2013年の大河ドラマ『八重の桜』では、スペンサーライフルで敵兵を撃つヒロインの八重が大活躍。
遠距離から敵兵を狙撃する威力は凄まじく。
例えばフィンランドで「白い死神」と称されたシモ・ヘイヘ(1905-2002年)というスナイパーは、実に500人以上のソ連兵を殺害しています。
では、こうした狙撃に特化した部隊はいつから存在していたのか?
世界で初めて編成したのは18世紀後半のイギリス陸軍で、彼らは「グリーンジャケット」と呼ばれました。
イギリスといえば、発想が柔軟を通り越して斜め上、時にトンデモ兵器(例:YouTubeのPanjandrum)を作ることがあります。
しかし、その積極的な姿勢はときに恐ろしい戦術も編み出すもので……。
※以下は英国トンデモ兵器の考察記事となります
イギリスの開発した「トンデモ兵器」の数々~あまりにマヌケで脱力してしまう
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ナポレオン「装填に時間がかかるライフルなんぞいらん」
戦場に火器が登場してから長い間、特定の相手を狙う「狙撃」はあまり行われませんでした。
理由は簡単。
命中精度が低く、当たらないからです。
かつて戦場で用いられたマスケット銃は、銃身内部に螺旋状の溝(ライフリングと言う)がなく、敵を狙おうにも放たれた弾丸が前後左右へブレてしまい、とても狙撃などに向いておりませんでした。
したがってその戦術は、密集してともかく撃ちまくる――これしかなく命中精度は二の次だったのです。
そしてライフリングが施されるようになった銃も、例えばナポレオンは自身の軍に採用しませんでした。
「装填に時間がかかる。こんなものは使えない」
一方、イギリス陸軍でも、滑腔砲のマスケットを装備していました。
※以下のYoutube動画は当時のイギリス陸軍マスケット装備兵を再現
しかし、イギリス陸軍は「ライフルを不要」とまでは考えませんでした。
理由はアメリカ独立戦争です。
敵の奇襲に苦しめられたイギリス陸軍は、その経験から特定の将兵を狙う狙撃戦術の有効性に気づいていたのです。
緑の服を着た「選ばれし男たち」
「命中率の高い狙撃兵だけの部隊があれば、戦況は変わるだろう……」
そう考えたのは、ジョン・ムーア将軍でした。
将軍の考えを受けたイギリスでは、ベーカーライフル銃を装備した第95ライフル連隊を結成。
このスナイパーたちの一団は、濃緑色の軍服に黒いベルトを着用し、「グリーンジャケット」(緑の軍服)と呼ばれます。
当時の英国陸軍兵は、原則、赤い軍服に白いベルトを着用し「レッドコート」と呼ばれておりましたので、緑の軍服を着た者たちが
「第95連隊に入ったきみたちは、選ばれし者(Chosen men)だ」
と鼓舞され、いかに誇りをくすぐられたか、想像もできようというものです。
彼らは、素早く、正確に狙撃する技術を叩き込まれました。
当時のイギリス陸軍は募兵制で、わざわざ兵士になるような者はチンピラ、犯罪者まがいの者が多く、士気という点でもフランスに劣る。
そうした兵士に誇りを持たせたのも、ムーアの大きな功績でした。
彼らはやがて、通常の兵士たちと変わらない速度で装填と射撃を行い、かつ正確に撃ち抜くという技能を身につけたのです。
以下の動画がその再現映像です(現代の軍隊と比べればあまりに牧歌的な様子ではありますが……)。
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