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【グスターヴ・ホルスト】
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カラヤンに演奏されて注目度UP!
全曲通しての初演は、戦間期の1920年でした。
組曲の締めくくりとなる「海王星」の終盤で、歌詞のない女声合唱(ヴォカリーズ)が入ってきたとき、聴衆はその斬新さに驚いたといいます。
他にも「火星」の5拍子など、当時は珍しい特徴がいくつも含まれており、評価は最初から上々でした。
しかし、同時代の作曲家(ドビュッシーやストラヴィンスキーなど)がさらに評判の良い曲を作っていたため、押し負ける形でいつしか忘れられていってしまいます。
「地味にいい仕事」が本当に地味だと受け取られてしまったわけです。
再び世に出たのは、ホルストの死後30年近く経ってからのことでした。
日本でも著名な指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団に紹介し、演奏・レコーディングして脚光を浴びるようになったのです。
カラヤンが『惑星』を演奏するようになったキッカケは、さだかではありません。
元々斬新な発想を好むタイプの人だったので「誰も演奏してない曲だなんてイイじゃないか!」とか思ったんですかね。
余談ですが、カラヤンはそれまで「ダイナミックすぎてウケるwww」(超訳)といわれていた指揮者の動きをスマートにし、また私生活でもダンディズムを貫き、指揮者やクラシックへの一般的なイメージを大きく向上させた人でした。
そのカラヤンが見つけたというだけで、『惑星』の人気が出るには充分だったのでしょう。
日本公演がテレビ中継されたときは「カラヤンをもっと映せ!」というクレームがテレビ局に送られたといいます。
「往年の名曲を人気歌手がカバーしたことがきっかけで、元のバージョンも再燃する」という感じでしょうか。
さらに冨田氏がシンセで演奏することにより
そもそも、あまり演奏されなくなった原因として、ホルストが「この曲は7つ揃って演奏されなくてはならない」としていたこともあるかもしれません。
同組曲には、コンサートホールにあまり設置されていない楽器(パイプオルガンなど)や「海王星」で用いられる女声合唱などの特殊な準備が必要だったのです。
これでは7曲全てを演奏できる機会はそう多くありません。
他の構成への編曲も、ホルスト自身はあまりよく思っていなかったようです。
しかし1976年、冨田勲氏がホルストの遺族の許可を得て、シンセサイザーによるアレンジを行って以降、編曲や一曲だけの演奏も増えてきました。
『火星』や『木星』の知名度や人気が高いのは、そういったことも理由の一つでしょうね。
サン=サーンスの『動物の謝肉祭』のように、組曲には「一部の代表曲だけが有名で、他はマイナー」ということも珍しくありません。
これは数や演奏上の課題などのため仕方がないことではあるのですが……全部聞いてみると、あまり有名でない曲のほうが好きになることもあります。
『惑星』については、星座占いやギリシア・ローマ神話が好きな人なら、自分の星座の守護星や好きな神様の星から聞いてみるというのもアリでしょうね。
今はネット上で視聴もできますし。
ホルスト自身は『土星』が気に入っていたそうなので、そこから聞くのもいいかもしれません。
クラシックとはいえ、ホルストのように20世紀に活動していた作曲家の作品は現代的なものも多く、「映画やゲームのサウンドトラックをつい買ってしまう」というタイプの人は、すんなり受け入れられるのではないかと思います。
『惑星』から始めてホルストを全制覇するのもいいですし、時代を遡るようにして有名な作曲家を一通り聞くのも面白そうですね。
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長月 七紀・記
【参考】
グスターヴ・ホルスト/wikipedia
惑星_(組曲)/wikipedia