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フランスの修道士ドン・ペリニヨンが「シャンパン」を作ったシンプルな理由

1693年(日本では江戸時代・元禄六年)8月4日は、フランスの修道士ドン・ペリニヨンがシャンパンを発明したといわれている日です。

いわゆるドンペリってやつですね。

「人の名前だったのか!」と驚かれる方がおられるかもしれませんし、さらに一歩踏み込んで「なぜ聖職者が、そんなホスト愛用のお酒を作っているんだ?」と言った戸惑いを覚えるかもしれません。

さらに言いますと、シャンパ「ン」ではなく、シャンパー「ニュ」が正しいのですが……。

日本人には馴染み深いシャンパンで統一して、話を先へ進ませていただきましょう。

シャンパンを作った修道士のドン・ペリニヨン/Wikipediaより引用

【TOP画像】カバ(ワイン)/Wikipedia

 

売上改善のためドン・ペリニヨンが工夫した

ワインといえばキリスト教圏では「キリストの血」です。
そのため昔のフランスでは、修道院でしかワインを売ることができませんでした。

そこにあぐらをかいていた……わけではないでしょうが、時代が経つにつれ、ワインの売り上げは減っていっていきました。

そこを何とかしようとしたのがドン・ペリニヨンです。

彼は原料となるブドウの木に工夫を凝らしたり、ワインの発酵に一手間加えたりして、それまでになかったワインを作り出しました。

それがシャンパン。
白ワインによく似た色合いと、器の底から細かく立ち上る泡を持つ新感覚のワインでしたーーというのが、シャンパンのドン・ペリニヨン発祥説です。

そのため、彼の功績を称えて、今でも最高級シャンパンの一つに「ドン・ペリニヨン」という銘柄があるというわけですね。

 

ナポレオンやロシア皇帝など権力者に愛飲され

実は、シャンパンの発祥にはいくつか説があります。

どうやら彼一人が生み出したというわけでもなさそうで、イギリスではドン・ペリニヨン以前に作られていたという説もあります。

まぁ、今のところ一番有名なのが上記の説ですので、世間的な認識はやはりドン・ペリニヨン発祥というのが正解でしょうかね。

その後シャンパンは偉い人たちにも愛され、ナポレオンが「モエ・エ・シャンドン」を愛飲していたとか、ロシア皇帝アレクサンドル2世に捧げるために「ルイ・ロデレール・クリスタル」という特別なシャンパンが作られたとか、いろいろな逸話を生みました。

日本では「イギリス公使のオールコックが富士山の雪でシャンパンを冷やして乾杯した」という嬉しくないエピソードがありますね。

オールコック富士登山記念碑
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日本人が初めて飲んだのはポートワイン?

さて、ワインの起源についても5000年ほど時代を遡るため、これまた確実なことはわかりません。

しかし、いくつかの変わった特徴を持ったワインには、比較的起源がはっきりしているものもあります。
というわけで、歴史を絡めてその辺をご紹介していきましょう。

・カバ

スペインのカタルーニャ地方で生まれた発泡性ワイン。
いわゆるスパークリングワインですね。

シャンパンと同じ製法で、同地方土着のブドウをワインにしたもので、最近は日本でも馴染みが出てきました。
シャンパンより熟成期間が短く、流通量も多く、さらに安価ですね。

ちなみにシャンパンと同じ製法で作る発泡性ワインは、カバの他にもいくつかあります。

シャンパンが一番有名なのは、名乗るための基準が厳しいのと、熟成期間が長いからです。つまりお高いからです。

・トカイワイン

種類というよりは産地(ハンガリー)の名前ですね。
まぁ、大体特徴と一致するので、こまけえこたあいいんだよ。

貴腐菌がついていい感じに発酵した白ブドウ。
それを使った「貴腐ワイン」というもので、非常に味が良く、高級なものの一つで、それゆえに歴史上の偉人による逸話が多いものです。

いわく、ルイ14世が「ワインの王にして、王のワイン」と称えたとか。
いわく、マリア・テレジアが「この黄金色……もしかして黄金が入っているのでは!?」と疑い、ウィーン大学で調べさせたとか。

トカイというのはハンガリーの一地域なので、昔はオーストリア帝国=マリア・テレジアハプスブルク家の支配下であり、それだけに各国の王侯との逸話が多いと思われます。

・ポートワイン

ポルトガルのポルトという町から出荷されたために、ポルトの英語読みである「ポート」という名前がつきました。
日本との逸話があるワインですね。

戦国時代にポルトガル人宣教師が日本に持ってきたといわれています。
そのため、日本人が初めて飲んだワインではないか? ともされています。

長期間の航海に耐えるほどの保存性を持たせるために、ブランデーでアルコール度を強化しているので、一発で酔っ払ってしまった人もたくさんいたでしょう。
ちなみに白と赤があり、白が辛口、赤が甘口です。

日本人に最も馴染み深い(?)ポートワイン/Wikipediaより引用

 

ルイ16世が逃げ切れなかったのも……

とまあこんな感じで、ちょっと変わったワインの逸話は結構たくさんあります。

普通のワインで歴史的な逸話というと、
「ヴァレンヌ事件の際、馬車にワイン樽を積みすぎて逃げ切れなかった」
くらいですかね。

その辺の詳細は以前取り上げていますので、よろしければどうぞ。

ヴァレンヌ事件~革命から逃亡したルイ16世達は一戦交えようとした?

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「お酒が飲めないから飲み会はイヤ」という方も多いかと思いますが、こんなトリビアを用意しておくと、話のタネができて楽しめるかもしれませんよ。

ただし、うんちくが長引くと嫌がられますけので、お酒同様ほどほどに。

長月 七紀・記

【参考】
ドンペリ豆知識
シャンパン/Wikipedia
カバ(ワイン)/Wikipedia
トカイワイン/ハンガリー市場
ポートワイン/Wikipedia

 



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