおかしくはありません。
唐伯虎はそんなことをせず、人としての機転で恋を掴みに行くのです。
・文人がやらないようなことをする
唐伯虎は家庭教師や番頭を務め、プライドの高い文人ならばやらないようなことを次から次へとやらかします。
・恋愛結婚
当時の倫理では、結婚はあくまで家庭を維持し、先祖の血を伝えるためのもの。恋愛要素は二の次です。
そんなことは全て無視して、唐伯虎は恋を追いかけてゆきます。
これぞ“狂”った恋だ!――当時の人々はそうこの恋物語に喝采を送ったのです。
社会制度への叛逆を見せる、近代的で革新的なラブストーリーといえます。
話としてもシンプルかつ面白く、軽妙に盛り上げられるため、定着しておなじみとなってゆきます。
唐伯虎が、秋香に惚れる。色々あって二人は結ばれる。
このストーリーラインを守れば自由にアレンジできるため、ラブコメディとして映像化に向いています。
粵劇(えつげき・広東オペラ・広東地方の伝統劇)の演目となり、映画やドラマでもさまざまな作品が作られているのです。
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