スキーの歴史

ノルウェー白樺の脚/Wikipediaより引用

世界史

スキーの歴史は4500年!紀元前からの狩猟具が武具となりスポーツへ

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アルペンスキーの誕生

スキーの三種目を制定したノルウェー。

やはり現在とは異なっており、例えば滑降は500メートルほどの坂道をまっすぐ下るものでした。

ノルウェーの場合、比較的緩い斜面であるため、単純な技術で滑ることができたのです。

しかし、アルプス山脈のような急斜面では、この滑降は出来ません。

そもそもノルウェーの人々は、アルプス山脈でスキーはできないと考えていたふしがあります。

「アルプス山脈を滑るのならば、それにふさわしいスキー技術があるはずだ」

そう考えたのが、オーストリア人であり“アルペンスキーの父”と呼ばれることになる、マティアス・ツダルスキーでした。

1896年、シュテムターンを基礎とするスキー術「リリエンフェルト・スキー術」を確立します。

急斜面を、ターンを駆使して降りるスキー術ですね。

ツダルスキーのスキー術/Wikipediaより引用

「なんだそれは、邪道じゃないか!」

このスキー術に不満の声をあげたのが、ノルウェーのスキーヤーたちでした。

急斜面をターンで降りる技術は、スポーツとしての動きであり、伝統的な移動手段であったそれまでのものとはまったくの別物。

しかし、ツダルスキーのスキー術が画期的かつ実用的であるのもまた事実で、急速に広まってゆくのでした。

現在、スキーは二種類に大別されます。

アルペンとノルディック。

特徴を記すと以下の通りです。

アルペン(ダウンヒル):アルプス地方のスキーという意味。ツダルスキーが始めた、アルプス山脈のような坂を下る(ダウンヒル)競技。ビンディングは踵を固定する

ノルディック(クロスカントリー、スキージャンプ、テレマーク):移動手段としての、本来のスキーの姿からの発展系。18世紀、ノルウェー軍スキー隊軍事教練において行われた競技が洗練された。ビンディングは踵を固定しない

スキーといえばアルペンスキーを真っ先に思い浮かべる方も多いでしょう。

しかし歴史は浅く、オリンピック競技種目への採用も遅れました。

ノルディックは第1回冬季五輪の1924年以来採用されていたのに対し、アルペン競技は1936年の第4回大会まで待たねばなりません。

現在でもノルディック系はノルウェー、アルペン系はオーストリアが有力選手を多数輩出していますが、それも当然。

日本人にとって柔道のようなもので、負けられない・負けたくない「お家芸」なのです。

 

日本のスキー指導元祖はレルヒ少佐

明治44年(1911年)。

新潟県高田市に、オーストリア人の青年士官がやって来ました。

テオドール・エードラー・フォン・レルヒ――。

彼は、あのツダルスキーからアルペンスキーを習った男です。

スキーを履いたレルヒ/Wikipediaより引用

実は、これ以前にも日本にスキーは存在しました。

そもそもアイヌ人が利用していましたし、1904年(明治37年)には野村治三郎がノルウェーから輸入したスキーを履いて滑っています。

1909年(明治42年)に八甲田雪中行軍遭難事件が起こると、ノルウェー王ホーコン7世がスキーセット2台をお見舞いに贈呈。その他にも、お抱え外国人たちやスポーツマンが、スキーを滑っておりました。

そうした前史があっても、やはり日本のスキーといえばレルヒが元祖とされているのですね。

まぁ、集団への指導や練習は彼が初めてなので、間違ってはいません。

例えば、日本陸軍。

八甲田雪中行軍遭難事件という苦い教訓を経験していた彼らは、スキー技術に興味を抱いておりました。

習得すれば、雪中行軍も改善できる――そう考えられていたのです。

そこで、いざレルヒが指導を始めると、軍人たちは転んでばかり。

それでも周囲の人々も興味津々で、練習会には軍人のみならず、市民、教員、女性の参加も認められました。

レルヒの練習会場は、「大日本スキー発祥の地」として石碑が建てられました/photo by 長岡外史 Wikipediaより引用

レルヒの教えたスキーは一本杖のものであり、あとから導入された二本杖のスキー術に取って代わられてしまいます。

それでもその名は、新潟のみならず、日本の歴史にしっかりと刻まれているのです。

ちなみに、彼をモデルとしたゆるキャラ「レルヒさん」は人気があり、新潟県内のお土産屋さんでは彼のグッズを見かけないことがないほどです。

レルヒさん公式サイトより引用

 

冬の娯楽として定着したスキー

スキーの歴史は前述の通り長いものです。

しかし、各国で娯楽の王者として定着するのは、1930年代以降でした。

交通網と科学技術が発展すると、人々は冬山まで気軽に移動。それと平行して、スキー技術も洗練が進みます。

スキーは冬の娯楽の王者となったのです。

スキーを楽しむのは、山間部に住む人だけではなくなったのです。

第二次世界大戦以降、スキー人口やリゾートはますます巨大化。

あたたかいレストハウス、ゲレンデが窓から見えるリゾートホテル、温水プールまで備えた複合施設……と、現代のスキー場は、自然の中にある大都会の趣すらあります。

日本でもかつて映画『私をスキーに連れてって』や、広瀬香美さんの楽曲『ゲレンデがとけるほど恋をしたい。』なんてスキー関連のコンテンツが大流行しました。

それが、世界史レベルで見ると4,500年前から始まっていたなんて……。

やっぱりチョット驚きですね。

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文:小檜山青

【参考文献】
高橋幸一/野々宮徹『雪と氷のスポーツ百科』(→amazon

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