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【トラファルガーの海戦】
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横っ腹から凸る!これがネルソンタッチだ!
イギリスもナポレオンの作戦はわかっています。
ただでさえ狭いブリテン島、しかも首都ロンドンはドーバー海峡から非常に近いところにある。
イギリスからすれば「上陸=国家滅亡」ということになりますから、まずは上陸阻止のために知恵を全力で絞るわけです。
そこで英海軍のネルソン提督は「自軍艦隊を二手に分け、横っ腹から突撃をキメる」という大胆な策に出ることにしました。
現在では「ネルソン・タッチ」と呼ばれている作戦であり、アイデア自体はネルソンのオリジナルではないようです。
英海軍としては先頭のほうにいる船の損傷率が高くなり、敵船団を分裂させても挟撃されるリスクがありますが、うまくいけば相手艦隊の隊列をバラバラにすることができます。
実際その成果は「タッチ」などというふんわりした優しいものではありませんでした。
結果、仏西連合艦隊は
・撃沈 5隻
・捕獲 17隻
・戦死者 約8000人
という大損害を出して大敗してしまうのです。
しかも捕虜の中に、総指揮官のヴィルヌーヴ提督まで含まれていて、彼はその後、自決しています。
絵に描いたような見事な完敗でした。
ネルソン提督は戦死
一方、勝った方のイギリス艦隊もタダでは済みません。
鮮やかな戦術で勝利を得たネルソン提督が、狙撃兵の銃弾により戦死してしまったのです。
一説には「4つの勲章をつけた状態で戦場にいたため居場所がバレバレで、狙撃しやすかった」とも指摘されています。
他のお偉いさんたちも似たような格好をしていたそうなので、狙撃した側としては「とりあえずあの辺の指揮官を撃っとけ!」程度の認識だったのでしょうね。
そうでなければネルソンほどの英雄を狙撃した人物の名が残らないわけはありません。
もっとも、ネルソンを狙撃したであろう人物が載っていた船は次の日に沈んでしまい、記録が残らなかったという状況ですが。
他の可能性としては、ネルソンは隻眼隻腕でしたので、それを目印にしたというのはあり得そうです。
ともかく、この大敗でナポレオンはイギリス侵攻を中止。
陸戦に専念した結果、ロシア戦役まで快進撃を続けることとなります。
しかし対仏大同盟の首魁であるイギリスを後回しにしたことにより、その後、何度も辛酸をなめることにも繋がりました。
イギリスとの貿易を禁じる「大陸封鎖令」など、戦争以外の手段も使ってはいますが、功を奏したとはいえません。
当時のイギリスの強みは海軍力の他に「産業革命済み」という点もありました。
ナポレオンがその重要性に気づいていれば
「フランスの工業力をもっと上げてイギリス製品を締め出せば、戦争しなくてもウチが丸儲けになる」
と考えることもできたはず。
そうなれば「戦争に勝ってその賠償金で財政を賄い続ける」という火の車から脱却できたかもしれません。
結局、戦争は高くつく、という話かもしれませんね。
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長月 七紀・記
【参考】
両角良彦『反ナポレオン考―時代と人間 (朝日選書)』(→amazon)
日本大百科全書(ニッポニカ)
ほか